映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
【映画】くちづけ
1957年 大映 74分 原作 川口松太郎 監督 増村保造 出演 野添ひとみ 川口浩 三益愛子 DVDで鑑賞
おはなしは拘置所に父親を訪ねた時初めて出会った若い男女が、競輪場、ローラースケート場、レストラン、江の島の海辺などで親しくなっていく。こういうとありきたりな「ボーイ・ミーツ・ガール」のようだが・・・。
監督は増村保造。イタリー留学後、溝口健二や市川崑の助監督を経ての初監督作品だから、平凡な青春恋愛映画を撮ることには不満だったそうだが、初めから好きな映画を撮ることは無理と諭されて、気を取り直して作ったという。制約の中でそれでもいたるところに彼らしい才能のほとばしりを感じる。
冒頭の拘置所の灰色の建物の前にこちらに背中を見せて川口が立つシーンは、既に独特なものを感じさせる。
母(三益愛子)に息子がお金を貰いに行くシーンは会話と言い仕草と言い、「エデンの東」でのジミーと母の場面を思い出させる。ドアをでて壁にもたれるシーンもそう。
終り近くでのキスシーンは二人の感情の高まりと呼応して、迫力がある。
細かい所では、野添はワンピースや水着だが、ウェストの括れがちゃんとあることにあの時代を思い出して感動する。川口が公衆電話を掛けるシーンで電話帳をめくるが、東京都全部が一冊にまとまっている。浩は白いワイシャツに黒ズボンというあのころの大学生の定番だ。ひとみは大抵、一着きりの横縞のワンピース。給料が7000円未満ではそれも仕方ない。アパートの共同水道では盥でごしごし洗濯もする。昭和30年代はじめはそうだった。
原作者は川口松太郎だが、その妻・三益愛子と息子川口浩と将来の妻・野添ひとみが出演、川口一家で持っている映画?
なお、同じタイトルで筧正典監督、青山京子主演「くちづけ」(1955年東宝)がある。石坂洋次郎の3篇「くちづけ」「霧の中の少女」「女同士」を成瀬巳喜男、鈴木英夫らの監督とオムニバス化したもので、こちらもさわやかな青春映画。わずか2年前の制作だ。タイトルのつけ方がいい加減なのは、前の「第二の性」でも感じたことだが、大映が悪いのか、増村のせいか、いかがなものかと思う。
川口松太郎
→「新源氏物語」14-5-15
→「近松物語」9-10-29
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