こんばんは。
本日は病院へ。夫と二人で とこ のお見舞い。
夫は自分の母親を励ましたい。「一緒に戦ってくれ」と言う。とこが気にしている、これまで住んでいたアパートに帰ることについてだ。
とこ は微妙な表情をする。あのアパートに帰りたいけれど、戦う…?という感じ。
ほんの一時間ほどの訪問だ。訪れた時、とこはうつらうつら眠っているようだった。
横になっているので、首が揺れたりはしていないけれど、ベッドを起こそうか?と言っても、「起こさなくていい」とのこと。今日はちょっと ⤵ な感じだ。
さっき入浴から戻ったところなんです、と看護師さん。
とこの声はかすれて、耳を近づけないとよく聞き取れない。
ベッドの足側の方に寄せてあるテーブルの上には、とこの苗字と日付、「朝」と書かれた流動食が未開封で置かれている。
先ほどの看護師さんがいうには「波があって、お元気な時とそうでない時があって」食事の量もそれによって差があるのだそうだ。
とこは「食事、要らないのよねぇ」とつぶやく。要らないけど仕方ないという感じの「音」に聞こえた。
以前の施設では、「要らないのに無理に食べさせようとして」という怒りのニュアンスがあったが、
今回の言い方は穏やかだ。ここが気に入っているのだろう。
そして、「理事長さんが、今度●●に会いたいって言ってた」と夫に言う。
「払ってないんでしょ」、重ねて「ここに居るとすごくお金がかかるのよ」「何千万って」
…病院へ入院しているので、ベッド代はかかっているけど健康保険もきいているので何千万ではないのだけど。
「払ってくれって言われたの?」と尋ねると、首を振る。
請求書も見たわけじゃない。(家族が見舞いに来ている病人に積極的に請求書を見せる病院はあるのだろうか。)
金銭感覚が少し違うような感じも受ける。払わなければならない金額は大きく言うのが好みのようだ。
「ぜいたくしたかったの」と言われたとき、やんわりと感じた絶望を思い出した。
「もう、ここへ来ちゃだめよ」
優しく諭すように私たちに言う とこ。
夫は噴き出しそうになっている。毎回、もうこれで会うのは最後だと言ってるんだ、と、とこの認知症に対してあきらめに似た気持ちになるようだ。噴き出しそうになっていながら、悲しいのだ。
点滴が外れるように、食事を摂ってね、まず元気になって。
私はせめてもと、とこの足を少しマッサージした。「ありがとう、もう来ちゃだめよ、危険なの。」
手を振って別れた。
帰りの電車の中、夫は少し弱音を吐いた。
男の子を育ててきた私、夫の母親に対する信頼感を知らないわけじゃない。
母親にしっかりしてほしいと、願っている。そして、自分と同じように戦ってほしいと。
私は電車の中で思った。私たちの息子も、幼い時からいつも「競争」や「戦い」を好んだ。
保育園で着替えが遅くなると嫌だから、ボタンのついた服は着ていきたくない、靴も紐のものはダメでマジックテープの奴がいい。
誰よりも早く着替えて、誰よりも早く園庭に出たいから。そんなに勝ち負けにこだわって、負けちゃったらどうするんだろう?と思ってみていると、負けたときの言い訳を用意していたり、負けることには参加しなくなったりしているようだ。
そして、男の子の世界は、勝った奴がなんでも仕切る。「マウンティングされたら終わり」なのだ。
私は年子の姉といつも一緒にいて、「気が回る、気がつく」ことがみんなを居心地よくさせて、それが良いことなのだと思っていた。
決して自分だけがいい思いをしたり、単に人に勝つことが、いいことだとは思っていなかった。嫌われてはイケない、女の子の世界だ。
家を守るためには、他人に負けないように戦わなくてはならない時もある。
とこは認知症のことで一旦施設に入ったけれども、合わなくて入院ということになってしまった。元のアパートに住み続けるためには、大家さんからの退去の要請に対して、戦わなくてはいけない、今がその時だ。
とこは、お金を払えば住まわせてくれるところがある、という考え方だと思うし、払える金額が多いのなら、いい条件のところが選べるのだろうけれど、自分の持っているお金では到底無理と思っている。
ぜいたくしたかったと、口で言ってはいても、あのアパートは冬は寒くて、ガスレンジも古いし、テレビも地デジ化に未対応でつなげられなかった。
みんなを居心地よくさせるためには、自分が我慢するのだと思っているところが、とこ にはある。
夫も、一緒に戦おう、じゃお母さんは共感しないんだろうな、と呟いた。
うん、言うなら、手伝って、とかじゃないかな、と私は答えた。
今日の とこ は、元気がないんじゃなくて、認知レベルと体力レベルが合っている、っていう状態だよ。私はそう思った。
しかし、病院に入院していると、数千万必要なのかぁ。とこの思う金額って、大きいなぁ。
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