「乙女(ブリトマート)は愛くるしい美しさに満ちているうえに、男らしい威厳をかね備えていて、その美しさが男たちの卑しい思いをかきたてれば、その威厳がはやる欲望を払いのけ、過ちを犯そうとする者を寄せつけず、それは丁度、真赤なばらを見つけても、いばらの鋭い刺とにさえぎられてむやみに手を伸ばすわけにいかず、遠く離れて思ううち、あだな思いも消え失せるよう。」
「この人がこのように美しい人であるのを見ると、男装とは露知らず、紅顔の若武者だと思い込み、女王はすっかり恋の虜になってしまい、徒な思いにたぶらかされて心を痛め、女王の浮気心には、細い麻に落ちて、めらめらと燃え上がる火花のような恋の炎の火がついて、たちまち激しい情火となって燃えさかり、すべての血管に情熱を行き渡らせたのである。」
(エドマンド・スペンサー『妖精の女王』第3巻「ブリトマートの貞節の物語」より抜粋)
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