映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
小林旭

5月22日(日)
昨夜BS11で小林旭ショーを見た。彼について語るのは、なぜか恥かしく、ためらわれるが、その魅力は否定できない。願わくは服装や仕草や表情は忘れて、歌にのみ注目してほしい。悪声であるが、強烈な自己肯定の勢いがあって、何よりそれに圧倒される。「平凡」の表紙を美空ひばりと共にかざり、「渡り鳥シリーズ」や「ダンチョネ」「ズンドコ節」で大衆を熱狂させた。昭和の体臭をむんむんさせる彼は、1938年11月生まれ、70代に入るのに、声量も音程も確かでいまも歌い続けている。手足と身体を動かしながら。その様にはしっぽで周囲をなぎ倒す恐竜を連想させるものがあるけれど。
私と彼とのつきあいは「さすらい」から始まる。昭和三十年代前半、まだわが家にTVはなくてラジオで聞いたのである。当時、日活の人気を二分していたのは石原裕次郎=タフガイと小林旭=マイトガイ。芸術志向の友人は、都会的なものが好きで「さすらい」の歌詞を「フン!」と一蹴していた。彼女は「倍にして返すぜ、フックだボディーだボディーだチンだ」と裕次郎の「嵐を呼ぶ男」の主題歌を諳んじて私をあ然とさせた。
小林旭は、人生で一番かぐわしさがあるはずのニューフェイス写真を見ても、左右の均衡がとれず、いかにも大部屋育ちの部類である。洗練とか粋とは無縁で、カウボーイハットが似合っている。それゆえ中央から疎外された民衆に親しまれるのでは。彼が映画の撮影で鹿児島に来た時、駅に2万人のファンが押し寄せて、急遽、熊本から車に乗り換えたそうだ。鹿児島育ちの私としては、彼のレインコート姿とか横顔とかを見ると、ハハー、これが「カッコいい男」として彼らの脳裏に定着したのかと、周囲の男性たちが思い出され、どうしようもなく顔がほころびてくる。
米画「ストリート・オヴ・ファイア」は「渡り鳥シリーズ」に着想したものと4月22日の山陰中央新報紙上で杉谷氏は語り、「北帰行」の作詞者が小林旭の歌唱を最も気に入っていたと「二木紘三氏のうた物語」にあるように、その魅力ははかり知れないものがある。
しかし、両親の不和を目撃した不幸な生い立ちを自身の語るのを聞いたこともあり、ひばりとの離婚も乗り越えてハングリーに生き続けて今日に至った、その強靭な生命力に感嘆する。
追記:6月3日
小林旭の容貌を、左右不均衡だの大部屋育ちだのと言ったが、これはあくまで私の主観・好みによるもので、美空ひばりとの結婚のとき「美男美女の結婚」とも言われたことは、付け加えておきたい。
コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )
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みのる君が映画館に通い詰めていた時分、日活だけは「タダ」で入れなかったため、勢い日活の無国籍映画には縁遠くなってしまいました。また、日活映画独特の早口な台詞や裕次郎の「フックだボディーだ」といった現実離れも苦手でした。
昨晩、この番組のごく一部を拝見しました。小林旭ご健在に驚きつつ、新曲発表に感心しつつ、昭和時代を振り返りました。
コメント有難うございます。ア、きのうのTVご覧になりましたか。昭和を懐かしむ唄「あの人、この人、皆どうしているんだろう」と言う歌詞も泣かせますよね。「真田風雲録」にそういうのがあったでしょう。>BIANCAさんが小林旭のファンだっとは意外でした。なんて、からかわないで下さい。私にとっても意外です。だっていつも言っている男の好みと全然違うし。苦手な中村獅堂と似ているでしょう?とにかく15歳のとき「さすらい」が好きになったので、仕方がありません。
独特の色気もあるし、歌も嫌いではない。けれど、やっぱりかかわりたくないタイプやわ。旭と裕次郎どちらかを選べといわれたら、裕次郎を選びます。
あなたは都会派だから、きっと裕次郎の方がお好きでしょう。「かかわりたくないタイプやわ」には笑いました。映画をご覧になったかな、つかこうへい「蒲田行進曲」の「銀ちゃん」は、小林旭がモデルだそうです。その人物像はかなりどぎつくて、一般日本人の感覚にはないものですね。でも何だか笑えるのです。
おや、ご覧でした?あの戯曲の眼目は、結局、風間杜夫の銀ちゃんへの平田満の片思い、献身だったのかな?なぜ銀ちゃんがそれほど威信を持つのか、私はよく分りませんが、みんなはわかるのかな?松阪慶子の妊娠した女性の逞しさはかなりリアルだと思います。