映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
伴先生
2021年06月05日 / 本
2003年国書刊行会刊
著者 吉屋信子 初出 1938年1月より「少女の友」連載
吉屋信子42歳の作品。年齢からくる成熟か、戦時中のためか、作風が変化。
物語:東京で生まれ育った伴三千代は、女学校の教師になるため鉄道で地方に赴くが、車中で、親に置去りにされた幼い女の子に遭遇し、その子を引き取ることにする。「捨て子」が珍しくない当時のまずしい日本。
心優しく美しく、富と権力に屈しない新任の先生は絶大な人気を博す。
しかし彼女を貶めようという勢力が現れ、デマを広めたり、授業中反抗したりする。など何やかやあるが、最後はすべてハッピーエンドに。
国語では長塚節の「土」が登場し、いかにも当局に喜ばれそうな教材だ。
修身の「謙虚」で益軒の故事を引用した老教師に対し、都会からきた高慢な女生徒が反論する。若い日の信子は反逆をよしとしていたと思うが、年を取って大人しくなったのか、いえいえ、戦時でそれが許されないので、せめてもの心やりに、敵役にそれをやらせるという賢い方法をとったと解釈しよう。
獅子文六の「信子」は同年10月から「主婦の友」に連載されるが、こちらは九州から東京に出た女教師。どうも対抗馬をぶつけたようだ。
どちらにも師弟・生徒間の恋は登場しない。少し物足りない。
→「信子」6-10-22
→「黒薔薇(くろしょうび)」8-6-22
→「わすれなぐさ」21-6-7
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