古今東西のアートのお話をしよう

日本美術・西洋美術・映画・文学などについて書いています。

休館!? DIC川村記念美術館

2024-10-03 15:49:32 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等カテゴリー

DIC川村記念美術館は、1990年5月に千葉県佐倉市に開館、「作品」「建築」「自然」が調和したユニークな美術館
2024年8月28日に、DIC株式会社から突然、『2025年1月下旬より休館』する旨が発表された
資産効率から都内への縮小移転の方向らしい
地元佐倉市を中心に猛烈な反対運動が起こり、2024年10月2日に、 佐倉市長が56,000名あまりの美術館継続を望む署名をDIC社に提出
DIC社は、休館を2025年1月下旬を3月下旬に延期する事を発表
最終結論は年内に決定されるらしい
何十年ぶりに美術館を訪ねてみた
今回は、JR佐倉駅から無料バスに乗ったがなんと30分もかかる…
しかし、時間をはるかに上回る感動があった
まず建物が素晴らしい
(館内は撮影禁止のため、写真はネット画像、図録を借用)
マイヨール 「ヴィーナス」1918-28年
美術館エントランス
設計は、海老原一郎(1905〜1990)
暗がりから見える森の緑と陽光が、作品世界にトランスする
2階建てで各展示室がそれぞれ特徴があり、開口部を大きく取り、森の中にある空間、作品世界に没入する空間など特徴をもたせている
ポスト絵画的抽象の作家

マーク・ロスコの部屋は、まさに作品世界に没入する空間

企画展 “西川勝人 静寂の響き”

『ごあいさつ

ドイツを拠点に活動する西川勝人(にしかわかつひと∶1949-)は、光と闇、その間の漠とした陰影に心を配る多様な作品を、40年 以上にわたり手がけてきました、なかでも代表的なのが、活動初期から継続する彫刻です。抽象的なフォルム をもつ彼の白い彫刻は、木や石膏を用いた簡素な構造ながら、表面に淡い陰影を宿し、周囲の光や音さえも そっと吸い込むように静寂へと誘います。(中略)

本展は、1980年代より現在まで一定して、静けさという特質を保持し続ける西川作品の美学に触れる日本初 の回顧展です。彫刻、写真、絵画、ドローイング、インスタレーション、建築的構造物など、多様な手法による、 初期から最新作までの約70点を紹介いたします。作家自らが会場模型を作り、それぞれの展示室がもつ光を 考察しながら選定した作品は、制作時期とメディアを混在させた絶妙な組み合わせで構成されています。個々 の展示室に名を与えるとすれば、「光と影」 「教会」 「ラビリンス」といった言葉が浮かび上がってくるでしょう。 それぞれの空間は、質の異なる静寂をもたらし、そして私たちの内なる静謐さをも引き出してくれるに違いあり ません。美術館という日常から隔てられた場において、西川作品を介することで、来場くださった皆様が観想 する時間をもつことを願って、本展を開催いたします。

2024年9月

DIC川村記念美術館

館長生嶋章宏 』


「ファザリス」 1996
「静物」2005

左右の大きな窓ガラスから鬱蒼とした樹木と木もれ陽の揺らぎが室内に差し込む
ホウズキ形のガラス「ファザリス」
と壁の「静物」グリッド

「静寂の響き」 2005-06
白黒のグリッド、静物、劇場

「池のほとり」 2010
絵画と彫刻

「ラビリンス断片」 2024

「キオッジャ」 2023
ラビリンスに置かれた白い彫刻群と壁のモノクロームの写真


「秋」 2024
しきつめられた花弁 朽ちていく花の漂う香り

『西川作品は、作品のみによって完結するのではなく、その都度の周りの環境と、そして何より見るものの経験において結実される。』西川勝人 静寂の響き 前田希世子より

写真では分からない、
「いま、ここ、自己」がある
『静寂の響き』という、禅的体験ともいえる

常設作品から
レンブラント・ファン・レイン
「広つば帽を被った男」1635年

ルノワール「水浴する女」1891年

パブロ・ピカソ「シルヴェット」
1954年

藤田嗣治「アン・ド・ノアイユの肖像」1926年

マルク・シャガール「ダヴィデ王の夢」1966年
自然と屋外彫刻
清水九兵衛 「朱甲面」1990年

西川勝人の個展出口の壁に、
アートは自然に対立するものではなく、自然に同調するものでもなく、自然と共存、coexistするものだと思います》と書かれていた。
西川勝人の芸術に借りた、
川村記念美術館の
マニフェストだと思う
とかく饒舌過ぎる現代アートとは、真逆とも思える西川勝人の
芸術 川村記念美術館という
舞台で、『静寂の響き』を聴きました ★★★★★ 
強くお勧めします

東京都美術館 大地に耳をすます 気配と手ざわり

2024-10-02 07:05:53 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等カテゴリー

東京都美術館に足を運びました
田中一村展に人影なし!?

