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網走獄中記

1970 日本青年出版社
著者 村上国治(1923-94)

白鳥事件と村上国治と言えば私の青年時代、ビラや新聞でよく目にした名前である。

1952年1月札幌市で白鳥一夫警部が射殺されたが、共産党の仕業だとして、党委員の村上国治が首謀者とされ、20年の刑が確定し、29歳から47歳まで18年間獄中で送ることになった。彼は一貫して否認。板張の留置場で高木検事が抱きつき「助けてくれ!たのむ!」と涙を流し頬ずりしたというくだりには首をひねった。(国治はこれを「ハレンチ」と称している)

獄中での彼の態度は前向きで積極的だ。たとえば刑務所長の年頭あいさつの反動的な内容に素早く反応し抗議文を出す。同囚の為に規則緩和、環境改善、スポーツなどで健康増進を常に考えている。母の葬式で、疲労と感動のあまりちゃんとした挨拶ができなかったとしきりと悔やんでいることは人間味を感じさせ、時々まじる菊づくりの記述はほっと一息つく。

年賀状が7000枚以上来たとか、面会の為吹雪の中を鉢巻をした支援者が全国から集まったとか、あの時代の熱気を感じる。当局は最後まであの手この手でいやがらせしていたが……。

仮釈放されたが再審ならず、71歳で火災で死去した。

本は共産主義者としての高い意識と強い信念がみなぎっていて、読んで清々しい。
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