映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
【映画】ドクトル・ジバゴ
1965年 米=伊 鑑賞 オンデマンド
製作 カルロ・ポンティ 監督 デヴィッド・リーン
原作 ボリス・パステルナーク 音楽 モーリス・ジャール
出演 オマー・シャリフ ジュリー・クリスティ アレック・ギネス トム・コートネイ リタ・トゥーシンハム ジェラルディン・チャップリン ロッド・スタイガー
賞とは何だろう?文学では芥川賞というものがある。子供のころは、恐ろしいほど権威のあるものだと感じていた。後年、芥川賞受賞作品のみを集めた全集が発行されたが、読んで見て、失望を覚えた。昔の受賞作品よりも、いまの2,3流作品の方がはるかに面白いことに気づいたからだ。ノーベル文学賞もしかり。特にノーベル賞には、与える側の思惑が感じられる。「ドクトル・ジバゴ」はソ連在住の作家パステルナークによって書かれたにも拘らず、国内では無理と考えられ、1957年イタリアで刊行されて世界的評判となり、翌58年、ノーベル文学賞を授賞された作品。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・・・・受賞すれば亡命を余儀なくされると考えたパステルナークは「母国を去ることは、死に等しい」と言い受賞を辞退した。ソ連の共産党は「(「ドクトル・ジバゴ」は)革命が人類の進歩と幸福に必ずしも寄与しないことを証明しようとした無謀な試みである」と非難した。当時「社会主義革命の輸出」をしていたソ連政府にとっては「ロシア革命は人類史の大きな進歩である」という見解に疑問符をつけることは許しがたいことであった。(Wikipediaより)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
こういう政治的な因縁がつきまとい、特に心情的に中国・ソ連びいきの左翼だった若い時は胡散くさく感じ、そのまま敬遠し続けてきた小説・映画だったが、モーリス・ジャールの甘美なメロディ「ラーラのテーマ」だけは、よく耳に入っていた。このたび、映画と原作の両方に半世紀過ぎて初めて触れて、ある感慨があった。
映画は、特に冒頭が奇妙に思える。それは、ソ連の実情を肌で知らぬままに、想像を逞しくして作っていたからに違いない。監督も出演者も、そうそうたるメンバーを集めているにも拘らず・・・トム・コートネイ(「長距離奏者の孤独」「土曜の夜と日曜の朝」)ジュリー・ハリス(華氏451)リタ・トゥーシンハム(「蜜の味」「ナック」)オマー・シャリフとアレック・ギネス(デヴィッド・リーン監督と共に「アラビアのロレンス」)その他…そして、その年のアカデミー賞を、さすがに主要部門ではないが、5つも授賞していることに、またまた、ある種の政治的なメッセージが感じられる。
主人公が、政治とは最も遠い所にいるような、詩人であり、医者であり、恋する男である、その純粋性はそのまま作家にも通じると思うが、かえってこのような問題を引き起こすことの悲劇を、感じざるを得ない。
原作は、松江の市立図書館では閉架図書にあった。(茨木市では書架に何冊でも並んでいる)これは叙事詩というより叙情詩のような小説だ。映画化するのは困難だったろう。だから、所所は夢のように美しく、合間は信じられないほど不可解な話になったのだろう。ノーベル賞辞退騒動で、西側がどうしても映画化したくなった事情も分かるが、無理な話だったのだ、所詮。この作品は、むかし東西冷戦というものがあったこと、映画界もその影響を受けざるを得なかったことを証拠だてる奇妙な記念碑ともとれるが、「アラビアのロレンス」を取った名匠と、ヨーロッパの名優達がここに集っており、一度は見てよい作品であろう。(のちにヴィットリオ・デシーカが見事に撮った「ひまわり」の花も咲いている)
製作 カルロ・ポンティ 監督 デヴィッド・リーン
原作 ボリス・パステルナーク 音楽 モーリス・ジャール
出演 オマー・シャリフ ジュリー・クリスティ アレック・ギネス トム・コートネイ リタ・トゥーシンハム ジェラルディン・チャップリン ロッド・スタイガー
