趣味

　趣味がないのがお悩みのうちの夫。

　私は今趣味といえるものはないけれど、物好きというか、結構なんでも楽しく思えてしまって、道草ばっかりな気がしている。ネットが繋がれば結構フリーなものは転がっているので、ビジネス記事を読んだり、漫画を読んだり、ゲームをやってみたり、あっという間に時間が経って、どこにも出かけなくても平気である。

　夫は傍から見ると、無趣味、というほど寂しい人間でもないのだが、これといってハマりこんでいるものはない。
あえて言えば、息子と私のお世話だろうか。

　今日一日を振り返っても、私は家に居ても遊んでばかりだと今反省しているところ。
　夫は息子が出かけるまでのあれこれを気にかけてやり、送り出す。洗濯物を干してくれる。

　今日のランチは、たまたまちょっとお得なクーポン券があったのを理由に、わざわざ駅ビルへと二人で出かけ、お店を何軒かブラブラ見て歩き、初めて入るお店で石窯で焼いたピザとペペロンチーノを食べた。美味しかった。ピザやパスタの味をアレコレ。夫は辛さが不足していると思ったであろうと察した。
　食後またお店巡り。夫は雑貨を見るのは好きそうである。ただし、趣味、とまでは言えないかな。どちらかといえば、仕事だったらどうなのかと、そういう視点で見ているから。
　その後は別行動。私は先に帰宅したが、ここのところ取り組んでいるダイエットのため、遠回りしたこともあり、ベランダの干し物を取り込むのは夫が帰ってきたタイミングとなる。ひとつ良かったのは、珍しく、ベランダの掃除を少し出来たことだ。

　先日の旅行で、ホテルに籠りっきりももったいないので、近隣で陶芸体験をさせてくれるところを探し、楽しく過して帰って来たが、モノづくりでは彼はいつも楽しむというより、不甲斐ないとがっかりしているイメージである。

　不器用、というよりは丁寧で完璧主義で、息子のおおざっぱさとは対照的である。そして、大抵、余計な「何か」を加えてしまい、自分で「センスがない」とがっかりするのである。
　今回の場合は、焼成して90日後に指定した先へ送ってくれるというので、土を捏ねて一次工程の整形のみで、焼き上がりはまだ想像もできない。夫の作品には、取っ手をプロにつけてもらうことになっているし、底の部分は小鉢であれコーヒーカップであれ、二次工程で少し削ってくださるのだそうだ。釉薬の感じはサンプルがあるので、なんとなくこんな色でこんな手触りだろうとは想像できるのだが。
　後を託される陶芸のプロは、厚みはそのまま活かすとおっしゃっていたので、モノづくりにおいて、その人の意思を可能な限り尊重してくれそうである。夫が喜ぶ出来であって欲しい。
　次はＤＩＹに挑戦するつもり。

　さて、おおざっぱな息子のほうは、昨日今日と、声優さん（グループ）のコンサートに行ってくるとのことだった。久しぶりに会った友達が、そのグループのコンサートなら行きたいと言うので、チケットを取ったのだ、という。（自分のチケットのお金は、さすがにバイト代から出しているようだ。）私は音楽に疎く、コンサート、なんて行ったことがないから、よくわからないけど、二日間同じ会場で開催されるものなのだそうな。
　物販（ぶっぱん）なるものが開催されており、そこでしか入手できないＴシャツや、コンサート会場で使用するペンライトなど買うらしい。今日も買ったのだろうか。。あまり追及しないけれども。
　息子はサッカークラブ、サッカー部に長くご縁をいただいた。５歳になって試しにと夫が連れて行った体験教室で、「やりたい」と強く言い、高校卒業まで「学業と両立する」と頑張ったものだった。そのサッカーで濃密な時間を過ごした人と現在も友達でいて、同じ声優グループやその声優さんが演じるアニメも好きなことも楽しく嬉しい、ということなんだろう。

　私は息子ぐらいの年には、社会人だったけれど、好きな美術展などに行こう、とはあまり思えなかったかもしれない。（ごくたまには、行ったけれども！）一人暮らしだったし。息子と同じように長らくスポーツをやっていたけど、社会人になってからは、同じ年ごろの友達とのやりとりはなく、どこかでお金の心配をしていたから、かな。到底、趣味に没頭するというより、どうやったら自分の体を保つ食事を安く作れるかとか、掃除メンドクサイとか、そんなことばかり気にしていて、でも大して努力もせず、その日を暮らしている感じだった。

　今は、「趣味はないなぁ」と言って私に合わせてくれる夫と、趣味を謳歌する息子とを見ながら、なんとなく、幸せだなと思うのだ。