人村です!

舞台と結婚したと公言する「人村朱美」が綴る舞台生活 毎週火曜日更新・・・したいなぁ

「もう一つのシルクロード」

2008年10月08日 | 舞台
 あくる日の午後、昭和女子大で『東風―もう一つのシルクロード』という、日韓共作の、古典楽器による生演奏にのせた、舞・歌・芝居のコラボ(共演)を観た。

 華麗な舞台衣装は全て、Mr.時広のデザイン。
 終演後の苦労話で、韓国ダンサーたちが「腕のラインが見せられない」と、豊かな袂(たもと)付の衣装にクレームをつけたエピソードを聞いたが、結果は素晴らしいものだった。

 武術や太極拳を思わせる動きを取り入れた、歯切れよく力強い舞。その動きから生まれる微(かす)かな風も逃さず孕(はら)んで、時広氏のカラフルな衣装が舞台を舞う、舞う・・・。
 形、質、色、どれ一つとっても彼の衣装は、演者を信頼し、台本を読み尽くした上で生まれた、プロの作品だ。

 木村氏による楽曲も素晴らしくて、本当に美しく豪華な舞台だったが、オペラ歌手と現代俳優だけはミスマッチ。力があるとしても、古典色で統一された中では浮かざるを得まい。損な役回りだったとしか言いようがない。

 地へ向かうアジア農耕民族と、天へ向かうヨーロッパ狩猟民族の文化には、文字通り「天と地」の差があることを、舞台は浮き彫りにしていた。
 西洋文化のオペラ唱法や、現代劇俳優を配するのなら、シルクロードの西の果てをハッキリ意識した台本が必要だったのでは・・・決して演者のせいではない。
 他が突出して良かっただけに、惜しい舞台だった。

 目の前に展開される豪奢なものを、素直に鑑賞して楽しむこの舞台は、野田秀樹氏の、一見簡素ながら観客の想像力をどこまでも飛翔させる演劇舞台とは対照的だった。創作舞台へのアプローチ(接近方法)には様々ある。
 ・・・いい勉強になった。

 その日の朝、弟のような存在の俳優に何年振りかで会った。某有名劇団創立メンバーの大ちゃんは、昔も今も変わらぬのんびり人間で、三日目にして東京に疲れ果てていた私を和ませてくれた。

 お互いに年取ったね、とは言わずもがな・・・渋谷の、繁華な場所を避けて見つけた和風レストランで、ゆったりした会話と昼食を楽しみ、私の一人芝居の企画書と宣伝用DVDを託し、また会う日を約さず別れた。

 敦賀に帰ってみると、空気がやはり違う。夜の寒さも一段と増したようだ。今年の夏はえらく短かったなと思う。
 こんなに短いと感じた一年もない。

 祇園ライヴも、観客数が目標の50名を超え、ホッとしている。久々に原作「ぼくの人生―シゲルの場合」を読み返して、力が湧いてきた。

 野田秀樹氏に、チケットを取って頂いたお礼のメールを簡単な感想付きで打ったら、嬉しいお返事が届いた!

 やっぱり抱きしめれば良かったなあ、あの時・・・ウフッ。
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