映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
【映画】父と暮せば
2004年 日本 100分 監督 黒木和雄 原作 井上ひさし 出演 宮沢りえ 原田芳雄 浅野忠信 島根県民会館にて鑑賞
今年亡くなった井上ひさし(1934-2010)の追悼上映会。もともと舞台用に書かれたもので、黒木監督の「Tomorrow~明日」「美しい夏、キリシマ」に続く戦争レクイエム第3作。
初め、廃墟の中を、長いスカートを翻して走ってくる若い娘に、戦争中にこの服装は無いだろうと首をかしげたが、戦後3年経っていることがやがて分る。広島の原爆で家族を失った23歳女性がひっそり1人で暮らしている家に、ひょっこりと亡き父が現われる。娘は今、ある男性と出会い互いに心惹かれているが、多くの人が死んだのに生きているのですら申し訳ない、まして幸福になってはいけないんだと、頑なに心を閉ざそうとする。娘の「胸のときめきと、ため息と、希望」とが自分を生みだしたのだと、父の幽霊は言い、彼女の「恋の応援団長」を買って出る。生前父が娘の幸福を願っていた気持は、死後には更に純粋に強くなるのだ。生きていることを後ろめたく思う必要はないという、生者への死者からのメッセージでもある。
恋の相手は無表情な浅野忠信だ。この映画では幽霊のほうが生き生きとしている。宮沢りえは姿も声も美しい。原田芳雄の世話焼きな父も素晴しい。空からキラキラ光りながら落ちてくる原子爆弾、並んで立っていた2人だが、父はそれをまともに見つめ、娘は石灯籠の陰に落とした封筒を拾おうとした、その瞬間の僅かなちがいが生死を分けた。新聞紙に包んだ大きい饅頭一個、手製の買物袋が思い出させる当時のつつましい生活、熱線を受けてそそけ立った瓦、顔の半面が焼けたお地蔵さんが雄弁に物語る、原爆の威力。何も知らないで「原爆下のアメリカ」など作っていたアメリカ人にも見てほしい。
井上ひさしも黒木和雄(1930-2006)も同じ75歳の死だった。ふたりとも痛切な戦争体験を経て、今の時代は戦争中そっくりだと意見が一致していたと言う。2人の思いを体現した宮沢りえの存在感が脳裏に焼きつく。井上ひさしの才能を改めて思う。
原爆
→「原爆下のアメリカ」10-8-2
黒木和雄
→「黒木和雄とその時代」06-10-31
井上ひさし
→「闇に咲く花」12-7-19
宮沢りえ
→「ぼくらの七日間戦争」14-7-15
原田芳雄
→「歩いても歩いても」8-12-15
→「竜馬暗殺」 10-8-29
今年亡くなった井上ひさし(1934-2010)の追悼上映会。もともと舞台用に書かれたもので、黒木監督の「Tomorrow~明日」「美しい夏、キリシマ」に続く戦争レクイエム第3作。
初め、廃墟の中を、長いスカートを翻して走ってくる若い娘に、戦争中にこの服装は無いだろうと首をかしげたが、戦後3年経っていることがやがて分る。広島の原爆で家族を失った23歳女性がひっそり1人で暮らしている家に、ひょっこりと亡き父が現われる。娘は今、ある男性と出会い互いに心惹かれているが、多くの人が死んだのに生きているのですら申し訳ない、まして幸福になってはいけないんだと、頑なに心を閉ざそうとする。娘の「胸のときめきと、ため息と、希望」とが自分を生みだしたのだと、父の幽霊は言い、彼女の「恋の応援団長」を買って出る。生前父が娘の幸福を願っていた気持は、死後には更に純粋に強くなるのだ。生きていることを後ろめたく思う必要はないという、生者への死者からのメッセージでもある。
恋の相手は無表情な浅野忠信だ。この映画では幽霊のほうが生き生きとしている。宮沢りえは姿も声も美しい。原田芳雄の世話焼きな父も素晴しい。空からキラキラ光りながら落ちてくる原子爆弾、並んで立っていた2人だが、父はそれをまともに見つめ、娘は石灯籠の陰に落とした封筒を拾おうとした、その瞬間の僅かなちがいが生死を分けた。新聞紙に包んだ大きい饅頭一個、手製の買物袋が思い出させる当時のつつましい生活、熱線を受けてそそけ立った瓦、顔の半面が焼けたお地蔵さんが雄弁に物語る、原爆の威力。何も知らないで「原爆下のアメリカ」など作っていたアメリカ人にも見てほしい。
井上ひさしも黒木和雄(1930-2006)も同じ75歳の死だった。ふたりとも痛切な戦争体験を経て、今の時代は戦争中そっくりだと意見が一致していたと言う。2人の思いを体現した宮沢りえの存在感が脳裏に焼きつく。井上ひさしの才能を改めて思う。
原爆
→「原爆下のアメリカ」10-8-2
黒木和雄
→「黒木和雄とその時代」06-10-31
井上ひさし
→「闇に咲く花」12-7-19
宮沢りえ
→「ぼくらの七日間戦争」14-7-15
原田芳雄
→「歩いても歩いても」8-12-15
→「竜馬暗殺」 10-8-29
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