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古今東西のアートのお話をしよう

日本美術・西洋美術・映画・文学などについて書いています。

荏原畠山美術館 琳派から近代洋画へ 高輪台、白金台散策

2025-03-03 17:13:34 | 日記

荏原畠山美術館 開館記念展Ⅱ(破)「琳派から近代洋画へ」後期に行ってきました

会場は一切撮影禁止のため、写真はすべてネット画像を借用しました

本館2階展示室の4作品に惹かれました
扇面草花図 伝俵屋宗達筆 江戸時代17世紀

小品ながら、見た瞬間、宗達だ!
金地に不均衡に散りばめられた草花が絢爛たる法華の世界を表す
宗達(工房)の扇面図の中では出色の作品だと思う


蓮池水禽図 俵屋宗達筆 江戸時代17世紀

国宝の「蓮池水禽図」のヴァージョンの一つ

【参考】国宝 蓮池水禽図
2茎の蓮と2羽のかいつぶり
咲く白蓮と散りゆく蓮
楽しげに泳ぐ1羽と静かに休む1羽


畠山美術館の蓮池水禽図は、花が散りハチスとなった、たらし込みの葉が茂る
1羽のかいつぶりが小波をたてて泳いでいる
国宝に比べて、蓮の葉が全体を占め、筆は荒く、かいつぶりも羽が雑で表情もあまり楽しげ?に感じなかった
しかし、かいつぶりの水中の足が作る小波は国宝とほぼ同じでした、興味深い作品です


躑躅図 尾形光琳 重要文化財 江戸時代 18世紀


紫陽花百合図 尾形乾山 江戸時代18世紀

尾形光琳の弟の乾山、陶芸家として識られるが、絵画も独自のセンスがある
百合の太い輪郭線や紫陽花の立体的表現は陶芸に通じる

赤楽茶碗 銘雪峯 本阿弥光悦
重要文化財 江戸時代17世紀

赤楽茶碗 銘李白 本阿弥光悦
江戸時代17世紀

紅葵花蒔絵硯箱 尾形光琳 江戸時代18世紀


結鉾香合 尾形乾山 江戸時代18世紀

新館2階展示室1へ

十二ヶ月花鳥図 酒井抱一 江戸時代19世紀 より

酒井抱一の花鳥図はとにかく上品で優等生的ですね、落ち着きます


四季花木図屏風 酒井抱一 江戸時代19世紀
江戸時代の作品とは思えない鮮やかな作品
向日葵図 鈴木其一 江戸時代19世紀

デザイン性が強調された其一の向日葵図、抱一の草花図からの飛躍を感じる

地下2階へ

草花図屏風 川上涼花 大正7(1918)年推定

西洋のモダンアートと日本画のモチーフ、マチエールを融合した作品

優品が揃う展覧会
★★★★☆
適度な観客でゆったりと鑑賞できます

高輪台、白金台を散策してみました
(空撮ネット画像借用)

畠山美術館のお隣はマサの自宅・迎賓館、トランプ氏が来日したら立ち寄るかも!?

国道1号線を麻布方面に向うと、明治学院大学の白金キャンパス
記念館 ヘンリー・モーア・ランディス宣教師設計 1890年

礼拝堂 ヴォーリズ 1916年

明治学院大学キャンパスから白金台に向かうと八芳園の対面に瑞聖寺
宇治萬福寺が総本山の黄檗宗の江戸で最初の寺院
重要文化財の通用門と大雄宝殿



新築の庫裏は隈研吾の設計
大きな水盤が池に見立てられる


高輪台に戻り、高輪警察署に向うと
(ネット画像借用)

高輪警察署の向かいに、高輪消防署二本榎出張所 昭和8(1933)年竣工
ドイツ表現主義のデザインらしい

品川方面に向うと、三越百貨店の社長などを務めた旧朝吹常吉邸(現日本テレビ高輪館)
(ネット画像借用)

旧朝吹常吉邸 ヴォーリズ設計
大正14(1925)年
スパニッシュミッション様式

朝吹常吉の長女の朝吹登水子は、フランソワーズ・サガンの「悲しみよこんにちは」などの翻訳家

朝吹邸横の坂を下ると…
東禅寺 臨済宗妙心寺派の別格本山
残念ながら非公開

幕末、日本最初のイギリス公使館となった東禅寺、攘夷派の襲撃による東禅寺事件が起きた

墓地から、三重塔が見える


(ネット画像借用)

