分け入っても分け入っても本の森

本読む日々のよしなしごとをそこはかとなく♪

●ちいさなヨンダくん10

2006年02月20日 21時23分07秒 | ちいさなヨンダくん
ゆらゆらと、ダンスをするようにゆれるこもれびの、みちびくさき――大きな木のむろのなかに、「それ」はありました。
こもれびのなかで、ヨンダくんは、いっさつの本を、てにとりました。
それは、ヨンダくんがはじめてみる本。かつてない、きたいとよかんに、ヨンダくんのむねはたかなります。
ページをめくると、そこには、かがやくようなことばがちりばめられていました。


 学校のノートの上
 勉強机や木立の上
 砂の上 雪の上に
 君の名を書く

 読んだページ全部の上
 まだ白いページ全部の上に
 石 血 紙 または灰に
 君の名を書く

 金いろの挿絵の上
 兵士たちの武器の上
 国王たちの冠の上に
 君の名を書く

 ジャングルと砂漠の上
 巣の上 エニシダの上
 子供のころのこだまの上に
 君の名を書く

 夜ごとに訪れる不思議の上
 日ごとの白いパンの上
 結び合わされた季節の上に
 君の名を書く

 切れ切れの青空すべての上
 池のかび臭い太陽の上
 湖のきらめく月の上に
 君の名を書く


 ――(中略)――



 一つの言葉の力によって
 僕の人生は再び始まる
 僕の生まれたのは 君と知り合うため
 君を名ざすためだった


 自由 と。




ヨンダくんは、ふるえました。
ポール・エリュアールの詩、「自由」――はじめてそれをよんだ、ヨンダくんのむねは、あこがれにはりさけそうでした。
さがしにいかなきゃ、ぼく――自由を!