誠さんは60歳代、男性。筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹患されている。現状は車椅子での自走移動は可能。ハンティング帽をたくさんコレクションされていて、いつもお洒落な格好をされている。自己にて車椅子を使用し、近くの映画館やスーパーに行かれたりする。ただし、家事や入浴には人的サービスが必要。
長年、金融関係のお仕事をされていて、海外赴任の経験もあり、明るく話題も豊富な人だ。海外の写真をよく見せて下さる。写真の中の誠さんは大柄で恰幅が良く、その頃から比較すると、今は病状が進行していることがよくわかる。
写真の中には、綺麗なアジアの女の人が多く写っていた。私が冗談混じりに「この人、彼女だったの?」と問いかけると、「違う、違う、」と笑っていたが、どうなんだろう。
誠さんは他府県から来られている。自分で選んでそうした、と話してくれた。何でも、奥さんが介護職をされているそうで、自分が側にいると、かえって奥さんに気を遣わせるから、そうしたんだと言われた。奥さんの負担になるのが、嫌なようだった。
家事援助の途中、私が話した他愛もない話題を、どこかに記録しているのかと思うほど、よく覚えておられたりする。次に伺った時、前回、話題にしたことを、もう一度、問い直してきたりする。元々、とても頭のいい人なんだと思う。
そんな誠さんは、入浴介助の時、裸足になった私の足のペディキュアにすぐ気がついた。それから「あっ、なんか、色っぽいな…」と呟かれた。
私は、ちょっと驚いたけど、何となく、やっぱり写真の中の綺麗な女性は、誠さんの彼女だったのかな…と思った。