鎌倉文学館の展示『作家のコレクション』を観た。映画監督・小津安二郎旧蔵の会津八一の軸が展示されていると聞き、興味を持った。
かつて当ブログで、小津安二郎の作品『秋刀魚な味』に八一の書が出てくることを書いたが、まさにその作品を見ることができた。これは僥倖だ。
八一の書は、歌集『鹿鳴集』の「印象」の一首であった。印象は中国古代の詩を八一が和歌に翻案したもの。
耿湋作
返照入閭巷 憂来誰共語
古道少人行 秋風動禾黍
八一歌
いりひさすきびのうらはをひるがへしかぜこそわたれゆくひともなし
この軸を小津安二郎がどのようにして手に入れたかは不明であるが、見事な筆で、八一の書の中でも、最高傑作の一つと思われた。
会場には小津安二郎とお母様が二人で写っている写真があったが、その背後の床の間にもこの軸がかけられており、小津のお気に入りだったことがわかる。
わざわざ鎌倉まで行った甲斐があった。
その後、作家でロシア語通訳として活躍された米原万里さん(1950-2006)の墓を訪ねた。
竹林の中にあるいかにも鎌倉らしい墓だった。
米原万里さんの作品は何を読んでも時が経つのを忘れるほどおもしろい。