長蛇の列は「大地に耳をすます 気配と手ざわり」です??

本日“都民の日”で入場無料との由
母親と子供連れが多いのは、無料だけが理由ではなく、絵本作家のミロコマチコの絵画とインスタレーションが展示されているためだろう

【参考】
◯見どころ
  1. 自然とともに生きるよろこび
    都市を出て、豊かな自然と風土に身をおいたつくり手をご紹介します。 川村喜一が移住者としての新鮮なまなざしで撮影した知床の日常や、榎本裕一が魅了された極寒の根室の景色をモティーフとした作品が、東京の展覧会場に自然の息吹を伝えます。
  2. 空間にあわせた新作
    ミロコマチコ、東京都美術館の個性的な広い空間に合わせて、生命のうごめく奄美大島をイメージしたインスタレーションを制作。ふるさかはるかは、取材地の漆を使った15枚組みの大きな木版画に取り組み、青森の木立のような展示空間をつくります。
  3. 5人の現代作家による多彩な作品写真、木版画、油彩画、水彩画、インスタレーションなど5人の現代作家による多彩な作品を展示。倉科光子による東日本大震災の津波と復興がもたらす植生の変化を捉えつづける作品をはじめ、さまざまな角度から人と自然の関係を見つめ直します。∶展覧会HPより

川村喜一(1990〜)
東京生まれ、東京藝大大学院終了後、妻と知床半島に移住。知床の動物の写真、インスタレーションを製作する。



ふるさかはるか(1976〜)
大阪府出身。武蔵野美術大学油画科卒業。木版画を独学。漆木を版木に、漆の樹液で刷った木版画を製作。



ミロコマチコ(1981〜)
大阪府出身。京都精華大学卒業後、絵本作家として活躍。2013年「オオカミがとぶひ」で日本絵本大賞受賞。東京から奄美大島に移住。

地下3階、ミロコマチコのインスタレーション

ライブペインティング作品








奄美の自然をイメージするインスタレーション


倉科光子(1961〜)
青森県出身。手描き友禅の工房を辞め、東京農業大学で保全生態学を学ぶ。2013年から、東日本大震災の被災地を訪ね植物画を製作。

被災地に咲く草花、美しい水彩画



榎本裕一(1974〜)
東京生まれ。東京造形大学卒業。北海道根室市と新潟県糸魚川市にアトリエをかまえて活動。雨や雪、氷など自然現象を写真、油彩などの手段でミニマル・アート化する。




生まれ育った土地から、それぞれの大地に住み、その土地の気配と手ざわりを表現する5人のアーティスト

ミロコマチコの自由な
ペインティングが楽しかった🤗

10/9(水)までです、親子、孫で
楽しめます
田中一村展とセットで
どうぞ
★★★★☆



Nerhol 水平線を捲る 千葉市美術館

2024-09-28 13:25:16 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等カテゴリー
Nerhol 水平線を捲(めく)る 
September6ーNovember4,2024
千葉市美術館



千葉市美術館がまたまたやってくれました! 現代アートのNerholと千葉市美術館収蔵品のコラボです。



Nerholは、田中義久と飯田竜太が2007年に結成したアートデュオ。
田中は紙と平面構成によるグラフィック、飯田は紙や文字を素材にする彫刻家。写真と彫刻を往還するユニークなアーティスト。



そのユニークな手法は、人物を数分間連続して写真撮影し、出力して重ねた200枚の写真に、カッターナイフで彫りを施したポートレートに見られます。





Nerholの作品と千葉市美術館の収蔵品のコラボも見どころです。

お勧めします!

写真は、Nerholの代表作ポートレート、千葉市にちなんで大賀ハスを使用した和紙作品、千葉市美術館収蔵品とのコラボインスタレーション・白髪一雄作品


MOTコレクション

2024-09-07 19:54:05 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等カテゴリー

日本現代美術私観のあとは、
MOTコレクションがあります




今回は、「竹林之七妍」「Eye to Eye―見ること」「野村和広」

「Eye to Eye―見ること」では発見❢がありました→別掲載

「竹林之七妍」は、間所(芥川)紗織、高木敏子、漆原英子、小林ドンゲ、前本彰子、福島秀子、朝倉摂の七人の女性作家にフォーカスしています



河野通勢(こうのみちせい:1895〜1950)  竹林之七妍(ちくりんのしちけん) 1923年

古代中国の故事「竹林七賢」(老荘思想を信奉し、竹林で清談を行ったという七人の名士)にならい、女性に置きかえた、河野道勢の絵にちなんで、「竹林之七妍」としたそうです



