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【映画】シェルブールの雨傘

1964年 仏 91分 監督 ジャック・ドゥミ 出演 カトリーヌ・ドヌーヴ ニーノ・カステルヌオーヴォ エレン・ファルナー マルク・ミシェル DVDで鑑賞

ものがたり: フランス北部の港町、シェルブールで傘屋を営む母と16歳の娘ジュヌヴィエーヴ。熱烈に愛しあう20歳の恋人ギイはアルジェリア戦争に召集されて出征する。その時、赤ん坊が出来ていたのを知らない。2年経たないと帰れないギイからの便りは途絶えがち。母親は税金の支払いに窮する。そこに金持ちの宝石商が現われて・・・・・。数年後、ギイの営むガソリンスタンドに、彼の娘を連れて高級外車で偶然立ち寄った彼女は、さりげない会話を交わしたのみで、別れていった。

 最初に見たのは20歳すぎで、さほど感銘はなかった。40代で久しぶりに見て、人生の悲哀を感じさせる佳作だと思った。60代の今また見て、悲しみというよりも滋味をたたえた映画だと思う。自分の人生経験と重ねて、その年齢なりに面白く見られる映画だ。

 最初に見たときは、冒頭の傘の美しさが分らなかった。皆が口々に言うので、そうかと思って見るようになった。私は、若い頃は特に美的感覚が鈍かったのだ。

 また、主人公2人の中を邪魔する母親とか、ヒロインに求婚する宝石商に反感を抱いていたが、今見ると、良識に富んだ穏当な人々で、母は許容範囲であり、宝石商は感じがよい。

 そして「主人公と結婚するマドレーヌは、凡庸な女性で「とんびが油揚げをさらった」と思ったが、いま見るとその忠実さと理性的で控えめな愛情に心を打たれる。おそらく、フランス人の好む女性のタイプではなかろうか。

 さて、ヒロインが何故、堅い誓いを破って早々に他の男と結婚するのかと不思議に思うのは、中絶や未婚の母が許されないカトリックの社会であることを念頭に置かないといけないだろう。また、税金を払うためにすぐにお金を得る必要もあった。
 
 これはミュージカルで、すべてのせりふにメロディがついている。「今日は残業できるかい?」「いや、だめだね」まで歌になっている。私の連れ合いは若き日にミュージカルというものを知らないで見始め、途中で「これはたまらん」と、出て来たそうだ。

→「ウエストサイド物語」11-3-12
→「サウンド・オブ・ミュージック」12-10-4
→「ザッツ・エンタテインメント」 12-11-11
→「真田風雲録」 6-11-10
→「バンド・ワゴン」12-11-5
コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (おキヨ)
2010-01-18 14:42:01
〔シェルブールの雨傘〕は過去二度観た記憶がありますが、カトリーヌ・ドヌーヴの美しさに捕われ、物語の流れを思い出すだけで細部はすっかり忘れてしまいました。
ご主人同様、私もミュージカル仕立ては現実味に欠けるのであまり好みませんが、シェルプールの雨傘の場合ミュージカル仕立てで現実的な部分がベールの作用をしたとおもわぬでもありません。

最後のシーンはとても好きですね。この記事を拝見しもう一度観たい映画です。


 
 
 
Unknown (vic)
2010-01-19 00:30:14
私も20代の頃見ました!

お見合い結婚のような出会い方で
みんなから「絶対面白い。映画ファンなら、見なきゃダメだ!」と勧められて見たのですが
推薦の熱意が高すぎて、実際に見た私はどこがそんなに良いのか、よく分かりませんでした。

何気なく見た映画(偶然の出会い)が、意外と面白かった...というケースの方が、印象が強いですよね。

人生経験を経るにつれ、味わいが変わっていくのは面白いですね!
私も40代の今、また見てみたいと思いました。
 
 
 
Unknown (C.C)
2010-01-20 07:27:35
この作品文句なしに好きです!ドヌーブは好きではないのですが、彼女の氷のような嫌みっぽさが、戻ってこない男をさっさと捨てる役にぴったりあってます(笑)音楽はミッシェル・ルグランですよね、とってもいいです。
ビアンカさんもおっしゃる通り、この作品って歳をとる毎に味方が変ってきます。冒頭にも書いたのですが、初めて見た十代ではなんと冷たい女と思ったのですが、今では堅実な選択だと。人間歳を取ると味方がプラクティカルになっていくんですね。その反対に感性が薄れていくのでしょうか???
 
