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いそ(磯)

   桜島と錦江湾を借景とする磯公園

これは1953年、私が小学3年生の作文で400字原稿用紙一枚である。

         いそ〈磯)
                 3年5組
                 
日曜日に、磯へ遊びに行きました。公園と浜に行くのです。午後の2時からバスに乗って兄弟5人と看護婦さん、合わせて6人で行ったのです。
磯公園について、バスを降りると、私たちは、早く遊びたかったので、大急ぎで門の所まで来ました。中に入って一番はじめに見た物は、お座敷ぐらいの広さの芝生でした。6人は、芝生の横の道を歩いて行きました。行く先には、山が立っています。上ったらとても面白そうなので、私が「のぼって見ない。」と言うとみんな賛成しました。大きい順にどんどんのぼりました。ようじろうちゃんが「こわい、こわい。」と泣き声を出すので、私はようじろうちゃんをつれて階段の方を上りました。山は寒いぐらいに涼しいでした。どこからか鳥の鳴く声がきこえます。

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一行は中3の兄、中2と小5の姉、小3の私、4歳の弟。
「看護婦さん」に今の看護師を想像しては困る。見習い看護婦で、中卒・住み込みの16,17才からはたち前後の娘で、母は何かというと彼女らに、息抜きの外出ついでに子どもの監督をさせていた。映画やサーカスにも行ったと思う。連れられて、遠くの小学校の運動会を見に行ったこともある。

磯公園には借景のほか、島津氏の別邸である書院造り、大灯篭、曲水、薩英戦争の遺物である大砲と砲弾など見る所がいろいろある。だが私の作文では、もっぱら芝生と山に興味が集中していて、その上、字数の関係だろうか、尻切れトンボの終わり方だ。「お座敷ぐらいの広さの芝生」とは、そのころ芝生というものが非常に珍しかったのだろう。

使ってある漢字はさすがに一年生のときより増えて
  遊、園、物、道、声、寒、鳥、鳴なども出てくる。しかし「いそこう園」「日よう日」「しばふのよこ」「みんなさんせい」「かんごふさん」など、気がせいているのか、手持ちの知識をぶちまけ、とにかくどんどん書こうという、今の私と同じ姿勢が見られる。

「寒いぐらいに涼しい」の表現に先生の三重丸がついている。

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2011-12-3 記
茂木健一郎「偉人たちの脳」毎日新聞社2009(初出は2008年2月下旬ー12月サンデー毎日)をきのう読んでいたら
「篤姫の裏山」と題して、磯公園には、邸の横を通って上る山があり、この山の霊気が篤姫にも影響したのではというくだりがあった。磯公園の山のことは作文をブログにのせるまですっかり忘れていて、本当にあったのかどうかも自信がなかったが、茂木氏に裏書してもらって安心した。

→【本】天璋院篤姫2008-5-3
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