川上未映子の快進撃は続く…
「ヘブン」は中学生のイジメを舞台に対立する宗教、哲学的な思考というと形而上学的小説だったが、「すべて真夜中の恋人たち」は、校閲(こうえつ)を仕事にする三十代半ばの独身女性の仕事と恋愛という身近な物語だ。
山田詠美は当代一名文の小説家だと思うが、川上未映子は「詩人」であり、小説家である。
「ヘブン」ではシャガール、「すべて真夜中の恋人たち」はショパン、目に見える絵画より音楽の方がより詩的表現が輝くようだ。
『…のぼりながら、あるきながら、わたしはそのひとつひとつの音の輝きを指のはらでそっとなで、それを連ねて首飾りにして胸にかけ、それからその光の輪を両手でにぎって足を入れて何度も何度もくぐりぬけ、おおきく息を吸いこめば透きとおってしまった胸がまるで何万光年もむこうの星雲を飲みこんだようにうっすらときらめいているのがみえた。…』とショパンの音のつぶを表現する。
五反田の名店「ヌキテパ」が「ヌレセパ」と店名を変えて出てくるのも身近だ。
全米批評家協会賞の受賞を期待
しましょう!!
★★★★★
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