高木敏子(1924〜1987)
左、「花」1981「形象」1983


高木敏子「形象」1983



高木敏子「貌」1963

高木敏子は、ファイバー・アートの先駆者と呼ばれる



間所(芥川)沙織(1924〜1966)
左「イザナギノミコトの国造り」
右「女Ⅺ」1955



前本彰子(1957 〜)「深海のアネモネ」1992


前本彰子「悲しみの繭2024」2021―24


前本彰子「パンドラの箱の中で」



野村和広「笑う祭壇」2014/2019

線の外から台座にボタンを投げる参加型作品



奈良美智作品



佐藤達哉「犬」



中村宏「明暗法からの視線(部分)」2015―16

高峰秀子さんがいてドキッ🥰



中園孔二「ポスト人間」2007

彼については別ブログで…



ジョルジュ・ルース「メスMetz」
1997

methは、ゴチャゴチャ、乱雑、片付けなさい!という意味




開発好明「机の上」2010



長谷川繁[タイトルなし] 2007
ほか



長谷川繁 左、「法被威穂猥屠摩訶論ちゃん」1997 ほか




宮島達男「それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く」 1998年


なんといっても、「Eye to Eye―見ること」で発見❢した、中園孔二が最大の収穫



十和田市現代美術館

2024-09-03 06:33:50 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等カテゴリー

超低速台風10号に翻弄された

1週間でした

過日、青森県の十和田市現代美術館を訪ねました

数ある日本の現代美術館の中でも、最も好きな現代美術館です(直島はまだ行ってない…) 


特徴的なのは、屋外常設展示で誰でも無料で楽しむことができます

金沢21世紀美術館は、背景に金沢城石川門があり、金沢という街の魅力の一つになっていますが、十和田市の街はシャッター街で活気はなく、屋外常設展示に力を入れたのでしょう


屋外常設展示を観ていきます

「」は作品名、作者(生年、出身地)


「愛はとこしえ十和田でうたう」

草間彌生(1929〜 長野)


「ゴースト アンノウン・マス」
インゲス・イデー(1992結成 ドイツ)

「ファット・ハウス ファット・カー」 エルヴィン・ヴルム(1954〜 オーストリア)


「フラワー・ホース」 チェ・ジョンファ(1961〜 韓国)


「アッタ」椿昇(1953〜 京都)


「はじまりの果実」 鈴木康弘(1979〜 静岡)

美術館エントランス

館内常設展示

「ゾボッフ」ジム・ランビー(1964〜 スコットランド)



「スタンディング・ウーマン」ロン・ミュエク(1958〜 オーストラリア) 


美術館を代表する作品

身長4メートルの老女



「コーズ・アンド・エフェクト」ソ・ドホ(1962〜 韓国) 


タイトルは「因果関係」を意味するらしい。同じポーズの小さな人形の連鎖で造形されている。全体のフォルムは卵子に受精する精子にも見える。小さな人形はDNAかもしれない。因果とは仏教の輪廻転生であり、アーラヤ識、集合的無意識に繋がるだろう。




「水の記憶」塩田千春(1972〜 大阪) 

なんとも強烈な赤の光だ!十和田湖にあったという古びた木船。水の記憶は、血潮の流れだろうか…

いいですね🥰



「光の橋」アナ・ラウラ・アラエズ(1964〜 スペイン) 


アラエズは女性作家。クリスタルで柔らかい。


「ウォール・ペインティングミラー」 フェデリコ・エレーロ(1978〜 コスタリカ)


屋上から八甲田山を望む


「夜露死苦ガール2012」 奈良美智(1959〜 青森)
「オクリア」ポール・モリソン(1966〜 イギリス)


「ザンプランド」栗林隆(1968〜 長崎) 


白い部屋に、白いイスとテーブル、天井から白い生き物の足、テーブルに上り、天井の穴から首を出すと、地獄の黙示録のウィラード大尉のようにジャングルの水面から顔を出す。これ楽しいです✨


「ロケーション(5)」 ハンス・オプ・デ・ベーク(1969〜 ベルギー)

真っ暗闇のダイナーの窓下に果てしなく続く高速道路
ここは2人がけで座れるので休憩?できますが、不謹慎な人はいなかった…

「松 其ノ三十二」 山本修路(1979〜 東京)

(ネット画像借用)
「無題/デッド・スノー・ワールド・システム」ボッレ・せートレ(1967〜 ノルウェー)

映画「2001年宇宙の旅」から着想を得たらしい
(ネット画像借用)
「闇というもの」マリール・ノイデッカー(1965〜 ドイツ)

静寂が支配する深い闇の森
ここも好きですね🤔


別棟の常設展示

「建物―ブエノスアイレス」レアンドロ・エルリッヒ(1973〜 ブラジル)


屋外常設展示 夜のお楽しみ
(ネット画像借用)
「エヴェン・シェティア」ジャウメ・プレンサ(1955〜 スペイン)

エヴェン・シェティア(EVEN SHETIA)とは、ヘブライ語で「創造の石」を意味する。ユダヤ教で世界創造が始まった地点。日没になると岩から一筋の光が放たれる。
大人も子供も、

何度来ても楽しい美術館です!!