人村です!

舞台と結婚したと公言する「人村朱美」が綴る舞台生活 毎週火曜日更新・・・したいなぁ

源氏舞日記3

2008年12月10日 | 東京
 上京5日目、明日は本番である。
 一日中ユーホーさんちで自主稽古の後、桜木町のホテルへチェックイン。すぐに井土ヶ谷の甥の家へ。
 今年のお盆に、待望の次世代の命が、我が広瀬家に生まれたので、そのお祝いに行ったのだ。

 長い間待ち望んだその子は、玉のような男の子。ひいき目かとも思うが、送ってもらった写真は、明らかに我が広瀬家の顔立ち。が、生後4ヶ月近く経って、ママにも似てきていた。
 私が抱くとすぐに泣き出す。子供は苦手だという思いが伝わるのだろう。
 この無垢な命が、健やかに愛情深くて育ってくれますように。

 初日―「夢(蜻蛉・手習・夢浮橋)」。
 ロス(米)から前日帰国したばかりの松木氏が描く素晴らしいCG(コンピューターで創った絵)が、能楽堂の壁二面を同時に染める。彼は二日前ロスから、カーテンコール用のCGを作る為の電話をユーホーさんに入れている。とにかくプロフェッショナルな入れ込み様なのだ。

 彼と名コンビの、音響・谷崎氏の絶妙な音が場を彩り、観客を夢の世界に誘う。そして私たち出演者(波紋音・笛・琵琶・語り)が能舞台に揃い出て、8年間の集大成第一部「夢」が始まった。

 説明するのはよそう。現場に居た者にしかライヴの面白さは伝わらない。まして、私の稚拙な筆では著(あらわ)し様もない。

 無論いつものように評価は様々。殊に、古典中心の実験劇場である『源氏舞』には賛否両論ある。
 今回も、全体をみる演出家を置かない事に批判は集中した。が、それこそが主催者ユーホー氏等創始メンバーの心意気なのだ。

 たとえ見世物として未完成な舞台になろうと、夫々が主張し合い、ぶつかり合う事を避けずに創る。そうする事でジャンルを超えた発見をし、強く触発されたい。この魅力があるからこそ、ギャラを度外視して皆がやり続けてきたのだろう。
 演出が入れば、どうしても一人の感性に集約せざるを得ない。それが演出の使命でもあり、削ぎ落とされた統一感と高い完成度を目指すには、演出の存在は欠く事の出来ない要素だ。

 しかし、批判は受けつつも、今回の評判は悪くない。内側にいる私にも、8年の進化を感じさせてくれた『源氏舞』だった。

 二日目・大千秋楽「幻(夕顔・葵・野宮)」
 初日に比べて圧倒的に言葉が少ない台本を創った。象徴的な舞台は、あくまで理解より印象を狙ったものなので、全体を通して、女の悲しみ・情念・苛立ち・怖れ・そして深い悔恨を感じて頂けたなら幸いだ。

 会場は、心配したにもかかわらず二日とも満杯。個人的には嬉しい評価が多く、といっても悪い評価は本人の耳にはなかなか届かないが、来春の仕事のオファー(申し込み)も来て、あくる日意気揚々と帰敦した。

 帰宅したあくる日は、町内のゴミ当番の日。1週間私と交代して下さったお向かいのお母さんに感謝!
 過去二度当番を忘れて玄関を叩かれた経験がある私は、目覚ましを遠くに置き、緊張して眠りについた。

 朝起きて庭を見てみると、桜の葉が散った後きれいに紅葉していたモミジが、サッパリ裸になっていた。イチジクも同様である。時間が突然進んだ気がする。

 ノラ猫たちが玄関に飛びついて餌をねだる日常が、早くも戻った。そういえばバネ指も手術跡が瘡蓋(かさぶた)になって、ほとんど治っている。時間は偉大だ。

 今日は少し休んで、明日からは12日の気比中『シゲル』公演の準備に集中しよう、などと思いつつ鏡を見て愕然。白髪が一気に増えているではないか!

 時間は待った無し・・・残酷でもある。

               12月9日(火) 了。

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