goo

モディリアーニと妻ジャンヌの物語展

                    
5月の東京を皮切りに、札幌、大阪と来て、松江、山口と各地を旅するモディリアーニ展。宍道湖に面した県立美術館で9月29日~11月5日開催され、私は最終日の夕方に危うく見ることが出来た。

40年くらい前に京都で見た時は妻ジャンヌを描いたという「横たわる裸婦」に魅せられ、しばらくこの絵にとり付かれたようになった。(この作品は、今大阪市立美術館にある)映画「モンパルナスの灯」1958では、ジェラール・フィリップの演じる主人公の破滅的な暗さにはうんざりした。などで、この画家については伝説が頭に染み付いていたが、それをくつがえすような内容で得たものは大きいと感じる。

アメデオ・モディリアーニ(1884~1920)
ジャンヌ・エビュテルヌ(1898~1920)

かれの死後2日で自殺した妻ジャンヌは、遺族の保存した絵画資料に拠れば、単なるモデル&恋人ではなく、ちゃんとした才能のある画家だった。また、二人は「ロメオとジュリエット」のようではなく、女性側の親にも祝福されていた。それにかれは病気ではあったが、貧困と無名の内に死んだのではなく、晩年は有名になり、金銭的余裕もできた。

二人は14歳の年齢差があったが、イタリア人の彼に対し、パリ出身の彼女はしっかりとした自己主張のできる女性で、同じモデルを描いていても明らかに違う視点で描いている。かれは独自の世界をつくり、彼女はより客観的な世界にいる。
例えば、あるポーランド人男性など、モディリアニは女性的に描いていて、ハッと惹き付ける魅力的な絵だが、ジャンヌの絵はありきたりに描かれている。スーチンの肖像は、モディリアニと比べてジャンヌの描いたのは粗野で下品だ。対象への愛情の有無を示しているかも知れない。眠っているモディリアニを描いたのがいくつもあった。(ふつう、眠る女性を見つめる男性、とはよく聞くが、その逆は珍しい。)
22才で実家のアパートから飛び降りた時、彼女は妊娠中だったというが、母親として生きるよりは、彼の後を追うことを選んだのだ。その情熱的な愛の激しさゆえだろうが、母子福祉制度が当時のフランスにもあったらどうだったろうか?

後追いする女性といえば、伝記作家リットン・ストレイチー(1880~1932)と画家ドーラ・キャリントン(1893~1932)を思い出す。彼はゲイだったが、二人の間には紛れもなく深い愛が存在したようだ。
 →中公新書「ブルームズベリー・グループ」(1989)映画「キャリントン」(1995)/新潮文庫「キャリントン」(1996)

※画像は2010年8月5日追加

→映画「モンパルナスの灯」9-11-28
→映画「モディリアーニ 真実の愛」10-7-1
             
コメント ( 7 ) | Trackback ( 0 )
« 「かないませ... 【他】カテゴリー »
 
コメント
 
 
 
Unknown (J.T.)
2007-11-06 12:32:00
モディリアーニと言うと、アンディ・ガルシアが、自分が主役で映画を作ってますよね。確か、「モディリアーニ真実の愛」だったかなぁ。彼の後を追った彼女ですが、モディリアーニ亡き後の落胆ぶりはホントひどかったようでした。

私も彼の絵は好きです!

ああいったディフォルメの方法をどうして思いついたのか分かりませんが、なぜか惹かれます。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2007-11-06 14:58:24
こんにちわ。アンディ・ガルシアの映画も、見てみたいです。あのデフォルメですが、S字カーブはジャンヌの16歳の写真に、そういう姿勢でいるのがありました。でも彼女はけして卵型の顔ではないのですが。多分、あれは対象ではなく画家の魂の形なのでしょうね。チラッと読んだところでは、どことかの昔の絵画にもあるようです。
 
 
 
Unknown (margot2005)
2007-11-06 22:50:04
こんばんは!
モディリアーニ展行きたかったのですが、行けなかったです。
ジェラール演じるモディはそういや暗かったです。常に大暗の顔がアップでしたわね?
恋人役のアヌーク・エーメが素敵でしたが...
しかしジェラール演じる「モンパルナスの灯」は彼の代表作のようですね?
アンディ・ガルシア版も見てますが、ジェラール版のように暗くなかったと記憶しております。
それってジェラールとガルシアのキャラのせいかな?と感じます。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2007-11-07 23:38:05
こんばんわ!アンディ・ガルシアって、刑事役なんかもやっているんですね。暗い感じはありませんね。東京では渋谷のBunkamuraが会場だったそうで、あそこは私には、苦手な場所でしたわ。その日は午後に電話で今日で終るという知らせが入って、タクシーで駆けつけたんですよ。1000円とちょっとでしたけど。ジャンヌの復権と言うのですか、女性の能力が再発掘された意味は大きいし、そうそう、先日はフランス大使夫妻も来場して、熱心に見ておられたようです。
 
 
 
映画は「映画」なところと・・いうことで(笑) (viva jiji)
2007-12-05 15:48:19
TBはやはりエラー表示なようなのでHNのURL貼付で
ガルシア版、持参いたしました。

58年ジャック・ベッケルの「モンパルナスの灯」は
鋭角的なストーリーテリングのベッケルらしくまるで
情け容赦のない売れない画家の描写・・・
リノ・ヴァンチェラの抜け目ない画商など、印象に残ります。
ラストはほんとにBiancaさんのおっしゃる通り、何せ、暗い、暗い。(笑)
でも日本人はあの辛さ、暗さがいいのでしょうね。
フィリップの顔は同情を呼ぶ顔ですし。
私は夏に名画座で再見しましたが、もうお腹いっぱい。^^

ガルシア主演のものは視点を若干変えたモディリアニ観。
実際の彼の面差しはいささか頑健そうな顎を持っていて、私はJ・フィリップより
ガルシアに近いかな・・・とも。

>母子福祉制度が・・・

Biancaさんの観点って興味深いですわ~♪
 
 
 
Unknown (Bianca)
2007-12-06 07:57:12
ああ、ジャック・ベッケルだったんですね。
この人の特集で「穴」を、92年に六本木で見ています。脱獄の話、あれはすばらしかった。でもまさかモディリアニの伝記を撮っているとは。当時のパンフを今見たら、どうも、別の監督が急死したので、脚本を担当したベッケルがあとを継いだという事情があったようです。でも、ゴダールも高く評価した映画らしい。一概に、ジェラール・フィリップものだからと偏見を持ってみるのはいけませんね。でも、ああいうダメ人間に引かれる女性がいるのが困りもの。
 
 
 
デフォルメの由来 (Bianca)
2008-07-14 10:28:42
JTさんへ

貴方が疑問を抱かれたあのデフォルメは、アフリカの仮面や彫刻に由来するもののようですね。
詳しくはyagi070さんのブログegoisteの「モディリアーニ展」をご覧下さい。
 
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。