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「三銃士」を読む

痛快 世界の冒険文学21 藤本ひとみ・文 原作・A.デュマ 絵・東逸子(原作者デュマより藤本ひとみの名前が大きく書いてあるのは翻訳ではないむしろ創作に近いと言う意味か)

子どものころ読んだ講談社の本は、久米元一(文)と梁川剛一(絵)のコンビ。彫刻家でもあったという梁川剛一は筋骨たくましい男性像が印象的だった。一方、この現代版は、文・絵ともに女性の手になり、平面的で宝塚的=中性的である。草食男子のはびこる現代日本にふさわしい?



岩波少年文庫 生島遼一訳

以上二つは子供向け。



  鈴木力衛訳 ダルタニャン物語の1・2巻。ブッキング刊
ダルタニャン物語は全11巻。いわゆる「三銃士」は1・2巻である。



読んで面白いのはやはり大人向けの全訳である。岩波文庫(生島遼一訳)と、ブッキング(鈴木力衛訳)刊を手にしたが、鈴木訳は講談社の系統で娯楽性に富み、生島訳は知性的で品がよく、どちらも甲乙つけがたい。結局は活字の大きさ=読みやすさで選ぶことになる。

蛇足:去年読んだ辻邦生の回想録に、かれが戦後まもなく東大生だったころ、数少ない女子の学生のひとりが「これまで何か難しいと感じたことはない」と言っていたそうで、そのことばに彼もだったろうが、私はがーんと頭を殴られたような衝撃を受けた。後に辻佐保子つまり辻邦生の妻となるその女性は鈴木力衛の姪だったという。彼女は「どくとるまんぼう航海記」ではパリ在住の小柄な日本人女性として戯画化されているけれど、彼女のおそるべきDNAを共有する叔父、鈴木力衛(りきえ)、この名前はモリエールの訳者としてよく目にしていたが、その文をはじめて読むので、興味津々。

デュマは「モンテクリスト伯」からエドモン・ダンテスのような超人的な人物かと勝手に想像し畏敬すら覚えていたが、「三銃士」のポルトスを見ると「ご馳走とお洒落と色事が大好き」な俗な人物で、従者や女性の扱いは残酷だし、お世辞にもナイス・ガイとはいえない。黒人の血の混った巨大漢だったというデュマは、ダンテスよりはポルトスに近かったのではなかろうか。

→2011-11-23
映画「三銃士 王妃の首飾りとダヴィンチの飛行船」
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