古今東西のアートのお話をしよう

日本美術・西洋美術・映画・文学などについて書いています。

ライトアップ木島櫻谷 泉屋博古館東京

2024-03-29 17:01:17 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等カテゴリー
六本木一丁目駅からエレベーターを何本も乗り継いで、
泉屋博古館東京へ

谷から麻布台台地の尾根に着く
泉坂の桜並木はまだ眠ったままだ


泉屋博古館の庭園の桜は一分咲き




枝垂れ桜は6〜7分咲きかな…






木島櫻谷(このしまおうこく1877〜1938)は、「大正の呉春」「最後の四條派」と云われ、大正期の関西では竹内栖鳳と人気を二分していた。昭和8年の文展を最後に京都北山の衣笠村に隠棲する。晴耕雨読の生活を送っていたが、次第に精神を病み、昭和13年(1938)枚方で、京阪電車に輓かれ身元不明者として埋葬されていた(家族で山科に松茸狩りに出かけたとき失踪、山科から枚方まで彷徨った)。享年62だった。近年まで「忘れられた日本画家」と呼ばれたのは、2013年に泉屋博古館が「京都日本画の俊英」で木島櫻谷を取り上げ、再評価につながって以来だろう。

木島櫻谷と住友家の結びつきは早く、数寄者だった第15代住友吉左衛門、住友春翠は当時40歳前の新鋭櫻谷を抜擢し、茶臼山住友本邸の大書院を飾る「四季連作大屏風」を依頼した事でもよく分かる。

【参考】

木島櫻谷 寒月 大正元年(1912)

夏目漱石の酷評でかえって有名になった櫻谷の代表作




『ごあいさつ


大正中期に大阪茶臼山に竣工した住友家本邸を飾った木島櫻谷の「四季連作屏風」を 全点公開します。


木島櫻谷(1877-1936)は明治後期から昭和前期にかけて京都画壇の俊英として活躍しま した、円山四条派の写生表現を基礎に、琳派や狩野派の表現などまで研究して完成させた この「四季連作屏風」は、櫻谷の画業の画期となるもので、制作にあたって櫻谷は、独特な 色感の絵具を用い、顔料を厚く盛り上げ、筆跡を立体的に残し油彩画のような筆触にも挑戦 しています。


一方、櫻谷はなにより動物画に秀でていました、描かれた動物たちはリアルなだけでなく。 折節にみせる表情がどこか人間的な感情を溶かし込んだように生き生きと輝き、観る者の 心に沁みます。そうした櫻谷画のリアリティーの源は、江戸時代中期(18世紀) 京都で活躍 した絵師・円山応挙によって編み出された「生写し」(写生)という方法です、自然や事物を 生き生きとありのままに描く写生表現は、近代にも大きな影響を与え、櫻谷もその例外では ありませんが、ここでは親和的表現に特色の動物画に焦点をあて、応挙はじめ先人画家たち による動物表現と比較しながら櫻谷画の特質をライトアップします。


2024年3月吉日


公益財団法人泉屋博古館 每日新聞社』



展覧会は四季連作屏風の燕子花図以外は撮影禁止、写真はネット画像を借用しました


右から、木島櫻谷 雪中梅花、柳桜図、燕子花図、菊花図(以上四季連作屏風)、竹林白鶴

雪中梅花 大正7年(1918)

『独特な 色感の絵具を用い、顔料を厚く盛り上げ、筆跡を立体的に残し油彩画のような筆触にも挑戦 しています。』


雪中梅花でも雪の表現に活かしている。

しかし、雪は乾いており、春が近いしっとりと湿った質感は感じられない。応挙の「雪松図屏風」に倣ったかもしれないが、時期が違うのではないだろうか。


【参考】 

応挙 雪松図屏風 江戸時代 18世紀


柳桜図 大正6年(1917)


燕子花図 大正6年(1917)

【参考】

尾形光琳 燕子花図屏風 江戸時代18世紀


菊花図 大正6年(1917)


四季連作屏風を光琳や応挙と比較するのではなく、『円山四条派の写生表現を基礎に、琳派や狩野派の表現などまで研究して完成させた 』本歌取りの作品として見るべきなのか


動物画で一番好きだったのが、「狸」

木島櫻谷 秋野老狸(部分) 昭和初期頃 個人蔵

狸の繊細な毛並み、ススキの冴えた線、上には鋭利な三日月が描がかれる


木島櫻谷 獅子虎図屏風 明治37年(1904)



獅子のたてがみは、洋画的表現で、近づくと白を上手く使っている


ホールの彫刻

北村四海 陰 明治44年(1900)


