三島由紀夫のエンタメ小説には、隠れた?傑作が多いのではと思います。本作も当時の20代向け女性誌『マドモアゼル』(小学館)1963年1月号ー12月号に連載され、後日、単行本化されたものです。
題名の『肉体の学校』は、ラディゲの『肉体の悪魔』をもじったものでしょう。
あらすじは、
『裕福で自由な生活を謳歌して いる三人の離婚成金。 映画や 服飾の批評家、レストランの オーナー、ブティックの経営者と、それぞれ仕事もこなしつつ、 月に一回の例会 "年増園”の話題はもっぱら男の品定め。 そのうちの一人元貴族の妙子がニヒルで美形のゲ イボーイに心底惚れこんだ ・・・・・・。 三島由紀夫の女性観、 恋愛観そして恋のかけひきと は? 解説 群ようこ』文庫本背表紙より
主人公の妙子は、戦前、男爵夫人であったが戦後に離婚し、39歳の現在はブティックを経営する実業家。
彼女と同年代の友人、鈴子はレストランオーナー、信子は映画、服飾評論家で、戦前の令嬢時代から社交界で話題の仲間だった。
ゲイ・バーで働く、美青年のバーテンで千吉は、『神田の坂の上の頂きに、小さな品の良いホテル』(山の上ホテル)から見える、R大学(明治大学ですね)の学生で21歳、大学には真面目に行っていないようだ。
千吉は、“お金”で男にも女にも体を売っているらしい。
そんな千吉に一目惚れしてしまう妙子…
ゲイ・バーには、古風な『パリスの審判』の絵がかかっている。
【参考】
クラーナハ パリスの審判
ゲイ・バーにはクラーナハが似合う気がするが…
三人の女神からパリスが選んだのは、美とエロスの“ビーナス”だった
1998年 ブノワ・ジャコ監督
出演 イザベル・ユペール、ヴァンサン・マルチネス
1998年カンヌ映画祭ノミネート
金持ちのアラフォーと若い男の恋愛は、プロットだけでもフランス映画
に馴染みますね
残念ながら、日本版もフランス版もDVDを発見出来ませんでした
出来はわかりません…
小説は、三島由紀夫のストーリーテラーぶりが遺憾なく発揮され、エンタメ小説として十分楽しめました
ラディゲやラクロを読みやすくし、現代女性のある種の憧れに叶うような作品
解説の群ようこ氏(小説『カモメ食堂』)は、
『妙子は女性が憧れる、すべての物を持っている。 ファッション・デザイナーとして仕事 も成功している。経済的には申し分ない。 だから男性なんか必要ないというタイプではな い。 恋愛に溺れることなく、うまく男性と付き合うセンスを持った女性である。 恋にも仕事にも貪欲に生きるタイプである。私は自分がそういうタイプではないので、そういう恋 愛エネルギーが強い女性に憧れてしまう。なぜ私がそういうふうにならないかというと、 ただただ面倒臭いからなのだ。』と解説で評している。
小説なら“恋”も、
面倒臭くならないですね
お勧めします
★★★★☆
ラストはスッキリ!!