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映画「人生万歳!」


2009 米 92分 BSプレミアムにて11月27日鑑賞 原題≪Whatever Works≫
監督&脚本 ウディ・アレン 
出演 ラリー・デヴィッド エヴァン・レイチェル・ウッド パトリシア・クラークソン
ヘンリー・カヴィル エド・ベグリーJr

ビデオやDVDの登場のおかげで、止めたり、繰返したりが習慣になっているが、これは久しぶりにTVで見たら、気になる箇所でも後戻りが出来ず、焦ることがしばしば。

この映画はNYを舞台に、ウディ・アレン(1935~)と外見も性格も似たような天才物理学者(ラリー・デヴィッド)が主人公になっている。速射砲のような毒舌と衒学趣味、懐かしい雰囲気だ。世間の目には「偏屈な独居老人」の主人公のもとに、ある夜、濡れそぼった野良猫のようにひょっこりと来て居ついてしまったのが南部の少女(エヴァン・レイチェル・ウッド)。いくら毒舌を吐いても何故か好かれるのは人徳だろうか。そのうちに男女の仲になってしまい…。この辺りはアレンの実人生とかぶる。

登場人物が突如向き直って観客に語りかけるのは「アニー・ホール」以来のアレンの手法。「恋のロンドン~」でもちらりとあった。

自由なNYの空気と対照的な南部出身の家族、娘と父(エド・ベグリー・ジュニア)母(パトリシア・クラークソン)、みな金髪碧眼で信仰厚く保守的、そういう一家が変身していく。まさにアレンの愛してやまないNYの魅力だろう。
ところで主人公が物理学者だけあって「ハイゼンベルグの不確定性原理」が登場した。次作の「恋のロンドン~」でも耳にした名前、その筋では有名らしい。

空腹な娘にしぶしぶ食物をあたえるシーンではカポーティ「ミリアム」を思い出した。
中高年になってゲイに目覚める父親が面白い。これまでもゲイは「ラジオ・デイズ」などアレン映画にちらちらと影が差していたが、これほどはっきり描くのはやはり時代のせいか。しかし女性の同性愛は、「バルセロナ」ではあったが、あまり積極的には言及していない。「マンハッタン」でレズビアンにひどい目に遭って以来、許せないのであろうか?(ただしエヴァン・レイチェル・ウッドは以前から両性愛だと称し、今は「Lの世界」のキャサリン・メーニッヒと仲が良いそうだからそうかも知れない)

何度自殺を図っても死にきれない主人公は、アレンの厭世傾向の表れだが、それでも人生はまだまだ続く。
生まれたこと自体、精子と卵子の結びつき、何億分の一の偶然である。「人間万事塞翁が馬」で愛も幸せも才能とは無関係に生じるが、長くは続かない。だが結局は(「人生万歳!」と言う手放しの楽観論よりは)「人生何が起きるかわからないが起きていることは、何でも認めるほかないじゃないか」と言う苦笑を交じえた諦めがアレンの本音かもしれない。日本でのインタビューではいつも眠そうであくび混りである。質問者が小声で礼儀正しく単調なせいか、単に時差ぼけのためかわからないが。

似たような題名の↓はポーランド人肉屋の息子が主役のカナダ映画で、全くの別物である。

「人生、ブラボー!」→13-10-14

「Lの世界}8-9-8

パトリシア・クラークソン→「それでも恋するバルセロナ」9-12-6
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (セレンディピティ)
2014-11-30 15:49:11
こんにちは。
人生万歳! 私も公開時に劇場で見ました。
あまり評判はよくなかった記憶がありますが(バカバカしいから?)
私は大いに楽しめました。
南部からニューヨークに移り住んだとしても(私もそうです)
人間そうそう変わるわけではないですが
たしかにニューヨークにはそう思わせる刺激と魅力がありますね。
アレンのニューヨーク愛を感じる作品でした。
 
 
 
Unknown (Unknown)
2014-11-30 16:55:49
セレンディピティさま
TBとコメント有難うございます。
アレンのNY愛を感じるって本当ですね。何だか、お洒落な服を脱いで着心地の良い普段着に着かえたアレンって感じで、「帰ってきてよかったわねえ」と言いたくなりました。
 
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