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いつも新鮮な世界にいる姑

「私何だか死なないやうな気がするんですよ」宇野千代(1897-1996)

        森光子さん(1920-2012)は姑と同じ歳

夜11時前、リーン、リーンと電話のベルが鳴る。「はい、お姑さんですか、OOさんならたった今そちらへ向かいましたよ」義母「ああそう、イエね、途中で道がわからなくなってるのではと思ってね」「道がわからない」って、ちょっとお姑さん、ここから歩いて5分の、しかも自分の生まれ育った家が分らなくなることがあると思いますか?(もちろんこのセリフは口には出さない)

彼女には、この2年あまり毎晩同じ部屋で泊まっており、たった数時間前も夕食を介助していたかれが、始めての訪問者としか思えないのだ。つまり、彼女の脳には数時間しか記憶がない。だから、きょう行った施設に「ご無沙汰しておりますが、明日は伺いますので、迎いの車をよろしくお願いします」という電話を毎夜かけようとするのを、必死で止めなければならない。満90歳になった彼女だが、それでも自分の足で歩け、週4回はデイサービスに通える(ただし、これだけ貢献しているのになぜ給料が出ないのかを不思議がっている)のは、大工の棟梁の父親から受け継いだ身体のせいだろうか。柄は小さいし細身だけれど骨密度は160%(同年代比)で、嫁も及ばぬ骨太さなのだ。

夫は「誤算だったなあ」とこのごろボヤいている。4年前の夏、「今にもあの世に旅立つのでは」と恐慌をきたして帰郷したのに、今では「彼女は死なんのじゃないか」と本気で言い始めている。まあ宇野千代さんの例もあるし、その心配はないと思うけれどね。
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コメント
 
 
 
笑っては申し訳ないけれど (桃すけ)
2011-01-14 10:19:00
笑ってはもうしわけないけれど、思わず・・。わたしの母が入院していたとき、姉妹で見舞いにいくと、同室の女性が自分の娘と間違えて、顔をなぜたりされたことがありました。とてもきれいな人で、お茶を教えておられたそうですが、だからなのか、食事の所作はとても美しいのですが、口には入っていないですね。お嬢さんが2人おられて、わたし達と同年齢だったので、間違ってしまわれたんでしょうね。あのかたより、母のほうが先に亡くなってしまいました。介護の仕事をしている妹は、どの人もみんな、人生の先輩だし、わがまま言っても私は全然腹たたないよ。失礼だけど、可愛く思えると言っていました。わたしにはとてもできない仕事です。骨密度には驚きました。そんなことあるんですね。私は不安ありです。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2011-01-14 14:18:35
桃すけさん、笑っていただき、ほっとしています。調子に乗って書いて、自分ではいい気分だったのですが、傍の人から見たら少し毒がすぎて見えるかとも。
骨密度は、不安ありなら一度計ってごらんになれば?たとい骨粗鬆症と判明したとしても、今はよい薬があり、確実に改善するようですし骨折などしないうちにお早くどうぞ。
妹さん介護の仕事をなさってるの、包容力のある方なんでしょうね。お姉さんも人生の先輩の一人としてわがままを許容されてるのかな?オット失礼しました。
 
 
 
Unknown (luna)
2011-01-17 02:41:22
介護されている身としては難しいこともおありでしょうが、ほんわかユーモラスで楽しく読ませていただきました。
私は毒がすぎているなどとは全く感じませんでした。
いや、それは自分が毒吐きまくってるからだと思いますが。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2011-01-18 10:45:58
嬉しい~。そういって頂いて有難いです。
lunaさんもたしかに舌鋒鋭い方ですが、小気味良いと感じたことはあっても、貴女から傷つけられた覚えはないですね。(その逆は知りませんが。)lunaさんの人生にもこの時期になれば色々あるんでしょうね。
 
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