とこのへや

とこの雑貨と、とこのお洒落着。とこは樺太に住んでいたことがあります。とこの嫁の体験談、日記、備忘など。

紙と情報と印刷

2019-09-03 23:05:48 | 管理用
紙はなくならない、という言葉がある。

印刷業界においては、この数十年、デスクトップパブリッシング(DTP)、つまり机の上で印刷できちゃうことや、「デジタル化」という一言に集約される各印刷工程の変革は、すべてを塗り替えるがごとく、大きく業界を揺さぶったと思われる。だってデジタルはコピーが簡単だから。
パソコンが普及したころは、もう自分で清書(印刷)できちゃうから、印刷という商売は薄利になってもうダメじゃん?という向きがあった。
だが、デジタルサイネージもよく駅の構内などでパカパカと映像が差し変わったり動画を流したりして私たちの目を引くけれども、それでもまだ紙はなくなってはいない。

ところで、印刷会社で出会った夫とは、印刷物のことは私たちにとって共通の話題である。

先日夫が持ち帰った資料は、相続関係の内容を扱ったものだが、豪勢な作りの印刷物だった。それは、とあるメガバンクが発行している販促用のパンフレットだった。

副題に「~家族への想いを未来へ~」なんて書いてある。こりゃあ、ライターがついていても不思議じゃないなぁ。
その上のタイトルはこじゃれた欧文書体でなにやら素敵な言葉をわざわさ箔押し(文字を象って金箔を貼り付ける加工)してある。
どうやら相続についての内容だ。夫は税関系の資料としてちょうどよいと思ったらしい。中身は全面、デザイナーが相当な時間をかけたと思われる内容。図版が多い、メリハリの効いた文字ポイント、あまり使わなれないフォント、色の組み合わせ、もちろんへんなアキはまったくなし。A4サイズ、表紙はPP貼りの加工あり、全40ページ、中綴じ(A3の大きさで両面刷りにして真ん中を綴じる)。
※中綴じは週刊誌みたいなイメージ。

元データを作るだけで相当な時間と労力、専門家の校閲もかけているだろうから優に100万を超えるのではなかろうか。そして部数がいくつか知らないが印刷工程でも相当のお金がかかっている。
内容に合わせ、想定した効果を得るために高級感を出すようなデザインと仕様を目指したらしい。表紙の模様が手帳のカバーのような皮革の模様になっている。ただ、残念ながら、この用紙の厚さで40ページなら、中綴じではなく網代綴じか無線綴じのほうが断然いい感じになるページ数が少ないので断念したのかもしれない。
※無線とじはカタログなど分厚い冊子のイメージ。本のタイトルが印字できる背幅(せはば)という数ミリ程度の厚みがある。

印刷の技術はそれなりにレイヤーがあり、新聞の折り込みチラシといい、ティッシュの中に入れられているフライヤーといい、確かに特殊な印刷はまだまだ需要がある。でも普通の印刷物は、中身で差をつけるしかない。面白いとか、役に立つとか、これは取り置きしたい、そういった内容でなければ。

そう意識したのか、相続についてさまざまな想定をしたうえで、コンテンツとしてはよくよくまとまっていて、見やすく整理されている。
相続って、普段は特に必要ないけれども、ひとたびそういうことがあれば、調べたくなることの一つではあるだろう。ただ、実際に読んでみるとケッコウ、ムカつく内容なのである。もし、私が70を超えたくらいで、自らすすんで手に取るのでなく、ほかの人にこれ読んでみたら、なんて手渡されたら「わしゃまだ死なん!」と言いたくなるかも。
2015年に税制改正されてしばらくたつけど、昔のままのイメージでは、慌てることになるのもちょっと癪だ。
一方で「デジタルデバイド」という言葉も、通信制の大学でよく言われていた。ちょっとググればいろいろ詳細が知れるのに、パソコンなんて持ってない、スマホは持たない、という人にとっては、インターネットは遠い。

紙は、なくせないのだ。

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