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美しい春画 細見美術館

2024-11-04 16:02:27 | 絵画(レビュー感想)

2013ー14年にイギリス大英博物館で大評判となった「Shunga:sex and pleasure in Japanese art」をふまえて、2015年東京永青文庫で開催された「春画展」は、入場者数が20万人を超え女性が6割と大きな社会的ニュースになった。翌年京都細見美術館に巡回した。
2023年には、春画をテーマにした二本の映画『春画先生』『“春の画 SUNGA”』が公開されました。
2024年東京大倉集古館で『浮世絵の別嬪さん 歌麿、北斎が描いた春画とともに』では、肉筆美人画と歌麿、北斎の春画を会場を変えて展示した。

春画を美術作品として公開し、鑑賞者も予断を交えず鑑賞するという環境が整って来ている。

そして、満を持して、細見美術館の「美しい春画 ー北斎・歌麿、交歓の競艶ー」
(展覧会は、一切撮影禁止のため、写真はネット画像および図録から借用しました)

展覧会図録に「鼎談 美しい春画を愉しむ 對龍山荘にて」で、細見美術館館長と2人の学者が春画について会談している記事があります

對龍山荘は、京都南禅寺界隈の別荘建築群の一つで、庭園は七代目小川治兵衛作庭の国指定名勝、建物は重要文化財で現在はニトリホールディングスの所有となっています
ちなみに、對龍山荘は、現在予約制で見学(庭園)できるようです🤗

さて、鼎談では、對龍山荘の聚遠亭床の間に、歌麿「階下の秘戯」を掛けて鑑賞しています
余談ですが、オヤジ三人が春画を見ている図は……ん~~😮‍💨

どう見ても好感が持てる(アカデミックな)構図とは言い難いが、裕福な商人が、好事家を集めて春画を愉しんでいるという雰囲気はある?
やっぱり、こっちの構図の方ががいいですね
展覧会のメインビジュアル、喜多川歌麿「夏夜のたのしみ」

鼎談の中で、「階下の秘戯」と歌麿の大作「深川の雪」との類縁を語っています
歌麿 深川の雪 約2m×約3.4m

深川の雪」は江戸・深川の料亭の2階座敷で辰巳芸者や、料亭の中居たちに幼い男の子1人を含む総勢27名を描いた作品
階下の秘儀」も料亭の階段で絡む男女と、それを盗み見る料亭の女中の自慰を描いており繋がりがあると推察しています

今回の展覧会で一番感動したのが、この「階下の秘儀」です
巻末の作品解説には、こうある
『階下の秘儀
喜多川歌麿
絹本着色 一幅
享和年間〜文化三年(1801〜06)
58.8×68.8  似鳥美術館
喜多川歌麿による掛軸の春画。階段の途中で交接する男女と、階段下の陰で自慰をする女を描く。陰毛も生え揃っていない若い娘が、 階段を二階へ上がろうとしたところでにわか に催した男に後ろから捕まってしまったよう だが、右手で男の手首をつかんでおりまんざ らではない。階段裏の年嵩の女は、色数を抑 えた渋い縞模様の着物に髪の装飾も控えで、 女性自身に大根を挿し入れ、淫水が流れ出て いる。階段途上の二人の房事に淫猥な気を誘われたものだろう。板の間には、まな板と包丁、切りかけの大根があり、料亭の裏方が舞台となっていることがわかる。背後の富士を描い た墨画屏風に「哥麿筆」と隠し落款が入れられ ている。』


私は、この「キャプション」をみて思わず笑ってしまった!
まさに『笑い絵』である
とても気に入って、何度も見入ったが、周りに笑っている人はいなかった?!
特に気に入ったのは、階段でまぐわう男性の左足の描写である
この筋肉の緊張感!!
剣道で飛び込み面を決める剣士のようではないか!?😮
歌麿の最高傑作の一枚といって 
いいのでは、と思います
この一枚を見ただけで十分でした
春画の楽しみの一つは、北斎に代表される大胆な構図です
春画は男女、男男、女女、人動物・魚の2人?の交接場面を描くという決まりがあるため、画面にどうインパクトを出すかが命です
北斎は、浮世絵の制限(交接を描く)の中で様々体位をデザイン化して、全くエロくないアートを完成させました


当時の庶民(あるいは上級町衆)が、北斎の画で劣情を催したとは思えない
色彩や構図あるいは詞書に感興し、「驚き」や「笑い」を誘ったのだろう
春画の愉しみのもう一つは、性愛の愉しみ、甘美さ、危うさ、あるいは、ほのぼのした描写であろう


観る者の練度によって意味解釈が変わってくるだろう
まさに、優品が結集した春画展といえます。京都を訪ねるなら何をおいても見るべきでしょう。ちなみに、北斎はヨーロッパではレオナルド・ダ・ヴィンチに伍している?そうですが、欧米人の観客はほぼいませんでした?!😮

これだけ春画の優品が集まる展覧会はなかなかありません
★★★★★
お勧めします


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