映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
映画「ミッシング・ポイント」
2012 英米 130分 原題≪The Reluctant Fundamentalist≫ 原作 モーシン・ハミッド
DVD鑑賞 監督 ミーラー・ナーイル
出演 リズ・アーメド ケイト・ハドソン キーファー・サザランド リーヴ・シュレイバー
「乗り気でない原理主義者」という題は、わかりにくいけれど「ミッシング・ポイント」と言う邦題も、作品の一部しか表現していないように思える。(一人の米国人がさらわれて消えることは確かなのだが)
主人公チャンゲス・カーンはパキスタンの古都ラホールの知識階級出身。貴族の血筋というだけあって王子のように凛々しく気品ある風貌だ。18歳で単身アメリカに留学、プリンストン大学で学業スポーツとも優秀な成績で卒業、有名企業に就職し、白人の恋人もでき、いわば市場原理主義の世界で成功を納める。しかし2001年9月11日、貿易センタービルに飛行機が飛び込んで以来、ムスリムへの迫害が蔓延するアメリカでしばしば不快な目に遭う。(明らかにアラブ以外の人物が町角で異常な言動をしていたらアラブと誤報され、たまたま通りかかったチャンゲスが逮捕されたこともある)そこで米国を離れ、故国でラホール大学教授に。イスラム原理主義と市場原理主義、2つの原理主義の、どちらともしっくりこない主人公と言っていいと思う。
ラホールは「ラホールの副領事」と言う小説で懐かしい名前だが、パキスタンは映画「ダイアナ」で見た位で、日頃はインドやアフガニスタンとの関係で厄介な存在であるかのように報じられる、日本と縁遠いところである。(忘れていたが映画「沈まぬ太陽」にも出てくる。11月25日追記)そのため未知の世界を見る楽しみがあった。民謡を歌う男や結婚式の準備をする母、妹との会話などが人間的で楽しげだ。
わたし個人はパキスタン人が米国でこれほど目覚ましい成功を収めることに驚きを感じた。ウディアレンの「恋のロンドン狂騒曲」でもインド人の一家がロンドンで知識階層として成功しているし、英国の植民地だった国は英語教育が行き届き英語が日常的に使われているのかも知れない。
白人の恋人(ケイト・ハドソン)が彼に異国情緒を感じるのは無理もないことであり、彼が彼女を軽率とそしる気持も良くわかった。彼女は眠そうな顔だなと思ったが、撮影当時妊娠していたとのこと。
ミーラー・ナーイル(1957~)はインド出身NY在住の女性でこれまで「サラーム・ボンベイ」「ミシシッピ・マサラ」「カーマ・スートラ」「太陽に抱かれて」「その名にちなんで」「アメリア永遠の翼」「モンスーン・ウェディング」「インディア・キャバレー」などを見ている。「9.11」と言う映画も撮っているらしいので、これもその系列につながるのかも知れない。小説の邦題は「コウモリの見た夢」となっているが、二つの原理主義の中間にいる主人公をコウモリにたとえているのではないかと思う。
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