境内には完全非公開の美しい庭園が残っているらしい

高輪台、白金台周辺には、幕末から明治、大正の歴史的建造物が数多く見られます
建物好きの散策にお勧めします


近衛文麿旧宅「荻外荘」

2025-02-20 22:14:13 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等カテゴリー

東京、新宿の先の荻窪

『大正から昭和初期にかけて

「西の鎌倉、東の荻窪」と称され、東京近郊の別荘地として発展

してきた歴史がある』


昭和戦前期に首相を3度務めた近衛文麿の荻窪にある旧邸「荻外荘(てきがいそう)」

ここで、1940年7月19日「荻窪会談」が開かれた


当時の荻外荘客間

左から近衛文麿次期総理、松岡洋右次期外相、吉田善吾海相、東條英機次期陸相


この会談後、第二次近衛内閣で、日独伊三国軍事同盟締結、全政党の解散、大政翼賛会が成立し、国家社会主義体制となり、第三次近衛内閣の後、太平洋戦争開戦となる


近衛文麿(1891-1945)


『藤原摂関家嫡流の近衛公爵家の長男として生まれ、昭和戦前期に内閣総理大臣を三度務めました。日米開戦後は、戦争の早期終結に奔走しますが、終戦後にGHQより逮捕令が発せられ、出頭期日の昭和20(1945)年12月16日早朝に荻外荘の書斎で自決しました。』荻外荘パンフレットより


現在の荻外荘客間

変わっていませんね

『荻外荘は、 1927(昭和2)年に大正天皇の侍医・入澤達吉の別邸として建てられました。 設計は日本最初の建築史家としても活躍した建築家の伊東忠太(入澤の義弟)です。

1937 (昭和12)年には入澤より譲り受けた政治家・近衛文麿が移り住み、さまざまな政治の舞台となっていきます。

2016(平成28)年に国の史跡として指定されました。』荻外荘パンフレットより


約7年かけて解体補完工事を実施し、ほぼ創建当時の姿に戻り、2024.12.9より一般観覧が開始された


伊東忠太(1867―1954 )

『築地本願寺の設計などで知られる日本を代表する建築家・建築史家です。東京帝国大学を卒業後、辰野金吾のもとで法隆寺の建築を調査し、その様式がギリシャ建築に通ずると論じました。昭和18(1943)年、建築学の分野で初の文化勲章を授与されています。』荻外荘パンフレットより


では、荻外荘を見学します…



「近衛」の表札がかかる正門


出入口(勝手口)より入館
玄関、応接室へ

玄関

応接室

玄関、応接室は中国風の意匠で統一されており、当初の施主入澤達吉と入澤の義弟で建築家の伊東忠太の趣味と意向によるものだろう

古いガラスは趣があります

龍の天井画
中国の書家の画だそうです

床のタイルは、伊東忠太のデザインで龍のレリーフのタイルが配置されています
オリジナルのタイルも残されています

廊下を通って客間へ

食堂

近衛文麿の肖像

客間、食堂から芝庭が見渡せる広縁
ガラス窓の木枠意匠が素敵です


居間 床の間、付け書院、違い棚、地袋、畳には炉が切ってある本格的和室

居間の隣が、荻外荘で最も美しい部屋―書斎
天井の高い洋室であったが、近衛が首相を退いたあと和室に改修した


茶室を思わせる、平天井と斜めに傾斜した掛込天井が見どころ

近衛の寝室として利用されていた

GHQから戦犯容疑ための出頭期日である1945(昭和20年)12月16日早朝、近衛はこの部屋で青酸カリによる服毒自決をした


隣の和室で、おひなさま展示




蔵 近衛が着用した大礼服


別棟 近衛文麿の長男文隆の名義で増築された
現在はカフェになっている

施設の職員さんの対応は気持ちよく、丁寧に説明いただきました

観覧料 一般 300円
激動の昭和史の一端にふれることが出来ます

お勧めします🙂


そこに光が降りてくる 東京都庭園美術館

2025-02-13 14:08:35 | 日記

ブロガーさんの記事を読み、閉幕間際の庭園美術館に行ってきました

庭園美術館で行う展覧会は、建物自体がアートな空間で、作家がコラボレートするというセッションの緊張感が楽しい

今回は、鉄の青木野枝とガラスの三嶋りつ惠のコラボレーション

旧朝香宮邸の特徴的なインテリアであるガラスと鉄の意匠に、二人の作家の作品が加わり、早春の光がふりそそぐ

パンフレットにある二人の言葉をそえる

私のガラス作品は職人たちと共に、その日の偶然を取り込みながら炎との戦いの中で結晶する。それぞれのフォルムは光をはなち、光で満たされた海を遊泳する。(三嶋)


