とこのへや

とこの雑貨と、とこのお洒落着。とこは樺太に住んでいたことがあります。とこの嫁の体験談、日記、備忘など。

Gと私と蒸し暑い夜

2023-08-14 02:02:07 | 日記
夏の暑さと切り離せない、G。

「私」とは、18まで東北の小都市で過ごした、とこ嫁のことである。

G。それは悪魔。それは闇夜の恐怖。それは1匹みかけたら30匹は居ると思え、それは脂の塊、油の蟲。

冷夏の小都市では見かけないものなので、中学の時、

美術部の友達が

「…が出てさー、でもテレビとか漫画とかで時々すごいおぞましい、
 怖いっていうけど、全然そんなことなくて、
 動きも鈍いし給食の残りのパンをあげてんの」

というのでわざわざ美術室まで見に行ったのが、
いわば「出会い」。

「カブトムシとどう違うの?」

一緒にその話を聞いていた友達が、そう のたまった。
…いや、今となっては反論できる。やつら、シロアリ系なんだぜ。
莫大な数の卵産みだすんだぜ。

カブトムシは昆虫だがシロアリやGはそうじゃない。
友達はカブトムシの幼虫はそれなりにキモチワルイと言っていたが。
まぁ、シロアリもGも昆虫じゃないかもしれないが、悪魔でもない。
おぞましさで言えば、悪魔を軽く凌駕する。。

その後、Gと出会うことはなく高校卒業し、大学に入学できなかった私=とこ嫁は安直に(?)新聞の広告に載っていた柏市の小さな会社へ就職した。
ググってわかるような時代ではないので「この子、あほなの?」という顔をよくされたものだ。
ともかく、社員寮があるというから、入社したようなものなので、初日に会社へ軽くあいさつした後に、一般的なアパートへ案内された。柏駅からワンブロックも歩けば国道が通っていたが、その国道を超えてすぐの細道に入ればあとは住宅やアパートと駐車場で、夜は人通り少なく、こりゃあ大声をあげてもだれも助けてはくれないなという雰囲気だった。
しかも一階だし、と思ったその夜に、「言い切ればどこでも社員寮」でつまりは「管理人や同僚がいるわけでもない」他人ばかりが住んでいる、アパートで、来たばかりで何も入っていない押し入れにとりあえず置いたバッグとその上のブラックジーンズを手に取って何かが落ちたことに気が付いて「あ」と。

息をのんだ。
「ひぃいいいいいいい」

薄い小判型で黒光りしている虫がブラックジーンズの中に居た!!
え、4月だぜ?
いや関係ないのだ。もう十分な気温なのだ。。
やつ等が、走り回れるくらいには。

新幹線の中で読んだ新聞紙捨てなくてよかった。自分の気分だけの死闘を繰り広げること1時間。
どうやって仕留めたかよく覚えてないが、ひどく興奮して、昼間購入されたばかりの布団に入って寝たかどうかもよくわからないまま朝。

いや、虫けらだから。そう強がって出社したが、帰宅してドアを開けるときに手が震え、スパイさながらドアを開けてくまなく目を走らせて動くものがないのを確かめて歩を進める。。犯人を追い詰めるデカのように。
ていうかデカなら訓練された射撃の腕前とかあるかもだけど、ねえし。

会社にも居た。先輩女性社員がけらけらと笑って「あー、居るなー、ぐらいよ」というし、そういうもんなんだろうと。

そのアパートでの夏の夜は、地獄かと思うくらい。
帰宅したら気配を感じるのだ。カサコソ。
震えるのをこらえ、「ていうか靴はいたままでもいい?」くらいの独り言をいいつつ、暗いままキッチンへ行って、まずお湯を沸かす。
カサコソ、という音ではなく気配を感じつつまだ、まだ、そこにいやがれと祈る、そして沸いたお湯を流しの排水溝あたりへ向かってざーーーっと流す。
そしてやっと電気をつける、とたくさん死んでる、大小さまざまのG。

当然、Gを「湯がいた」状態。なんとなく脂ぎってるのが解消されている感じで、ビニール袋ごしに掴んでごみへ。
お湯で流しは除菌されている感じがするのがせめてもの救い。

これが、体調を崩す一因となったかどうかよくわからないが、1年たたずにいったん実家に戻り、半年ほどなにもせず過ごした。
当然Gと対面することはなかった。

東京で仕事を、と今度こそ真実社宅ありの会社へ就職。社宅は築35年を超える木造アパート。そして話し声が筒抜け。
社宅で周囲はすべて家族でお住まいなので、何かあればお隣さんにお尋ねできる。そして、中学で一緒だった子と同居。
心強いはずだが、7月から入居してすぐ、雨戸を閉めておかなければ「やばい」ようだと気が付く。塀で囲われているが、すぐ乗り越えられるようなものだし、物干しなどある庭へ人が入り込むことはある、との忠告を受ける。

緊張感、高まる。

そして関東の梅雨明けがちょうど、宣言されたころ。
気温だけでなく湿度の高さが辛い。
雨戸、網戸閉めているが、やはりそこには、G。
ショックだったのは、深夜寝ている時に、足の親指をかるく掴まれた、と思ったら、G!!! 叫びも声にならない。夢中で手で払った。

それまで清潔だと思えてた布団は、Gが這ったと思われてハイターで漂白したいくらいだった。

社宅自体は坂の中腹ぐらいにあったのだが、とにかく湿気がすごい。
湿気取りはすぐ「たっぷたぷ」になる。
クッションフロアのキッチンの床はすでに浮き上がっていて、その下の床板は、ひょっとしたら腐ってるのでは?と思われた。

ホウ酸団子がよい、と実感したのはこの社宅でのことだ。
白くて丸いケースをあちこちに置いて、確かに、あまり見かけなくなった。
ここでは流しにお湯を…ということは一度くらいで済んだはず。
Gに足の親指を「つかまれた」のは忘れられない。

社宅ぐらしはこれ以降はなく、
結婚して、数年、夫の実家である一軒家に住むこととなり、Gが稀に出現したとしても、頼りになる夫と、あいかわらず絶叫しながら新聞紙やスプレーで応戦していた。

マンションに引っ越したのは子供が生まれてから。
東京の夏が蒸し暑さから解放されることはない。
仕事から帰る時、買い物に行く時、なぜかとこ嫁だけ、アスファルトの上を走るGに出会うのだ。時に踏みそうなタイミングで、横切って行ったり。
並走されたり。
なぜかは、不明。

今のマンションに越してからは、そんなGとの遭遇がなくなったな、とふと気が付く。まさか絶滅したわけでもあるまい。これも説明がつかない。

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