山南ノート4【劇団夢桟敷】

山南ノート4冊目(2008.10.3~)
劇団夢桟敷の活動や個人のことなどのメモとして公開中。

劇トレ②「皮膚感覚」

2010-05-16 23:58:36 | モノローグ【エトセトラ】
只今、自己点検・「役者体作り」のためのメソッド日記として綴ります。



息の吐き出し方のアレコレ。

意識しようがすまいが、寝ている時でさえ人間は呼吸しています。いちいち呼吸のあれこれを計算して生きている訳ではありません。

息があがる、息苦しくなる。・・・体力を消耗するとこのようなことになります。
舞台でも激しく踊ったり、大きな声を出すことにより息苦しくなることはあります。
だから役者・俳優は体力勝負で息苦しさを殺します。それでも超人・神様ではないので息苦しさの限界はあります。

発声練習をする場合、私たちの劇団では激しい動きの直後におこなうようにしています。あるいは、激しい動きと同時進行で台詞に入ります。
呼吸が乱れている時に発声をおこないます。
例えば・・・シャドーボクシングをしながら「祇園精舎」を語ります。中年俳優は3分間1ラウンドで酸欠状態になります。三途の川が見えます。一度、死にます。健康的ではありません。死なないように楽な方法を覚えていきます。
激しく動くふりがうまくなってきます。よく見ると上体の力を抜き、足だけ強く踏み叩きながら無駄な動きを最小限に抑えます。上体はブランとなり、下半身の動きに揺れているだけ。ポーズはパンチを出しているふり。実際に当たっても効果はない。敵にダメージを与えることもない。
逆に激しい声を出します。筋肉を消耗させない分、声や足音で発します。自分の体力の限界を他のところから埋め合わせます。
若者が3分間に100回、全力でパンチを出しているとするとキャリアは30回で100回分を見せています。残りの70回分は避ける受け身です。実際に敵がいないシャドーですから痛くも何ともない。

台詞は吐き出す息。激しく、緩やかに、大きく、小さく、伸ばしたり、縮めたり。
追いついていかない場合、顔の表情(口周りの筋肉)でコントロールします。・・・「あ」「う」「ん」の口の形を大きく作ります。阿吽(あうん)。
顔面で一番動く筋肉が集中しているところが口周りで、眼光を助けるのです。・・・感情表現は台詞よりも目の方が優れて表面に出やすいのです。

演出家が「言葉(セリフ)が身体にくっついていない!」とよく言われます。
私も演出する立場の人間として、「そうだ!」とは理解できるものの、その意味を考えると実はわかっていないのです。解決できない。役者・俳優にとって根本的なことでしょうが、接着剤が見当たらないのです。・・・演出の仕事は音や明りなど、役者・俳優をよく見せることは考えます。

呼吸は皮膚でもしています。
台詞が皮膚から発せられると「言葉ー身体」はくっつくのでは?・・・そんなことは物理的に無理でしょう。
皮膚は無言です。
ところが、皮膚で感じることはあるようです。舞台・板が人間の皮膚のように感じることがあります。
足の裏で感じます。
舞台が皮膚のように見えるのは役者・俳優の力量に拠ること大です。

役者体は筋力だけではなく、皮膚で感じる力と舞台をも皮膚で包み込む観念が要求されます。
これは考えてもダメ。

次は③は「舞台に立つ」のテーマでつづく。