 
 
Unknown (Bianca)
2010-01-21 10:54:59
>ミュージカル仕立てで現実的な部分がベールの作用をした
その通りですね。ミュージカルのいい面は、一語一語を明瞭に発音するフランス語が一層聞き取りやすくなっている点だと思います。もしこれが早口や不正確な発音で聞き取れないとか、またドヌーヴと恋人がこれほど美貌でない場合、今見るような感動はないかも知れません。
最後のシーンは本当にいいですね。大人の味です。
 
 
 
vicさま (Bianca)
2010-01-21 11:06:55
vicさま
>お見合い結婚のような出会い方で
みんなから「絶対面白い。映画ファンなら、見なきゃダメだ!」と勧められて見たのですが
ハハハ・・・全く、映画はお見合いでなく、恋愛に限りますね。行きずりの恋とか、ナンパでも・・
若いときって、平凡な人生ではなくて、なにか英雄的な、悲劇的なものを求めますよね。この映画は別にこれと言ってとりえのない下積みの男女が、社会の体制に翻弄された挙句、片隅の幸せに落ち着くと言う様子を描いているので、若者には受けないのだと思います。逆に、これが最高のお気に入りの映画だという人がいたら(実際、昔もいたのですが)友だちになろうとは思わなかったでしょう。ジャック・ドゥミは苦労人だったのかも。
 
 
 
CCさま (Bianca)
2010-01-21 11:21:03
>彼女の氷のような嫌みっぽさが、戻ってこない男をさっさと捨てる役にぴったりあってます
に大笑いしています。ドヌーヴもそうですが当時の女優は、そうだったと思いませんか?「草原の輝き」のナタリー・ウッドや「地下鉄のザジ」のバイクの女優、後世の女優と比べると、無表情が多いです。多分、ウーマン・リブではなく、フェミニズム以前の女性たちは、モナリザの如く神秘的にかまえていたのかも知れません。発言権が少ない社会ではやむを得ずそうだったのでしょうが、結局その方が得るものが大きいから。男性も、そこに魅力を感じていたから。

ところで、感性が衰え、実際的になっていくと言うのは本当ですね。まあサバイバルとはそういうことかもしれません。周りを見回しても、あれほど情熱的な恋をしていた人が、結婚と同時にああなっちゃってと言う例があります。そういう人を思い出しながら見ると、人生の悲哀が身に沁みるんです。(自分のことは棚に上げて?)
 
 
 
Unknown (稲みのる)
2010-01-24 06:01:56
ご無沙汰です。
ずっと昔、この映画を見た記憶はありますが、覚えていない。ただ、主題歌だけが一人歩きしているような…。レイモン・ルフェーヴルのアルバムにあって、よく聴いていました。
東京に住んでいた頃は毎晩のように聴いていた「ジェットストリーム」で、城達也のナレーションが似合っていた音楽ですね。この番組、JALの行く末如何で終わってしまうのでしょうか。
ミュージカル映画では「ウエスト・サイド物語」が分かりやすくて楽しめました。特に「クール」のシーンは圧巻。子供時代に映画館で見て、ビックリした記憶があります。音楽映画では「5つの銅貨」が最高。
 
 
 
稲みのる様 (Bianca)
2010-01-24 11:24:25
久し振りのお出で有難うございます。
城達也の「ジェットストリーム」懐かしいですね。
日本航空もあの頃は人気絶頂でしたが。
ミシェルルグランのこの音楽はイージーリスニングとしてはピッタリですが、これが映画では悲恋を強調する絶妙の効果をもたらしています。
ホホー、Westside Storyは小学生の時にご覧でしたか。私は高校生の時に来て、教室の話題になり、パンフレットや映画雑誌でジョージ・チャキリスに憧れたものです。でも、お金もヒマもないので、実際に見たのはずっと後でした。この映画は非常に優れた映画だと思います。歌詞も英語で見るとなかなか内容豊富らしい。バーンスタインがゲイだったことも影響しているかも。
 
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