《落日菴執事の記》 会津八一の学芸の世界へ

和歌・書・東洋美術史研究と多方面に活躍した学藝人・ 会津八一(1881-1956)に関する情報等を発信。

大馬鹿と正直と

2020年08月31日 | 日記



昭和21年6月、会津八一は上のような証明書を、知人の丹呉浩治に対して『発行』している。

中條町の表具師丹呉氏にたいし、『右の者、大馬鹿者なれども、正直無比の者なり。これを憎む者は大悪人なり。

宛先は『社会民衆』とある。

本当に自分にも他人にも正直に生きる者は、社会的に成功できず、世間から『大馬鹿』扱いされるのが世の常だ。人を出し抜き、人を欺く者が、社会的・経済的に成功を勝ち得て、結果頭がいいとほめられるのだから。

しかし、八一はそんな『大馬鹿』な『正直』者を深く愛した。

こんな爽快で、痛快な証明書がほかにあるだろうか⁉️

だから会津八一は面白い。

山光集初版

2020年08月11日 | 日記
會津八一の歌集『山光集』の初版を読んでいる。昭和19年の初版である。メルカリで手に入れた。(しかしメルカリは、このような貴重な本が手に入る一方、八一の贋作を、真筆と称して出品している御仁もおり、玉石混交ぶりが甚だしいアプリだ。)

後記の文章に、時局を反映した字句があり、戦後の版では削除された箇所がある。
マーカーのあたりがそうだろう。

それにしても76年前の本とは思えぬ保存状態の良さに驚く。










天女の衣の隙間から

2020年08月01日 | 日記



八一の自詠自書

すゐえんのあまつをとめがころもてのひまにもすめるあきのそらかな

奈良西ノ京は薬師寺の東塔を詠む。塔の上の九輪の更に上にある水煙には、天女が衣を翻しながら歌舞音曲をしている、その衣の隙間からも澄んだ秋空が見えるの意味。

この歌ほど私を奈良に誘うものはない。