朝香宮邸が背負ってきた歴史の重さ。その邸宅の内部に彫刻を置くということは、朝香宮邸を通して世界を見ること。(青木)

ガラスを金属はとても似ている。 与えると溶けて光を放ちながられていく。(青木)

大学院の時につくったもの。丸棒を溶接して形づくると、その中を風が通り抜けていった。(青木)

照明柱が美しいこの空間は、かつては家族が集まる賑やかな場所だった。二万二千個連なるガラスビーズの光をそこに降ろし照らし出す。(三嶋)


石炭は日本の近代産業を象徴するもの。地中から掘り出されて、光を受けるときらきらと輝く。(青木)

石鹸は多くの人たちが手や身体をこすって小さくなったもの。その石鹸を積んで山を立てる。(青木)



折りのかたちは、球体だと思う。そこから風景が見えてくる。(三嶋)

職人によって瞬時に吹かれたチューブ状のガラスは、360度回転しながら螺旋を描き形づくられていく。(三嶋)



最初にその作品を見るのは私。作品がその場に置かれないと見えないものがある、それを見たくてつくっている。(青木)


これは、朝香宮邸オリジナル

外の空気の中で、ガラスの粒に映り込む風景。(三嶋)

鉄は透明な金属。
そしていつも内部に透明な光をもっている。————青木野枝

私のガラスは無色透明です。
そして周りの光や色をとらえて解き放つのです。――――三嶋りつ惠

左、青木野枝(1958〜東京都生まれ)
右、三嶋りつ惠(1962〜京都府生まれ)

旧朝香宮邸 茶室「光華」
重要文化財

庭園の梅の香をたのしむ
まあるい白梅の木がかわいい


UESHMA MUSEUM

2025-02-04 09:40:56 | 日記


2024年6月1日にオープンした、UESHIMA MUSEUM
起業家の植島勘九郎(1979〜)が開設した現代アートの美術館
渋谷駅から徒歩約10分の好立地、渋谷教育学園の敷地内にあります

驚くのは植島氏が、2年余りで、現代アート約700点をコレクションし、計画から1年で開館する驚異的スピードですね

完全予約制ですがネットで当日でも申し込めます

展示スペースは、B1から5階まであり、各階階段の踊り場には杉本博司の写真が展示してあります

杉本博司 Palais Garnier 2019
パリ・オペラ座



主な作品、お気に入りの作品を
並べます

1階エントランスから入ると!?

Ryan Gander タイトル間の混乱の種まき、または不法占拠者 2011

スヤスヤ眠るネコちゃんは、お腹が膨れたり凹んだり…
確か、以前京都のお寺さんで同じような作品を見たような

名和晃平 PixCell-Deer#40 2015
壁に鹿がお出迎え
エレベーターで5階まで上がって、階段で降りてくると杉本博司の写真も見られます
各階のギャラリーには、予約時に返信されたスマホのQRコードを入口でかざして入場します

5階 松本陽子の絵画
松本陽子 The Day/Saw the Evening Star 2023

松本陽子 光は闇の中に輝いている 1992

松本陽子(1936〜) 油画中心の抽象表現全盛時代からアクリル絵具を使っていた。近年、世界的評価が高まっているそうです
いいですね (⁠θ⁠‿⁠θ⁠)

4階 変わるもの、消えゆくもの

毛利悠子 Decomposition 2024
アーティゾンでの個展開催中


宮島達男 Counter Fragile No.4
2004
Vertial in Green 2022
もはや巨匠!


3階 女性画家のまなざし
非常に特徴的なフロア


松井えり菜 すれ違いユートピア
2022
3階で唯一知っていた作家

津上みゆき View,Flowing,Evening,8Feb 2019/2022 2022
明るいゲルハルト・リヒター風

2階 同時代の表現、個の表現世界

B1 絵画における抽象―その開拓精神

オラファー・エリアソン Eye see you 2006

ルィーズ・ブルジョア
Jast Hanging (私を見捨てないでシリーズ) 2009-2010
題名最高\⁠(⁠°⁠o⁠°⁠)⁠/

村上隆×Virgil Abloh
Virgil Abloh Our Spot 1 2018

ゲルハルト・リヒター Abstract Skech 1991

塩田千春 State of Being(skull)
2015


塩田千春 State of Being(Two Chairs)
2012
ここで塩田千春を観ると安心しますね

名和晃平 PixCell-Sharpe's grysbok
2023

南アフリカ西ケープ地区固有の小さなカモシカ


バラエティ豊かな現代アート、点数が多く、1回でじっくり鑑賞するには無理があります… 
2、3回来るつもりで最初は流して、気に入った作品探す、調べる、が必要ですね

気に入ったフロアに集中するのもいいかな

★★★★★
見応え十分、空いてます


毛利悠子 アーティゾン美術館

2024-11-21 20:19:45 | 絵画(レビュー感想)




