個人的には、ゴーン氏がどうなろうと知ったことではない。
ゴーン氏の、というか、そういう人の耳目を集めるようなご仁が
「当然に」自分の好きなようにして来たことが、
法に反する場合に、かつてはヒーロー扱いであった人を社会がどう引きずりおろすのか
そういう意味で興味深い。
有価証券報告書は、「有価証券」をある条件で発行し、資金調達を行っていれば
年に一度、提出しなくてはならない書類。中間期に半期報告書も提出する。
上場していれば半期報告書の代わりに3か月に一度、四半期報告書の提出も必須。
その有価証券報告書には、
どんなことが書いてあるのか。
最初に主要な経営指標等が、連結決算に基づいて5期分、
個別決算に基づいて5期分。
その会社の沿革、そして事業の内容含め現在の状況、リスク、対処すべき課題、経営者による分析。設備投資の状況、財務諸表とその注記。どれも直近のその企業の姿と未来のヒントであり、投資家が読むべき内容だ。
そんな有価証券報告書、実際の記載では様式にのっとって事務方が記載するだけだから、面白いストーリーやエピソードが書いてあるわけじゃない。
しかし、ゴーン氏のことは、どのように書いてあったのか。
記載がありそうなところは大株主の状況、役員の状況、役員報酬の箇所だ。
たまたま、直近で華々しく他の自動車メーカーと連携して立ち上げた会社の取締役になってるという記載は冒頭にあった。
通常同族経営の会社では1位が現社長ってのはままある大株主の状況では、日産は同族経営じゃないし、国内連結子会社だけで70以上もあるし、従業員だって13万人を超えてるし、もう組織が大きすぎて、上位10位まで記載する大株主の欄には「ルノー エスエイ」ぐらいしか、明確な所有者はない。ほかは信託口ばっかり。
役員の状況では、3月の臨時株主総会で代表取締役・会長を解任されたが、直近の有価証券報告書2018年6月の提出時点での記載には、もちろん、一番最初にゴーン氏の名が記されている。
経歴とともに記される日産自動車の所有株式数は3,139千株、つまり313万9千株。ニュースでも言われていたように記憶しているが、半年に1度の配当だけで8450万円は受け取るのだ。
年間配当で1億6千万もらえるなら、辞めても株を持っていれば…というわけにもいかないのだろうけれど。
ちなみに西川(さいかわ)さんは取締役社長だけれども4万8千株所有、配当は年で254万4千円になる。
そして、役員報酬の箇所は、ごく最近、5月の14日に訂正報告書が一気に提出され、該当箇所を修正している。
一番古い平成26年(2014年)提出の有価証券報告書の、総報酬「995百万円」を「2313百万円」へと訂正し以下の注記を付している。③がニュースで取り上げられていた、ごまかしていた金額。①と②だけで10億超えるのでそこだけでもごまかしていた、と言えるけどね。
1 当該金額は、次の金額の合算値である。
① 当社から対象取締役に支払われた958百万円。
② 当社の連結子会社であるニッサンインターナショナルホールディングスビーブイ経由で対象取締役に支払われた67百万円。
③ 対象取締役に対する支払いが繰り延べられて、支払われていない921百万円。
役員報酬決定についても、「取締役会議長が(中略)代表取締役と協議の上、決定する」としていたのを、
「取締役社長が(中略)代表取締役と協議の上、決定する」に訂正している。
訂正報告書は大抵、「あれをこう直しました」といった味気ないものだ。
が、ここまで注目されたためか、日産の文化なのか、有価証券報告書の訂正の様式のひとつ【有価証券報告書の訂正報告書の提出理由】の1に「経緯」をまとめ、「グローバルリスク&コンプライアンス室」なる部署が調査をし、社内評価委員会の検討を経て訂正内容を承認した旨が書かれている。
「報酬」の定義を説明し、開示方針を明示しているが、冗長だ。
やや興味を引くのが、私的用途でのいろいろな会社の不動産・動産の使用や経費の私的流用を報酬としては含めない点を記した部分。 以下、引用分。
(2) 各種類の報酬等に共通する事項:「役員」の「報酬等」の該当性に関するあてはめ
① ゴーン氏については、過年度において、①当社の非連結子会社を使った、リオデジャネイロ及びベイルートでの同氏の住宅の購入・改装、②当社から同氏の姉に対する長期にわたる顧問料名目での金銭の支払い、③当社のコーポレートジェット及びチャータージェットの自己及び家族の私的用途での使用等、会社資産及び経費の私的流用が判明している。これらは、役員としての職務執行の対価に当たらないと解されるため、対応する事業年度の有価証券報告書における「役員の報酬等」欄記載の同氏の報酬等の額に含めていない。
返してはもらうんでしょうよ、ね?
それと、有価証券報告書は公衆縦覧期間5年なのでそれ以前のものは通常見られないが、
https://www.nissan-global.com/JP/IR/LIBRARY/FR/において開示している旨記載がある。
過去期においても同じ経緯の記載と報酬の定義と報酬記載の方針を載せ、その年度の報酬額を訂正している内容だ。財務諸表に影響なく、うまく処理できた、といったところと思う。
財務諸表を訂正するとなると、すごい時間がかかるし、監査も大変だ、というのは想像がつく。
今後、ゴーン氏が裁判を終えたのちに、手記でも発表するかしらん、と私はちょっと期待している。
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