私の周りでこのところ川柳ブームが起きている。
1.四十年以上年賀状のやり取りがある女の友人M。仕事と子育てに熱中していた十数年があったが、いつか子供の話題が消えて、健康不安の時期も一段落、前年は「流氷に乗った、クジラの潮吹を見た、スノボに挑戦した」と心身ともに元気いっぱいな様子だった。
一転して今年「川柳を始めました。川柳には時事川柳と現代川柳があるが教室で詠むのは現代川柳です」といかにも彼女らしく、理論から始まる。さて実作はと見ると、おや、何も書いてない。もし好奇心いっぱいの彼女が次に移っていなければだが、来年に期待しよう。
2.やはり二十代からの女の友人で、経済研究所勤務、年賀状にはいつも中東情勢などについて書いて来るTさん。日ごろ何をしているか全然分からないので、たわむれにネット検索したところ、同姓同名の人が毎日新聞の仲畑流万能川柳で2008年度年間大賞を受けたとある。まさかあの彼女の訳はあるまいと更に読むと、やはり彼女である。
寿々姫というのが柳名。東京版「ひと」欄09⁻3‐7にも写真付きで出たのだが、当地版では出ていない。実作を発表する前からしゃべる人もいれば、聞かれなければ10年以上だまってる人もいる。人さまざまである。(そう言っている私は作りもせずあれこれ言うだけ)Tさんは仲畑氏と対談したファンクラブ誌を送って来たが、俳句の様に、川柳も顔の分かる間で繰り広げられるアナログな世界のようだ。ちなみに寿々姫の大賞作品
「危ないは地球ではなく人類だ」
地球を大事にしようとか、地球が危ない、というのはそもそも人間の傲慢であり
恐竜を絶滅させた隕石衝突からも地球自体は回復し、我々人類が誕生したのですから
「人類が滅べば地球よみがえる」のですよ、きっと
というのが3月月間大賞でのコメントだが
受賞作よりこちらの方が論旨が鮮明。
ちょっぴりニヒルで先鋭、痛快な文明批評だ。
2020-1-12 追記 2年たったこの春、寿々姫は1句、Mは6句(高点句から無点句まで)書いてよこした。単なるブームではなく、やめられない魅力をもつのが川柳(などの表現活動)なのだろうか。
→寿々姫句集「地球と肉球と」21-5-19
→柴田午朗「椎の花」14‐9‐18