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【映画】夫婦善哉

1955年 監督:豊田四郎 原作:織田作之助  
出演:森繁久弥 淡島千景 山茶花究  DVDで鑑賞    

めおと・ぜんざい。大阪の法善寺横丁にあるぜんざい屋では、1人前を2杯に分けてそれを夫婦に見立てているのだそうだ。いつか入ってみたいのだが・・・

大店の若旦那で、世間に対しては押しが弱くて生活力はなく、女とうまい物が好きな、男性としては全く頼りにならない柳吉と、甲斐甲斐しく彼に尽くしとおす芸者蝶子の、うらぶれた中にもしみじみとした道行きの物語。戦後の混乱期に32歳で死んだ、大阪の作家、織田作之助の25歳の作品を、文芸物が得意な豊田四郎が映画化した。

この森繁・淡島コンビはその後に作られた「駅前旅館」などの「駅前シリーズ」も見たが、この一作目に勝るものはないようだ。原作の良さと、監督の力の入れ方が決め手だろう。中年のいやらしさ好色さを代表するような森繁だがこれほど若く、初々しささえ漂う役は珍しい。

わびしい2階の貸間の出窓で、柳吉がことこと昆布を煮て、「小倉屋よりうまいでぇ」と言うあたりは大阪のグルメの面目躍如。お金が入るとすぐ「美味しいものを食べに行こう」と外出、そのおいしいものと言うのが、卵入りのカレーとか、善哉とか、けして上等の物ではない所も、大阪的だ。

しかし、役者の中には関西弁のイントネーションがまずいのもいて、また蝶子の恋女房ぶりがちとベタベタしすぎて、こういう媚びた表情とか物言いは大阪的にあらずと感じる。山茶花の、長男の森繁が追い出されたあと、店を継ぐ大学出の養子のケチケチとして潔癖な素振りがまた、対照的で何ともおかしい。

しかし、何よりも見た後に残るのは、淡島のぬれたような大きな瞳で、これが若い二人の恋物語だなあという印象をもたらす。このために、何年かあとにはまた見ようかと言う気になるのだろう。
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