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【映画】バーダー・マインホフ理想の果てに

2008 独仏チェコ 150分 レンタルDVD 原作 シュテファン・アウスト 監督 ウリ・エデル 出演 マルティナ・ゲディック モーリッツ・ブライブトロイ ヨハンナ・ヴォカレク ブルーノ・ガンツ 原題 DER BAADER MEINHOF KOMPLEX (THE BAADER MEINHOF COMPLEX)

60年代後半から70年代にかけて、若者の反乱が世界各地で起ったが、中でも過激なドイツ赤軍派(RAF)は、創設者、ウルリケ・マインホフとアンドレアス・バーダーの名前をとってバーダー・マインホフ・グループと呼ばれた。「善き人のためのソナタ」のマルティナ・ゲディックがマインホフを演じている。

当時は社会を揺がした名前であり、今も知る人ぞ知るだが、そのせいか、映画は背景の説明などはあまりしていない。それで初めはとまどったが、メモを取りつつ見れば、かなりつかめるものがある。あとは原作を読むか、自分で調べよということか。

1967年、イランのパーレビ国王夫妻訪独抗議デモで一青年が殺されたのをきっかけに、左派ジャーナリスト♀のウルリケ・マインホフはドイツの警察国家体制に疑問を持つ。

冒頭で10歳前後の少女が2人ヌードで海岸を歩いている。マインホフは2人の娘と夫を持ち休日を伸び伸びと楽しんでいる。このちょっと衝撃的なシーン、当時の「性と政治」はどちらも大事という風潮を端的に表している。
もう一つ、中東経験のある私に特に驚きだったのはヨルダンでの風景。ドイツ赤軍派は、ここで軍事訓練を受けようとやって来た。しかし女性達のショートパンツは男女を問わず肌を出さないイスラム教徒には余にも挑戦的だし、宿舎もイスラムの常識の男女別を拒否した。そのうえこれ見よがしに全裸で日光浴したりする。軍事訓練も、ここでは対イスラエル戦のためで、鉄条網の下を匍匐前進するのだが、「我等は都市ゲリラだから、銀行強盗に役立つ訓練がしたいのだ」と言い張る。戦争中の外国に来てその言い草は無いと思うが。異文化への無知と先進国のおごりである。

ドイツでは大戦中ナチスに何もいえなかったことへの反省から、戦後は不正への異議申し立てが正義であり、また、発言には行動が伴わなくてはと考える人々が多かった。だから、体制に追われるRAFに共鳴する人々や支持者も多くて、20代では25%の理解者がおり、700万人が支持しているという計算になった。したがって、彼らが潜伏することも容易だった。警察のトップであるギュンター・ガンツは常にそういう複眼で見ていた。

しかし、デパートへの放火、新聞社の爆破、銀行強盗、要人(大企業主や判事)誘拐殺害、海外大使館の占拠、飛行機ののっとり、まあよくもこれだけやってくれたものだ。
長い髪をなびかせ、銃を手にミニスカートで飛び回る女性達は、ゴダールの「中国女」=1967「気狂いピエロ」=1965を思い出すし、カルメン・マキや浅川マキ、あの当時の若い女性を懐かしく思い出す。その上、アンドレアスの恋人、グドルンの父親は牧師であるが娘を支持し、母親は「娘のお蔭で私自身、解放されました」と語る。ふと「白バラの祈り」=2005の両親を思い出す。

映画は若者や体制を全面的に肯定も否定もせず、今の視点で記録することが目的であるかのようだ。
この映画と2004の「ベルリン、僕らの革命」→2010-12-28とは世代間の対比で裏表のようである。「夜よ、こんにちは」=2003伊 「鉛の時代」=1981独 もまた見たくなった。
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (闘いうどん)
2011-01-27 13:34:46
はじめまして。この本の原作はとても読んでみたいですね。どうやら翻訳はされていないようなのですが。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2011-01-28 09:01:58
闘いうどんさん、初めまして。コメント有難うございます。訳が出てないのは意外です。貴方は三島憲一の岩波新書で読まれたのですね。私も読んでみようと思います。
 
 
 
Unknown (桃すけ)
2011-01-28 12:06:39
ビアンカさんは色々体験されているんですね。中東にも? この時代、私はちゃちゃらと遊んでいただけのようです。恥ずかしながら、ドイツ赤軍派のことも知りません。同じ時代を生きていても随分違うのだと、あたりまえのことを感じています。カルメンマキは懐かしいわ。同じ髪型をしていました。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2011-01-29 09:05:05
桃すけさん、そのヘアスタイルは似合ったことでしょう。私もストレートの長い髪をしていました。ただ、カルメンマキのように前髪は切らなかったかな。中東は、私の新婚旅行先です。長い旅行(2年)でしたけど。
 
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