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LONESOME隼人

2003 幻冬舎(ローンサム・ハヤト)
著者 郷隼人(ごう・はやと)


ここ半月ほど集中的に読んでいるのは獄中記である。
そのきっかけになったのがこの歌文集。書架の間をぶらついていて何気なく手に取ったのは珍しい背表紙のデザインー淡い灰色の「LONESOME」の上の黒く太い「隼人」という2字にひかれたからかも知れない。俳優かタレントのような名前だし、その種の本かと思って手に取ると、中身は全然ちがった。
  

一瞬に人を殺(あや)めし罪の手とうた詠むペンを持つ手は同じ

老い母が独力で書きし封筒の歪んだ英字に感極まりぬ

「生きとればいつかは逢える」とわが出所信ずる母が不憫でならぬ

真夜(まよ)独り歌詠む時間(とき)に人間(ひと)としての尊厳戻る独房

人は皆ヌード写真を貼り競えり我が独房は桜島山

蠱惑する女体の如き雛罌粟(ひなげし)の蕾に見とるる刑庭の午後

独活三葉山葵筍紫蘇茗荷(うど・みつば・わさび・たけのこ・しそ・みょうが)
想いつつ食む獄舎スパゲティ


作者は米国西海岸で服役中の男性。終身刑で罪名は殺人と殺人未遂。
本名・年齢は不明だが歌から察すると現在60代~70代だろう。
鹿児島出身、イチローに似た顔立だという。
同胞が一人もいない中、日本食は勿論のこと日本語の音に接することができない。
日本語を忘れないために初めは俳句と川柳、その後短歌に転じたという。
羅府新報への投稿にはじまり朝日歌壇へ。島田修二氏の解説付きだ。
父母の死にも逢えず、2004年には島田氏の死。
詩歌欄でしか消息が分からない読者はしばらく名前が見えないと心配するという。

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