【参考】 

根津美術館 燕子花図屏風 特別展のポスター

金屏風の背景を黄色にして、しゃれたグラフィックデザインになっている


木島櫻谷と住友家、泉屋博古館の
関係がわかった展覧会

お花見がてらの鑑賞をお勧めします
麻布台ヒルズと組み合わせると
いいかも

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大吉原展 東京芸術大学美術館

2024-03-27 23:01:36 | 美術展

大吉原展初日(3/26)は、暴風雨が吹き荒れる幕開けとなった

しかし、会場には濡れそぼった
老若男女の熱気に溢れていた

ポスターにもなっている、歌麿の「吉原の花」など、海外に流出した名品が見どころ

展覧会は撮影禁止のため写真はネット画像を借用しました

歌川国貞 青楼遊郭娼家之図
文化10年(1813) 大英博物館

勝川春潮 吉原仲の町図 寛政前期(1789〜1801) 大英博物館

勝川春潮の現存する肉筆画は20点ほど、品があり美しい

会場風景

喜多川歌麿 青楼十二時 続巳の刻
寛政6年(1794)頃 大英博物館

歌麿の青楼十二時は、遊女の一日を描いた作品

勝川春章 遊里風俗図 天明7〜8年(1787〜88) 出光美術館

画像ではよく分かりませんが、客の男が大変な男前でびっくり!!

鳥文斎栄之 畧(やつし)六花撰喜撰法師
寛政8〜10年(1796〜98) 大英博物館

千葉市美術館で話題になった鳥文斎栄之(ちょうぶんさいえいし)の大首絵

高橋由一 花魁 明治5年(1872)
東京芸術大学

『明治新政府は、西洋諸外国からの批判により遊郭に対する規制を強める。江戸文化が廃れていくのを残念に思った某人が、花魁という象徴的な姿を記録に留めて欲しいと高橋由一に依頼した。
モデルになった花魁小稲が「わちきはこんな顔ではありんせん」と、泣いて怒ったという逸話が伝えられている。』

鏑木清方 一葉女子の墓 明治35年(1902) 東京芸術大学

鏑木清方 たけくらべの美登利 昭和15年(1940) 京都国立近代美術館

樋口一葉の『たけくらべ』は、吉原を舞台に、吉原一の花魁の妹で、13歳〜14歳の美登利を中心に思春期の揺れ動く世界を描く


喜多川歌麿 吉原の花 寛政5年(1793) ワズワース・アテネウム美術館

「深川の雪」「品川の月」とともに、雪月花をテーマにした、歌麿肉筆画の最高傑作

【参考】
喜多川歌麿 深川の雪 岡田美術館

喜多川歌麿 品川の月 フリーア美術館

人形師辻村寿三郎のセクション

『吉原 辻村寿三郎
華の吉原仲の町。 
悲しい女達の棲む館ではあるのだけれど、それを悲しく作るには、 あまりにも彼女達に惨い。 
女達にその苦しみを忘れてもらいたくて、絢爛に楽しくしてやるのが、彼女達へのはなむけになるだろう。
男達ではなく、女達にだけ楽しんでもらいたい。
復元ではなく、江戸の女達の心意気である。
女の艶やかさの誇りなのだ。
後にも先にも、この狂乱な文化はないだろう。
人間は、悲しみや苦しみにも、華やかにその花を咲かせることが出来るのだから、 ひとの生命とは、尊いものである。
私は、置屋の料理屋で生まれて育ったので、こうした苦界の女達への思い入れが、 ひとより深いのかもしれない。
辛いこと、悲しいこと、苦しいこと、冷酷なようだけれど、それらに耐えて活きてい るひと達の、何と美しいことだろう。
ひとの道に生まれてきて、貧しくても、裕福でいても、美しく活きる姿をみせてこそ、 生まれてきたことへの、感謝であり、また人間としてのあかしでもあるのです。
艶めいて、鎮魂の饗宴のさかもりは、先ず、吉原の女達から・・・・・・。

(「ジュサブロー展」図録作品解説、1992年より)』

名文である。
今回の展覧会の意図を解説しているかのようだ。

このセクションだけ撮影可能

(ネット画像借用)



美術館に2階から藝大正門をのぞく


帰りは、雨が小降りになった…


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自力で大記録達成!! おめでとう尊富士

2024-03-24 20:54:09 | スポーツ

祝 新入幕初優勝🎆😂

10場所での初優勝は
最速(年6場所制以降)
新入幕初優勝は両國勇治郎
以来110年ぶり

右足のじん帯が伸び、相撲を取れる状態ではなかったらしいが、気力で出場

右足での踏み込みが尊富士の相撲だがケガで踏み込めない
豪の山のあたりを張り差しで受け、四つに組んでガブリる、最後は右で押し倒した


豪の山を押し出す

手負いの尊富士を相手にする豪の山は取りにくかっただろうが、真っ向勝負に出た豪の山も立派


滅多に出さない笑顔

相撲協会も、千穐楽の取組には苦心しただろう
110年ぶりの新入幕初優勝
大関、三役の対戦相手は無く、予想外の尊富士の右足負傷で休場もある…

前頭6枚目で10勝4敗の豪の山をあて、大の里には先場所破れた大関豊昇龍をあてる、二段構え

尊富士が休場しても、大の里が豊昇龍に負ければ、尊富士が優勝となる、なんとも奇妙な110年ぶりの大記録

案の定
豊昇龍(右)に負けた大の里(左)

馬力だけで勝ってきた今の大の里では豊昇龍に勝つのは難しい
(廻しも取らずに前に出て豊昇龍の下手投げをくらう)

横綱クラスの潜在能力を持つ大の里


今場所の結果を分析して、技術を身につければ優勝も可能だ


尊富士、大の里時代はそう遠くない


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110年ぶり記録達成か?!

