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映画「舞妓はレディ」


2014 日本 135分 松江SATY東宝にて 監督・脚本 周防正行 出演 上白石萌音 草刈民代 竹中直人 田畑智子 冨司純子 渡辺えり 岸部一徳 濱田岳 評価★★★&(66点)

【解説】

周防監督が20年前から考え続けてきた企画で、とある少女が舞妓を夢見て京都の花街に飛び込み、立派な舞妓を目指し成長していく姿を歌や踊りを交えて描く。

【感想】

相撲、禅寺、社交ダンス、裁判所などの、特殊な世界をテーマとしてきた周防監督が、今回は京都の舞妓の世界を扱っている。しかしやはり難題だったようで、少し関心のある観光客が見る以上に深い世界を描けたかは、疑問である。現代の東京生まれのしかも男性である周防監督に、ある程度以上の掘下げは期待しても仕方ないことではあり、本人も単に題材を借りてミュージカルを作りたかっただけだろう。

タイトルは「マイフェアレディ」のもじりであり、内容も、なまりの強い娘を言語学教授が訓練して立派なことばの喋れる女性に仕立て上げるという筋を下敷きにしている。

ただし英国では、良い言葉は上流階級へのパスポートで、習得したら一生ものの値打ちがあるが、花街の言葉を覚えて駆使したからと言って上流階級に入れるわけではない。(お妾とか後妻になれるかもしれないが)むしろその言葉は隠さねば眉を顰められるだろう。花街の言葉とはかつて軍隊で、各地からやってきた雑多な人々のため軍隊用語が造られたような、便宜上の共通語なのだから。

等と文句をつければ切りはないが、それは棚に上げて、ただ楽しく聴いて眺めていればよいのかも知れない。津軽・鹿児島・京都の方言がなまって(?)いると目くじらを立てるのもお預け。ドリフターズ(ちょっと古いが)のコントを見ているつもりになるとよい。

主役の上白石萌音は、若き日の檀ふみまたは南沙織を思わせる眉の濃い美少女で歌もうまく素朴で好感が持てる。

草刈民代は、お座敷芸のシャチホコ立ちが見事決まったのは、さすがバレエで鍛えた身体能力の高さである。監督と結婚し初出演の「Shall We ダンス?」では無表情で固くて、どうなることかと案じたが、あれから18年、この作品では所を得た感じ。彼女のための映画かと思うくらい存在感がある。

またとりわけ厳しいけいこをつける踊りの師匠、原田千代美は演技とは見えないほどの迫力があった。

竹中直人の演じる「男衆」とは、芸子や舞妓の身の回り万端の世話係だが、「おはん」の石坂浩二が私にとっては初体験、比較すると、こちらはマッチョ的、女だけの世界に紛れるには無骨で、しなやかさに欠けるがそれも竹中の身上であろうか。

濱田岳の演じる秋平は花街で生まれ育ったという過去があり、内側からの視点は独特である。「要するに男から金を絞る水商売でしょ」という彼の意見は私に近い。この人は「はじまりのみち」で見て以来だが、いつも不平顔をしている俳優だ。

ところで会場を見ると真昼間とはいえ、観客はふたりだけ。

途中で立ち上がって体をほぐしていると、丁度ミュージカルの場面。音楽にあわせて通路を踊って歩こうかと思ったが、ぎょっとされると困るので腕を広げ上半身をまわすだけにしておいた。しかし満員でないからこういう事も気軽にできる。過疎の映画館にもこういう長所がある。

  「日本橋」 8-7-26 
  「おはん」9-12-20
濱田岳
→「はじまりのみち」14-2-26

関連作 マイフェアレディ(映画)ピグマリオン(戯曲)
「舞妓はん」=1963 「SAYURI」=2005 「舞妓haaaan」=2007
  「祇園囃子」=1953「祇園の姉妹」「赤線地帯」「夜の女たち」=溝口健二 
  「香華」=有吉佐和子/木下恵介「流れる」=幸田文/成瀬巳喜男
 
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