映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
映画「道」
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1954 伊 108分 ★午前十時の映画祭★松江SATY東宝にて
監督・原作・脚本 フェデリコ・フェリーニ 音楽 ニーノ・ロータ
製作 カルロ・ポンティ ディノ・ラウレンティス
出演 ジュリエッタ・マシーナ アンソニー・クイン
旅芸人にあこがれたフェリーニ初期の映画。
これは男女の旅芸人の物語。
男は、ザンパーノ、くさり芸人である。(胸に鎖を巻きつけ、胸を膨らませて切る)。
女は、ジェルソミーナ、口減らしのため売られた、知恵の足りない娘。
男、犬をしつけるように、娘に教え込んでいるうちに、人気を博し、実入りも増える。
純粋無雑の、しかも豊かな才能を秘めたジェルソミーナ。こんな女性が地上にいるとは、どうも思えないが、フェリーニにとっては、その当時のジュリエッタ・マシーナはそうだったのかもしれない。
ねたばれあります!!
酒と女とケンカが好きな荒っぽい単純なザンパーノは、しかし、病気になると寝かせておいて炊事する優しさも持っている。病気の妻に「俺の飯は?」と怒鳴る男ではないのだが、娘はもともと料理が猛烈に下手なのだけれど。
彼女が病気になったのは、かれがある男をぶん殴って、死なせたせいである。その男は綱渡りの男だ。ザンパノとは対照的で、ハンサムで優しく、言葉の力で娘の暗い内面に光を射し込まてくれた。彼女には生きる希望が湧いた。初恋だったかもしれない。ザンパーノが嫉妬に駆られたのは無理もない。
ザンパーノも、特別に非人間的な男ではない。彼としては生きるためには芸をしなくてはならず、そのためには助手がいる。病気の彼女のために看病につとめて万事をなげうつことは、死活問題である。
貴重なものを失ったことに気づいたのは、ずっとあとで、、彼女の好きだったメロディで歌っている女性の声を聴いた時だった。このときすっかり忘れていた過去がよみがえって、彼は暗い夜の海辺に身を投げて泣く。
一番好きなシーンは、彼がそのメロディを聞くシーンだ。若い女性が、庭に洗濯物を干しながら歌っている。子供たちが連れ立って歩いている、雑然とした陽の照る街道は、懐かしい雰囲気だ。
この映画はフェリーニの若き日の作品で、彼の好みの肥った女性もちゃんと出てくる。
特別に悲惨な話というより、男女の関係はどこでもこういうもんじゃないのだろうかと、特にこの年になるとそう思う。ただし、前にも書いたが、ジェルソミーナは天上的な存在で、地球上に何億の女性がいるか知らないが、こんな女性はフェリーニの脳内にしか存在しないのでは。
●フェリーニの映画
→「青春群像」12-5-28
→「甘い生活」12-8-29
●アンソニー・クインの出る映画
→「アラビアのロレンス」 11-3-25
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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おいでくださってありがとうございます。この作品、日本公開は3年後の1957年だそうです。川本さんの楽しい独身時代だったのでしょうね。午前十時の映画祭では「甘い生活」が続きます。古い映画が半分以上を占めるわたしのブログです。