2024-03-22 23:31:42 | スポーツ

一平ショックは収まらないが…

大相撲は、


尊富士12勝1敗

豊昇龍10勝3敗

大の里10勝3敗


14日目(3/23 )尊富士が勝てば、

新入幕で初優勝の

110年ぶりの大記録


その記録をつくったのは


両國勇治郎(1892〜1960)
大正3年(1914)に新入幕初優勝
秋田県出身で色白の美男力士として人気があった


東京蔵前出身の小説家田村俊子(18841945)は、両國の大ファンで
「両國という角力(すもう)恋して春残し」「両國を 思えばうつら うつらかな」という俳句を残している


13日目関脇若元春を寄り切る


さて、14日目(3/23)の取組は通常13日目の放送中に発表されるが、新入幕尊富士が星2つリードで、取組が場所後という異例の展開

尊富士は既に大関の琴の若◯、対豊昇龍☓と対戦済みで、番付順なら残る大関貴景勝、霧島と対戦するべきだが… 貴景勝は13日目でようやく勝ち越しの8勝5敗で『首』を痛めている(けっして尊富士回避ではない?)、霧島は3勝10敗で問題外(大相撲の取組は興行の面白さに徹する)
三役力士に対象はおらず、前頭筆頭の元大関朝乃山(8勝5敗)におさまった
大相撲の醍醐味は、取組の妙にある。コロナ不祥事で大関から※三段目まで落とされ、三役復帰目前の人気力士朝乃山ならば文句はなかろう


14日目優勝決定の条件は、尊富士が朝乃山に勝つか、
大の里、豊昇龍の二人が敗れる


新入幕の番付を持つ尊富士

尊富士、110年ぶりの
快挙が見たい!!

※下から序の口、序二段、三段目、幕下、幕内(十両、前頭、〈小結、関脇、大関(三役)〉、横綱)


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目白台周辺散策 肥後細川庭園 永青文庫

2024-03-22 10:56:07 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等カテゴリー

両岸に桜が咲きほこるとは思えない、ひっそりとした江戸川公園


左が椿山荘

江戸川橋から早稲田方面に神田川を遡ると、肥後細川庭園がある



庭園の背後は関口台地の崖になっており、上った先に永青文庫がある




永青文庫は、江戸時代から戦後にかけて所在した細川家の広大な屋敷跡の一隅にあり、旧細川公爵家の家政所(事務所)として昭和初期に建設され、現在は細川家に伝来する文化財を管理保存し、博物館として一般公開されている。
隣地の男子大学生寮『和敬塾』は、7000坪あった旧細川公爵邸を前川喜作氏(前川製作所創業者)が購入し、昭和30年(1955)に設立された。
旧細川公爵邸洋館は和敬塾本館(一般非公開)となっている。

(ネット画像借用)
旧細川公爵邸洋館
結婚式場として利用されている他、年に数回公開されているらしい


さて、永青文庫では第16代当主細川護立氏の中国陶器コレクションを公開している


展覧会は撮影禁止のため写真はネット画像を借用しました

唐三彩は、唐時代の鉛釉の陶器で、
クリーム色・緑・白や緑・赤褐色・藍の三色の組合せに代表される
主に副葬品として制作された

灰陶加彩馬 北朝時代6世紀


三彩宝相華文三足盤 唐時代7〜8世紀

唐文化は北朝文化(質実剛健の遊牧民文化)と南朝文化(漢文化を継承する華麗な文化)を融合し、シルクロードを通じて、ビザンツ文化、イスラーム文化の影響もある国際色豊かな文化
「三彩宝相華文三足盤」は、緑、赤褐色、白の華やかな盤で、モザイク文様を思わせる


三彩女子 唐時代8世紀


三彩花文四葉形四足盤 唐時代8世紀


三彩花弁文盤 唐時代7〜8世紀

大胆なデザイン性がある三彩盤
まるで、岡本太郎の作品のようだ


【参考】
唐三彩から学んだ奈良三彩

奈良三彩壺 国宝 奈良時代8世紀 
 
奈良三彩は、副葬品ではなく実用品として制作されたようだ


白釉黒花牡丹文瓶 磁州窯 北宋時代11〜12世紀


木葉天目 吉州窯 南宋時代12〜13世紀

宋時代に入ると華麗な色彩から禅文化の影響か渋い好みに

詳しくは


ギリシャ・ローマ文化、オリエント文化の影響もある唐三彩は、陽光きらめく地中海世界を感じさせ、マティスにも通じる

満開の江戸川公園

【参考】
同じエリアの鳩山会館
(ネット画像借用)
鳩山会館(4/2より開園)


江戸川公園、肥後細川庭園、永青文庫、椿山荘、鳩山会館を巡るルートは、お花見、名建築、庭園、美術館、グルメといろいろなバリエーションがありますね😊


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