古今東西のアートのお話をしよう

日本美術・西洋美術・映画・文学などについて書いています。

さくらのうた 2013年ブログより

2022-04-30 15:55:42 | 俳句・短歌・詩等関連カテゴリー
やまちゃん1のブログ-20100502205646.jpeg



入学式前に桜がちるって、近年なかったような気がします。

桜のころに思い出す一句。



「愛咬やはるかはるかに桜ちる」

        時実新子
       (ときざね しんこ)


『愛咬(あいこう)とは性技の一種で、行為中に首、胸などをかむこと… 自然でも、ライオンの雄が行為中雌の首をかむ画像がよく見られる』

もっとも有名な現代川柳の一句だと思います。

この句を読んで、衝撃を受けました。
句からは、ひたすら自己に耽溺する女が感じられますが、女性の見方は違うかも知れませんね。

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散る桜に自己をみて、愛惜を感じるのか、忘我のなかではるかに散る桜の幻影を見るのか。

いづれにしても、男では絶対よめない詩のようです。

さくらのうた いろいろ

2022-04-05 14:11:09 | 俳句・短歌・詩等関連カテゴリー

「木のもとに 汁も膾(なます)も

桜かな」

芭蕉



桜の下に集い宴を催すのが、古今東西貴賤によらず、桜を楽しむ日本人の姿


昨今は、桜の下には無粋なロープがひかれ宴は禁止…




しかし、宴の記憶からか桜を観るとお腹が空く

それは、雅なご婦人もおなじ


「さくら狩り 美人の腹や

滅却す」


与謝蕪村



さくら狩りには、食事の予約か事前にお腹を満たすのが肝要ですね






花見の度にお相手を変える人気者にはなおさらです



「君は吉野の千本ざくら

色香よいけど きが多い」


都々逸



写真ネット画像借用





青空の下の桜も見事ですが、夜桜の香気に胸騒ぎ…






「清水へ祇園をよぎる桜月夜 
今宵逢ふ人 みなうつくしき」

与謝野晶子


写真ネット画像借用






いつか、さくらが散り


春が行く



「桜花何が不足でちりいそぐ」

小林一茶


川合玉堂 「行く春」部分 1916年




「散る桜残る桜も散る桜」


良寛





春のために

2022-03-09 08:43:49 | 俳句・短歌・詩等関連カテゴリー
春を感じる日、あるいはみずみずしい感性に触れたときに思い出す詩があります。
はじめて薄暗い本屋でこの詩に出会ったとき、ひかりと移動する視線が作るイメージにくらっときました。
それ以来、大岡信の、特にこの詩を
愛唱しています。



春のために


砂浜にまどろむ春を掘りおこし
おまえはそれで髪を飾る おまえは笑う
波紋のように空に散る笑いの泡立ち
海は静かに草色の陽を温めている

おまえの手をぼくの手に
おまえのつぶてをぼくの空に ああ
今日の空の底をながれる花びらの影

ぼくらの腕に萌でる新芽
ぼくらの視野の中心に
しぶきをあげて回転する金の太陽
ぼくら 湖であり樹木であり
芝生の上の木漏れ日であり
木漏れ日のおどるおまえの髪の段丘である
ぼくら

新しい風のなかでドアが開かれ
緑の影とぼくらとを呼ぶ夥しい手
道は柔らかい地の肌の上になまなましく
泉の中でおまえの腕は輝いている
そしてぼくらの睫毛の下には陽を浴びて
静かに成熟しはじめる
海と果実


大岡信 「記憶と現在」より