映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
〔本〕 鍵
2007年02月05日 / 本
著者 谷崎潤一郎(1886-1965) 中公文庫 97年版(図書館)
初出 1956年1月 中央公論
初老の男性の性の悩みがテーマの小説。
雑誌連載当時は、売春禁止法案を審議中の衆院法務委員会で取り上げられ、
「文芸の名の下に老人たちがああいういたずらをすること」
「新道徳が確立しない時期に、ああいうものがハンランすること」が思春期の
青少年に悪影響を与えるのではと、「太陽の季節」ともども懸念されたそうな。
「太陽の季節」は過ぎ去って戻らないが「鍵」は今なお鈍い光を放っている。
59年から97年までの間、5回も映画化されている人気の原作。
改めて読んで見ると、一体何が危険視されたのか、分らないくらい、
今から見れば当たり前のことが書かれている。
明るい光の下で妻の身体を見たり、写真を撮ったりすることが、結婚後
数十年経った夫の悲願である(その感覚がいまひとつ分らない。薄暗い部屋で、
服も脱がずにことを行った平安時代ならいざ知らず)。
この本を読んでいたころ見に行ったツァイ・ミンリャン(蔡明亮)
の「西瓜」では、女が足の指にタバコをはさんで、男に吸わせる
シーンがある。「鍵」の足フェティシズムの夫の、叶わぬ望みを思い出し、
その落差の大きさに思わず笑ってしまった。
「源氏物語」の世界のような、慎ましやかな身体感覚で育った妻
(その実40代の今は飽くことなく、とみに減退した夫は困惑するのみ)
と、彼女をこよなく愛している夫。45歳と56歳である。深い持続する喜びは、
あくなき性の開放にはかえってともなわないということを、
この小説は皮肉にも証明しているようだ。
京マチ子と仲代達矢、中村雁治郎主演の映画「鍵」(1959年)を
高槻松竹セントラルで見た(観客の大部分は白髪の男性だった)が、
この映画自体は、さほど良い出来ではないと感じた。
雁次郎のみ好演している。市川崑監督は「細雪」(83)では健闘していたが、
セット?の建物の薄汚さとか、脇役(北林谷栄の老女中)を入れてミステリ
仕立てにしているのが、ことごとく裏目に出ている。
日本で4回、イタリアで1回映画化されている。中では、イタリア篇が
一番よかった。岡田真澄とか柄本明とか、観世栄夫が主演している
のも、殆ど見たが・・。多分谷崎の感覚が、本来西洋好みだからだろう。
初出 1956年1月 中央公論
初老の男性の性の悩みがテーマの小説。
雑誌連載当時は、売春禁止法案を審議中の衆院法務委員会で取り上げられ、
「文芸の名の下に老人たちがああいういたずらをすること」
「新道徳が確立しない時期に、ああいうものがハンランすること」が思春期の
青少年に悪影響を与えるのではと、「太陽の季節」ともども懸念されたそうな。
「太陽の季節」は過ぎ去って戻らないが「鍵」は今なお鈍い光を放っている。
59年から97年までの間、5回も映画化されている人気の原作。
改めて読んで見ると、一体何が危険視されたのか、分らないくらい、
今から見れば当たり前のことが書かれている。
明るい光の下で妻の身体を見たり、写真を撮ったりすることが、結婚後
数十年経った夫の悲願である(その感覚がいまひとつ分らない。薄暗い部屋で、
服も脱がずにことを行った平安時代ならいざ知らず)。
この本を読んでいたころ見に行ったツァイ・ミンリャン(蔡明亮)
の「西瓜」では、女が足の指にタバコをはさんで、男に吸わせる
シーンがある。「鍵」の足フェティシズムの夫の、叶わぬ望みを思い出し、
その落差の大きさに思わず笑ってしまった。
「源氏物語」の世界のような、慎ましやかな身体感覚で育った妻
(その実40代の今は飽くことなく、とみに減退した夫は困惑するのみ)
と、彼女をこよなく愛している夫。45歳と56歳である。深い持続する喜びは、
あくなき性の開放にはかえってともなわないということを、
この小説は皮肉にも証明しているようだ。
京マチ子と仲代達矢、中村雁治郎主演の映画「鍵」(1959年)を
高槻松竹セントラルで見た(観客の大部分は白髪の男性だった)が、
この映画自体は、さほど良い出来ではないと感じた。
雁次郎のみ好演している。市川崑監督は「細雪」(83)では健闘していたが、
セット?の建物の薄汚さとか、脇役(北林谷栄の老女中)を入れてミステリ
仕立てにしているのが、ことごとく裏目に出ている。
日本で4回、イタリアで1回映画化されている。中では、イタリア篇が
一番よかった。岡田真澄とか柄本明とか、観世栄夫が主演している
のも、殆ど見たが・・。多分谷崎の感覚が、本来西洋好みだからだろう。
コメント ( 9 ) | Trackback ( 0 )
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20歳の頃なら多分、轟由紀子&山本富士子の59年の「細雪」ですね。「鍵」の雁次郎は忘れられない存在感で、京マチ子の無表情は凄みを感じさせました。あの血圧の高い夫に、サラミだの何だのと良くないものばかり食べさせていましたね。でも、結局、ああいう死に方は、夫の望んでいたことではなかったかと思うのですが。クールヴォワジエというブランディや、ポーラロイドというカメラ、時代の先端を行くおしゃれな小物が登場しているのも、谷崎らしいと思いました。
ご覧になったんですね
67年(増村保造監督 安田道代、小沢昭一)
60年(木村恵吾〃 船越英二、叶順子)
49年(木村恵吾〃 京マチ子、宇野重吉)
と、「痴人の愛」も三回映画化されていますが、
どれを?
谷崎は「細雪」でも、4女・こいさんという近代的な
女性像を創り出していますね。こういう女性は今見ても共感できます。
「鍵」は読んだ覚えがないですね。
西新宿の高層ビルにいらっしゃるあの方が書いた「太陽の季節」は読みましたが...
「痴人の愛」は読んでますね。
なんとなく67年バージョンをTVで見た記憶ありですね..安田道代って素敵な女優でしたわ。
わたし、21世紀の邦画は観ないJapaneseですが...過去の名作は...
京マチ子とくればやはり「羅生門」でしょう!
CCさんも書かれてるように、彼女の白い肌は印象的でした。
京マチ子は大阪SKDのダンサー出身で、ドライな勘定高い女をやらせたらピカイチでした。「赤線地帯」では、昔ながらの、家族の犠牲となった娼婦たちの間で、エゴイスティックな新しいタイプの家出娘を演じて、見ているほうはホッと息抜きしたものです。
そして・・・いくつになっても衰えを知らぬあの肌の張りと艶は全く楊貴妃の再来かと思わせます。
安田道代は「セックスチェック・第二の性」が印象的です。目の光がつよい、両性的魅力のある女優でした。
谷崎の小説では、小学生の時、平かなが多いので「卍」を読み、何のことか分らなかったのを覚えています。
二本立てで「鍵」と同時に見ましたが、岸田今日子が熱演していました。あの声は、他に出せる人いませんものね。
私が観たのは京マチコの49年版です。いやー彼女はいいですね、なんともいえないねっとーっとした美しさです。
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だめでした・・・
ザンネンでした・・・
京マチ子はSKDではなくOSKの出身でした。お詫びして訂正いたします。