東京生活その二

　稽古11日目が過ぎた。あくまでも照明スタッフの為の夏期特別講習公演なので、
一番大事なのは生徒さん達だ。だが1シーンを何度も何度も繰り返す「返し稽古」が
無いのは堪える。あっても二回。これでは次のシーンに進んだ途端アップアップに
なり、すぐに忘れる。この繰り返しなのだ。しかし分かっていて引き受けた仕事だ。
出来ない時の講師のイライラは役者への信頼の印と分かっているから耐えている。

　それにしても思い出すのは野田秀樹氏の演出。常に「良いものを創りたい」しかない。
そこには他の何物も存在しない。役者もスタッフも一心同体と化すあの熱気溢れる稽古場。
皆が野田氏に心酔し、彼を父、兄、同志と慕う。

　あの熱気を忘れまい。


娘役のＭ嬢から頂いた白ゴーヤで一杯。