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映画「わたしの叔父さん」

2019 デンマーク 106分 原題≪Onkel≫ 監督 フラレ・ピーダセン

主演 イエデ・スナゴー ペーダ・ハンセン・テューセン DVD

2019年東京国際映画祭で最高賞を受け、21年1月、恵比寿ガーデンシネマ最後の上映作品となった。監督は若い男性でこれが長編2作目。

出演者は実際の叔父と姪で、叔父が営む牧場を舞台にしている。

酪農といえば近代的でお洒落なイメージで、対照的に日本の米作は(現在は別だが)泥臭く貧乏なイメージだ。「銀河鉄道の夜」「牧場の朝」「高原列車は行く」などから受ける「牧場」は明るい颯爽とした世界に我々を運んでゆく。

しかし酪農はデンマーク人にとっては全然お洒落でもハイカラでもなく日本人にとっての農業と一緒である。この映画のふたりは田舎で単調な生活を送り首都にも滅多に出て行かない。将来にあまり希望もないような状況にある。ただ、外部からの支援があること、機械化されていることがさすが幸福度世界一のデンマーク。二人きりでたくさんの牛を飼い、搾乳も機械式。手で搾るようなイメージがあったのだが。トラクターを娘が運転し、牛のお産でさえも、自分で面倒を見る。暇なとき娘は獣医の勉強をしている。食事は簡素で、TV国際ニュースを聞きながら、数独をしながら食べる。デート前に髪を縮らす電気コテを買ってくる。

デートの場面は心が和む。川岸の空いっぱいに鳥が渡り、若い二人からやや離れたところに叔父さんが車いすに乗って空を見上げている。戸惑いつつも叔父さんのお供を受け入れた相手に好感が持てた。目を離せない要介護の叔父さんを家に一人で放っておけないからだ。私自身が、車いすの義母と共に展覧会や外食、花見に出かけた日々を思い出した。

娘は獣医に誘われて二泊で首都の講演会に出かける。回転ずし店でおっかなびっくり箸をあやつる場面も。しかしその間に家で叔父さんが危険な状況に陥ってしまう。伏線として、こぶ付デートが出てくるのだろう。

とにかく、最初からずっと面白く一度も居眠りせずにいられた。淡々とした日常の描写が、セリフも音楽もないのに見る者を画面に引き付ける。内容はまるで似ていないが、新藤兼人「裸の島」を思い出した。

→「デンマークの息子」21-10-30

→「朝靄(あさもや)8-10-21

→「わが恋せし乙女」14-3-3

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