『アーティゾン美術館では、2020年の開館以来、石橋財団コレクションとアーティストとの共演、「ジャム・セッション」展を毎年開催しています。第5回目となる本展は、国際的なアートシーンで注目を集めるアーティスト、毛利悠子を迎えます。
毛利は、主にインスタレーションや彫刻を通じて、磁力や電流、空気や埃、水や温度といった、ある特定の空間が潜在的に有する流れや変化する事象に形を与え、立ち会った人々の新たな知覚の回路を開く試みを行っています。
本展タイトルに含まれる「ピュシス」は、通例「自然」あるいは「本性」と訳される古代ギリシア語です。今日の哲学にまで至る「万物の始原=原理とはなにか」という問いを生み出した初期ギリシア哲学では、「ピュシス」が中心的考察対象となっていました。当時の著作は断片でしか残されていませんが、『ピュシス=自然について』と後世に名称を与えられ、生成、変化、消滅といった運動に本性を見いだす哲学者たちの思索が伝えられています。絶えず変化するみずみずしい動静として世界を捉える彼らの姿勢は、毛利のそれと重ねてみることができます。
毛利の国内初大規模展覧会である本展では、新・旧作品とともに、作家の視点から選ばれた石橋財団コレクションと並べることで、ここでしか体感できない微細な音や動きで満たされた静謐でいて有機的な空間に来場者をいざないます。』アーティゾン美術館HPより


毛利悠子 Decomposition 2021年―

 
毛利悠子

『1980年神奈川県生まれ。現在は東京を拠点に活動。2006年に東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術 表現専攻を修了。
コンポジション(構築)へのアプローチではなく、環境の諸条件によって変化してゆく「事象」にフォーカスするインスタレーションや彫刻を制作。近年は映像や写真を通じた作品制作も行う。
主な個展に第60回ヴェネチア・ビエ ンナーレ国際美術展日本館(2024年)、カムデン・アーツ・ センター(2018年)、十和田市現代美術館(2018年)など。 そのほか第14回光州ビエンナーレ (2023年)、第23回シド ニー・ビエンナーレ (2022年)、第34回サンパウロ・ビエ ンナーレ (2021年)などに参加。』パンフレットより




毛利悠子 Decomposition 2021年―

ジョルジュ・ブラック 梨と桃
1924年

毛利悠子の果物と石橋財団コレクションの作品が呼応しています

果物に刺された電極から、電線はこちらへ

毛利悠子 Calls 2013年―
とコンスタンティン・ブランクーシ 
接吻 1907―10年



毛利悠子 Piano Solo:Bell-lle
2021年―/2024年
対には、モネの「雨のべリール」1886年

今回の個展で、象徴的なデュシャンの作品
裏側 ガラスに映る
『遺作』を想起します
マルセル・デュシャン
マルセル・デュシャンあるいはローズ・セラヴィの、または、による(トランクの箱)シリーズB 1952年、1946年(鉛筆素描)

デュシャンの素描、毛利の写真、マティスの素描が呼応する


毛利悠子 Bride, Contingency
2016年-/2024年 写真

【参考】マルセル・デュシャン
花嫁は彼女の独身者たちによって裸にされて、さえも(通称《大ガラス》)1915―23年

デュシャンの大ガラスからの引用
毛利悠子 めくる装置、3つのヴェール 2018年―

奥にマティスの素描3点



毛利悠子 I/O 2011年―

ジョゼフ・コーネル 
見捨てられた止まり木 1947年

毛利悠子 鬼火 2013年―

4FのINFO ROOMに毛利悠子が海外で行った個展のビデオが流れていた



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毛利悠子の作品は、デュシャンの静的なコンセプチュアリズムに、変化、流れの動的事象をあらわす、メディアミックスによる、メディア・アート、サウンド・アートのインスタレーションといえる… 横文字だらけの現代アート?

世界は反民主主義の強権的ポピュリズによって、より排他的な分断社会に向かっている
そして、ウクライナとゴザ地区の戦闘は先が見えない

奈良美智も会田誠も塩田千春も、今日の世界の、国内の動静についてSNS等で発言し、作品に表している


さて、この時代に、ギリシア哲学の「ピュシス」に思考を巡らし、デュシャンを想起する、回顧的?で高踏的なアートとはなんだろう

★★★☆☆

アートの在り方を考えさせる
展覧会でした