賞とは何だろう?文学では芥川賞というものがある。子供のころは、恐ろしいほど権威のあるものだと感じていた。後年、芥川賞受賞作品のみを集めた全集が発行されたが、読んで見て、失望を覚えた。昔の受賞作品よりも、いまの2,3流作品の方がはるかに面白いことに気づいたからだ。ノーベル文学賞もしかり。特にノーベル賞には、与える側の思惑が感じられる。「ドクトル・ジバゴ」はソ連在住の作家パステルナークによって書かれたにも拘らず、国内では無理と考えられ、1957年イタリアで刊行されて世界的評判となり、翌58年、ノーベル文学賞を授賞された作品。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・・・・受賞すれば亡命を余儀なくされると考えたパステルナークは「母国を去ることは、死に等しい」と言い受賞を辞退した。ソ連の共産党は「(「ドクトル・ジバゴ」は)革命が人類の進歩と幸福に必ずしも寄与しないことを証明しようとした無謀な試みである」と非難した。当時「社会主義革命の輸出」をしていたソ連政府にとっては「ロシア革命は人類史の大きな進歩である」という見解に疑問符をつけることは許しがたいことであった。(Wikipediaより)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
こういう政治的な因縁がつきまとい、特に心情的に中国・ソ連びいきの左翼だった若い時は胡散くさく感じ、そのまま敬遠し続けてきた小説・映画だったが、モーリス・ジャールの甘美なメロディ「ラーラのテーマ」だけは、よく耳に入っていた。このたび、映画と原作の両方に半世紀過ぎて初めて触れて、ある感慨があった。
映画は、特に冒頭が奇妙に思える。それは、ソ連の実情を肌で知らぬままに、想像を逞しくして作っていたからに違いない。監督も出演者も、そうそうたるメンバーを集めているにも拘らず・・・トム・コートネイ(「長距離奏者の孤独」「土曜の夜と日曜の朝」)ジュリー・ハリス(華氏451)リタ・トゥーシンハム(「蜜の味」「ナック」)オマー・シャリフとアレック・ギネス(デヴィッド・リーン監督と共に「アラビアのロレンス」)その他…そして、その年のアカデミー賞を、さすがに主要部門ではないが、5つも授賞していることに、またまた、ある種の政治的なメッセージが感じられる。
主人公が、政治とは最も遠い所にいるような、詩人であり、医者であり、恋する男である、その純粋性はそのまま作家にも通じると思うが、かえってこのような問題を引き起こすことの悲劇を、感じざるを得ない。
原作は、松江の市立図書館では閉架図書にあった。(茨木市では書架に何冊でも並んでいる)これは叙事詩というより叙情詩のような小説だ。映画化するのは困難だったろう。だから、所所は夢のように美しく、合間は信じられないほど不可解な話になったのだろう。ノーベル賞辞退騒動で、西側がどうしても映画化したくなった事情も分かるが、無理な話だったのだ、所詮。この作品は、むかし東西冷戦というものがあったこと、映画界もその影響を受けざるを得なかったことを証拠だてる奇妙な記念碑ともとれるが、「アラビアのロレンス」を取った名匠と、ヨーロッパの名優達がここに集っており、一度は見てよい作品であろう。(のちにヴィットリオ・デシーカが見事に撮った「ひまわり」の花も咲いている)
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
« 【映画】ポエ... | しゃれこうべ... » |
そういえばジュリー・クリスティー、今年のアカデミー主演女優の声が高いですね。残念ながら「Away from Her」はまだ見てません。それにしてもいつまでたっても奇麗な人です。
ジュリー・クリスティ、この作品がデヴューで24歳前後、いま60代後半で主演女優賞候補とは、驚くべきことですね!このラーラも光り輝くような美しさで、ユーリーが迷ったのも無理はないと思えます。ところで、相変わらずクラウディアさんのところは私は侵入禁止のようですが「Enchanted」は面白そうだなと思いました。8歳の少女並みに?