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映画「カルメン故郷に帰る」


テルサ名画劇場の最終回。
昨年12月に亡くなった高峰秀子の追悼上映にもなった。

51年松竹、監督 木下恵介 助監督 山本薩男、松山善三 
撮影助手 成島東一郎 出演 高峰秀子 笠智衆、佐田啓二、
佐野周二、望月優子 小林トシ子 井川邦子

高峰が美しい肌を見せる、とはいってもご覧のように現代の街角で見られるより露出度は低い。

物語は、浅間山麓の村に、東京でストリッパーになっている娘が帰ってくる。それを迎えて、石頭の父親はお堅い校長に相談する。金儲けをたくらむ一味もおり、ヌードショウも繰り広げられひと騒動が起きる数日間の話。色々ゴタゴタはあるものの、結局は昔ながらの倫理と人情が勝ち、めでたく納まる。戦後の混乱期、都会には害毒がはびこっても地方の澄んだ空気の中で無害化される。高峰が少し知恵の足りない娘と言う設定であるので、実態の悲惨さが覆い隠されているが、これが松竹家庭劇の限界であるかも知れない。地方のヌードショウは51年「石中先生行状記」でも出てくる。それでは男たちが揃って出かけるのだが、これでは校長・教師・父親が集まって酒を酌み交わし、見に行かない。

木下恵介は学徒出陣※で戦争に駆出された世代。「二十四の瞳」では反戦思想を打ち出している。それだけに、何のかの言っても、戦時よりは、開放的な戦後の風潮の方がまだ増しである、という彼の感覚が、高峰の明るく美しい描き方にも現われている。また、華美な都会と対照的な、山の分校の生徒たちが、女子はモンペ着用で、男子と向かい合って、粗末なオルガンを弾く佐田啓二の周囲で、素足で(その土踏まずが見事に形成されている)おゆうぎをしているのが愛らしく、歌声が郷愁を呼ぶ。盲目の音楽愛好家、佐野周二の妻(井川邦子)が馬方をして家計を補っているのだが、そのモンペ姿もすがすがしい。

※訂正:木下恵介(1912ー1998)は1933年に松竹入社し、兵役を挟んで初監督が1943年、それゆえ学徒出陣の世代ではない。(4月9日)


「カルメン純情す」14-3-2
「はじまりのみち」14-2-26
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (稲みのる)
2011-03-28 19:32:06
みのる君が好きな映画の一つです。オルガンを弾くシーンではすっかり感動したものです。「芸術」を連発する辺りや人情の機微は寅さん映画に通じていますね。松竹らしい映画だと思っています。確か、日本最初の「総天然色」だったと思います。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2011-03-29 08:57:41
稲みのる様 この映画がお好きでしたか?寅さんファンだから不思議ではないでしょうか?そうそう、日本初の「総天然色」(古めかしい!)ですね。オルガンはあのころ小学校ではどの教室にもあり、(わが家にもありましたが)正に時代を象徴する品物ですね。寅の古めかしさは、この時代に育った、寅および山田洋次のせいなんですね。
 
 
 
Unknown (稲みのる)
2011-03-29 19:26:18
我が家にもオルガンがあって、幼い頃はよく弾いておりました。ドラムに走らなければ、もしかしたら、ジミー・スミス並みになれたかも知れません(勿論夢物語です)。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2011-03-30 09:16:53
稲みのる様
それは残念でしたね。あのときドラムさえ買ってやらなければ、とご両親も無念の思いをかみ締められたことでしょう。
 
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