プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

< ハロルド・フライのまさかの旅立ち >

2024年06月18日 | ◇読んだ本の感想。
おお!これが映画になるのか!と驚いて見に行った。
こんな地味そうな映画、わたしの他に誰も見ないだろうと思ったら観客は十数人いて、
なんだったら普段わたしが見ている映画より多いくらいだった(笑)。

これは十数年前に原書をプレゼントしてもらって。
ストーリーが簡単で、登場人物が少なくて、文章がシンプル。というリクエストを出した上で
いただいたものなので、読みやすいはずだとは思いつつ、十年以上手を付けられず。
数年前に風邪ひいて寝込んだ時に半分弱まで読んだけれども、
それ以来、あらすじを忘れる前に読まねばと思いつつ、途中で止まっている。

そうですか。こういう話ですか。
半分近くまで読んだといっても内容は3割程度しか理解出来てないから、
話が新鮮だった。まあ大枠はなんとかつかんでたんですけど。
ストーリーとしては、隣人の何とかさんに打ち明けるシーンはまだ読んでないところだった。

多分前半の細々したエピソードはだいぶ省略されていると思う。
そしてわたしはもっとコミカルな(若干シニカル寄りの)前半だったと思ったんだけどなー。
イギリスお得意のユーモア&シニック。映画はだいぶ柔らかくなってましたね。

読んだ時に犯した痛恨のミスは、時代を間違っていたこと。
原書の表紙の色合いがセピアっぽいし、タイトルに「巡礼」という時代がかった単語が
使われていたこともあって、1900年代前半くらいの話だと思っていた。
が、だいぶ経ってからモバイルフォンが出て来て、あ、これ現代の話だったのか!と。


映画としては、まずなんといってもイギリスの風景ですよ!
そう、こういう、可愛くて少しわびしさを秘めた街並み。
郊外に延々と続く牧草地。天気がいい時はもっと映えたはずの風景を、
イギリスらしい雨催いの中に置く。
目的地のベリックも橋があっていいところなんですね。行ってみたくなった。

役者が良かったですね。ジム・ブロードベントなる人。
出演作は数作見ていて――でも印象には残っていなかった。
苦悩の表情はいくらでも達者な役者はいるけど、旅の途中でモーリーンと出会って
ケーキを食べるシーンで、あんな(良い意味で)ビー玉のような丸っこい無邪気な
目が出来る人はなかなかいないだろうと思った。

でもエンディングを迎えても、多分ハロルドはモーリーンのことはあまりわかってないよね。
というか、わかろうとはしていない気がする。
まあ長年わかってない人が、人生も終盤にさしかかって、急にわかる人になるのもなさそう。
モーリーンは自分が彼を愛していると認識した上で、諦めて生きるしかないんだろうな。

それから、クイーニーと最後に会ったのが、多分30年近く前な気がするのに、
絵的にそう見えなかったから、話の説得力がちょっと減った気がしている。
はるか昔の話。としないと、おとぎ話的な部分が足りないんじゃないか。

この映画ではハロルドがすごくいい人に描かれているけど、
実際にやったことは、なんかなあ……という。
でもまあクイーニーに対しては負い目があっただろうし、
そういう時、人間は逃げるものだけれどもね。

あと息子との具体的な関係性は描かれないのね。これは原作でもそうなのかな?
全部説明することがエライんじゃないだろうが、わたしは説明してくれた方が好み。

サポーターとそんなに簡単に別れられるのか?とも思うし、
今どき、テレビ局はしつこいほど密着するだろう、と思うし。
クイーニーとの再会はあっさりしすぎていたんじゃないかと思うし。


映画タイトルとして多少整理したということはあるんだろうけど、
「ハロルド・フライのありそうもない巡礼の旅」じゃダメだったんかね?
巡礼だと宗教イメージが強すぎて、映画としては色がつきすぎる?
「まさかの旅立ち」ってタイトルはピンとこなかったなあ。


まあ全体的には楽しんで見たけどね。いかにもイギリスらしい。
そしてイギリスらしい風景。堪能しました。



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