goo

映画「競輪上人行状記」

                            伊藤アイコ        

1963 日活 99分 モノクローム DVDで鑑賞 脚本 今村昌平 大西信行
監督 西村昭五郎 出演 小沢昭一 渡辺美佐子 南田洋子 伊藤アイコ 加藤嘉 加藤武 
原作 寺内大吉 (講談社刊「競輪上人随聞記」)

【ものがたり】
宝寺院の住職を務める長男の玄道が亡くなり、次男の春道(小沢昭一)が呼び戻される。春道は坊主になるのがいやで家を飛び出し教職に就いていた。兄嫁みの子(南田洋子)に想いを寄せる春道は、仕方なく寺を継ぐことを決意。しかし寺は不景気で、犬の葬式ばかりを引き受けていた。父の玄海(加藤嘉)から本堂の再建を命じられた春道だったが、お布施はなかなか集まらない。しかしたまたま買った松戸競輪の車券が大穴となったことから、競輪にのめり込むようになってしまう。父と兄嫁が貯めた再建資金を使い果たした春道は再び寺を飛び出すが、父が死に、坊主になる決意をする。

本来「一笠一杖」であるべき僧侶が今や葬式仏教と堕したことを春道は鋭く批判する。やがて寺・墓・葬儀による収入と言う特権を捨てて辻説法に生きるに至る…ただし説法の中身は競輪の予想…と言う意表を突く展開。

脚色は今村昌平、この人の人間の欲望をこれでもかと抉り出す作風はへきえきである。いつもは清廉潔白な役の多い加藤嘉さえもとんでもない老親にならされている。近親相姦とか犬殺しとか、競輪中毒の女(渡辺美佐子)など、何もわざわざ映画にして見せられなくてもと思う。

ただし、本作は西村監督昇進第一作ということで、上野駅構内の人の流れをとらえた最初のシーン(当時は半そでにネクタイと言う通勤スタイルが流行っていたらしい)と競輪場のそばで主人公が予想屋をやっている最後のシーンが清新に感じられる。坊主の横に若い女がいるのだが、それは教え子の5年後の姿である。彼女の中学時代の長い三つ編みのおさげは可憐だが、声は意外と太くてよく通る。それもそのはずで伊藤アイコはプロ歌手。

なぜこの映画がずっと忘れられ?ていたのか。仏教界の反発が大きかったのでは。
僧侶が一般人なみに酒・肉・女に手をだし、金もうけのためにあくどい手法を取ったり、また国法で禁止されている賭博、競輪競馬パチンコが大繁栄しているのは、日本国の不思議な現象だが、これらに輪をかけるように坊主が先に立って競輪の手ほどきを説法するとはいやはやひどい話である。しかし、この映画の主旨は寺に安住しているよりもこの方が人間としても坊さんとしても優れていると言うことのようであるが……。「善人なおもて往生をとぐ」法然・親鸞の教えの果てがこれなのだろうか。

寺内大吉は直木賞作家で僧侶、スポーツ、競輪にも詳しい。

                   晩年(78歳)の小沢昭一。この映画出演時は34歳。

寺内大吉
→「セックス・チェック 第二の性」9-12-31 

今村昌平
→「復讐するは我にあり」12-10-29
→「松ケ根乱射事件」7-11-11

丹羽文雄
→「佛にひかれて」9-9-7

ブッダの教え
→「犀の角」7-2-24

加藤嘉
→「点と線」9-10-31
→「復讐するは我にあり」12-10-29
→「死闘の伝説」 9-10-31

渡辺美佐子
→「真田風雲録」6-11-10

加藤武
→「火の鳥」 10-3-4

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 映画「安城家... 映画「新源氏... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。