映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
映画「そして父になる」

2013 日本 130分 DVDで鑑賞 監督・脚本・編集 是枝裕和
出演 福山雅治 真木よう子 リリー・フランキー 尾野真千子 樹木希林 夏八木勲
かなり昔に公開された映画だが、あまり食指が動かず、今度ようやく見ることに。
(あらすじ)
申し分のない学歴や仕事、良き家庭を、自分の力で勝ち取ってきた良多(福山雅治)。順風満帆な人生を歩んできたが、ある日、6年間大切に育ててきた息子が病院内で他人の子どもと取り違えられていたことが判明する。血縁か、これまで過ごしてきた時間かという葛藤の中で、それぞれの家族が苦悩し……。(シネマトゥデーより)
子どもの取り違え事件にからめて、エリートと庶民の2家庭を、父と息子の側面から語る。
良多の父親(夏八木勲)はしょぼくれてるので、先祖からではない、成上りのエリートである。
これは監督自身の個人的な関心事を映画化したなと感じて調べて見たら、やはり6歳の子ども(娘)がいることや、監督自身の欠点や短所をエリートの良多に与えていることが分った。娘がいるのに息子にしたことに彼のこだわりを感じる。
父と息子、男の関係に焦点が当たり、女は大人も子供も添物のようで影が薄い。
「歩いても歩いても」といい「空気人形」といい、彼は女に関心がないのではないか。
エリート男性の通弊だが、妻には目立たぬ大人しい従順な女をほしがる。関心は自分と息子の立身出世だけ。
だから、共にノミネートされても、日本アカデミー助演女優賞を取ったのはエリートの妻を演じた尾野真千子ではなく庶民の妻を演じた真木よう子だった。人物の迫力の差であろう。
子供がいきいきしているのは、これも是枝監督らしい。
●取違え事件はそれだけでドラマになるので、人物が特に際立つ必要はないと思う。いや目立てばむしろ邪魔である。
エリートと庶民という設定の必要はあるのか、ふたりが妙に個性的な人物になっているが。
ついでに樹木希林も、いつもの彼女らしいが不必要におどけた演技。
昔のTVドラマやCM以来の彼女の特性である。
●また、看護婦のしでかした犯罪は、それをテーマにひとつのドラマになりそう。
つまり、福山雅治と尾野真千子の裕福で幸せそうな夫婦は、
何の悪意もなく、ただそこに存在するだけで、他人の犯意を引き起した。
そう考えると人間が生きていること自体が、他人に対して悪になり得るということになる。
「親業」には資格が必要だという説はバーナード・ショウも唱えるが、それも調理士とか運転免許と同等ではなくもっと厳しい審査がいる。親になる前に、人間が存在するとはどういうことかを問う哲学コースが必要ではないか。実際には資格のない人間に限って子供づくりの能力にたけているという現実があるが。
是枝監督がこの2点を思い至るのは、これから更にいくつかの挫折を経て後かも知れない。
似たテーマ
→「もうひとりの息子」15-4-17
是枝裕和
→「空気人形」10-6-24
→「歩いても歩いても」8-12-15
→「奇跡」11-9-14
→「エンディング・ノート」12-9-8
尾野真千子
→「もがりの森」7-7-14
真木よう子
→「源氏物語 千年の謎」11-12-11
「バーナード・ショーの言葉」
→8-12-19
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