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映画「恋のロンドン狂騒曲

2010 米西 98分 DVD鑑賞 監督・脚本 ウディ・アレン 原題≪You Will Meet a Tall Dark Stranger≫
出演 アンソニー・ホプキンス アントニオ・バンデラス ナオミ・ワッツ ジェマ・ジョーンズ ジョシュ・ブローリン

【解説】
ロンドンを舞台に2組の夫婦が織り成す4つの恋を描いたラブコメディ。ある日突然、死の恐怖にとらわれたアルフィ(アンソニー・ホプキンス)は、若返りの特訓に励み、挙句の果てにコールガールを恋人にする。妻のヘレナ(ジェマ・ジョーンズ)は夫のそんな様子に茫然自失で、インチキ占い師の助言に従って新しいパートナーを見つける。
一方、かれらの娘サリー(ナオミ・ワッツ)と作家ロイ(ジョシュ・ブローリン)の夫婦にも、危機が到来。サリーはギャラリー経営者にひかれ、ロイは自宅の窓越しに見かけた赤い服の美女に心奪われてしまい……。(映画.comより)

【感想】
アンソニー・ホプキンスが印象的。「羊たちの沈黙」のレクター博士がこういう役を引き受けたことに意表を突かれた。
離婚後に「お似合いな女性」だと紹介され、かれを大いに不満がらせたのは、骨粗鬆症で股関節症の主で、これはまさに私と同じ。本人にとっては大真面目で深刻な話なのだが、視点を変えると笑える話になってしまう。また彼が若い妻とのセックスの前にバイアグラを飲むが、すぐ効き目が表れず、妻を「あと何分」と待たせるのが、これも本人には大真面目で深刻な話だが、2人を見ている立場からは笑ってしまう。
年齢も教養も価値観も全く違う年の差婚の悲喜劇はアレンの妻が35歳下ということを知ると説得力がある。

サリー(ナオミワッツ)は知的で上品、グレイのセーターと同色のタイトスカートにハイヒール、肩からバッグをかけて友人と公園を歩くシーンが美しい。(1953年「ライフ」誌にそっくりの写真があった)しかし上司(アントニオ・バンデラス)に自分と関係する気の有無を徹底的に問い詰めるのには恐れ入った。よほど女としての自信がないとできないこと。

原稿が進まぬままに、つい向かいの窓の美女に惹かれるジョシュ。首尾よくその美女の部屋に移ったら、今度は元妻の姿が向かい窓から見える。「隣の芝生は青い」は永遠の真理だろうか。
死んだはずの男が生きており、ロイの剽窃がばれそうになるのは、観客にも不意打ちで、このあたり心理的にとてもこわい。

老若ともに男たちは欲張った挙句に悲惨な事態に陥るが、欲望まっしぐらの姿は可愛くもある。
一方でヘレナは、真実こそ最善と夫の幻想を壊すことで結婚が破綻し自殺まで図ったくせに、今度は占い師の言うままになりながら、一方で娘婿の幻想はせっせと崩す。さいごは同じような幻想に生きる男と会って幸福になるのが何とも皮肉。人間、他人の抱く幻想はよく見抜けるが、自分が幻想を抱いているのは分らないものだ。「幻想は薬より効く」人間から幻想を取り上げてはならないのだろうか?

「人生は単なるから騒ぎ、意味などない」というシェークスピアのことばで映画は始まり、終っている。
4人の人生、一つ一つを近くで見ると悲劇だが、全部まとめてみたら喜劇に思えるのはなぜ?

原題「背の高い浅黒い見知らぬ人に遭う」とは「素敵な男に会う」と言う占いの決り文句らしい。
舞台がロンドンである必要はあるのかと言う人もいるが、美女の故国がもと英領インドであること、その許婚者がベルギー勤務で、結婚式にスイスやスペインから人が来たり、また街を移動する人がタクシーや徒歩であることなどは、やはりロンドンらしい感じ。製作を英国でなく外国にしたことで、遠慮なく英国人の滑稽さを笑い飛ばすことが出来たようだ。

アンソニー・ホプキンス
 →「諜報員ブラント 第4の男」12-10-1
 →「ノア 約束の舟」14-6-23

ナオミ・ワッツ
 →「ダイアナ」13-10-23

ウディ・アレン
 →「タロットカード殺人事件」14-11-10
 →「ミッドナイト・イン・パリ」14-8-5
 →「それでも恋するバルセロナ」9-12-6


コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (セレンディピティ)
2014-11-20 08:37:52
こんにちは。またまた大好きなアレンですね。
この作品、私も見ました♪
ミッドナイト・イン・パリのヒットで、霞んでしまったようですが
私にとってはこちらの方がアレンらしくシニカルで気に入りました。

ひとつひとつは悲劇なのに、全部まとめると喜劇になるとは...
なるほどうまいことをおっしゃいますね。^^
アンソニー・ホプキンズはじめ、シニアたちがとてもかわいくてチャーミングでした。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2014-11-20 19:01:35
セレンディピティさん、こんにちわ!
やはりこれもご覧になっていましたか?
>シニアの二人可愛くてチャーミング、たしかにそうでしたね。若い二人は可愛いというにはまだ野心がありすぎるのでしょう。そうでないとまた困りますけど。
「ミッドナイト・イン・パリ」は米国でも日本でも、大うけですが、アレンの感傷性が出て少し甘いのね。アメリカの知識人であるアレンには、パリへのあこがれとイギリスへの尊敬(今回は大分克服したように見えるけど)は抜きがたいのかな。
 
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