分け入っても分け入っても本の森

本読む日々のよしなしごとをそこはかとなく♪

●ちいさなヨンダくん11

2006年02月21日 21時23分03秒 | ちいさなヨンダくん
そのときさっと、みなみかぜのおねえさんが、ヨンダくんをむかえにきました。
「くらくなるまえに、かえりますよ。いそいで、いそいで」
とっさに、ヨンダくんは本を木のむろにかくします。
本がぬれないように、とおもったのです。
もっとよみたいなあ。でも、おそくなったら、おかあさんがしんぱいするだろうなあ、というヨンダくんのきもちは、みなみかぜのおねえさんにつたわったようでした。
「また、あしたですよ」
やさしくそうささやいて、ヨンダくんをおかあさんパンダのもとへつれてかえります。

いきをせききって、ヨンダくんがかえってきたのに、おかあさんパンダはしらんかお。
「ぼくがまいごになったの、おかあさんはきづかなかったんだ」
おかあさんにしんぱいをかけなくてよかったと、ヨンダくんはおもいました。
だけど、ほんとはちょっぴりさびしかったのです。
おかあさんは、ぼくがみえなくなっても、しんぱいしないのかしら。
いえいえ、そんなはずはありません。ヨンダくんがまいごになったのは、ほんのすこしのあいだだけだったのです。だから、おかあさんは、きづかなかったのです。
「そうだよ。だって、おかあさんのことだいすきだもの、ぼく」
じぶんでじぶんに、そういいきかせながら、ヨンダくんはきょうも、おかあさんパンダにしっかりつかまって、ねむりにつきます。
でも、こころのなかでは、まいごになったときみつけた、あの本のことがおもいかえされて、なりませんでした。

学校、机、兵士、国王、ジャングル、砂漠――なんなのでしょう、それらは。
どこにあるのでしょう、それらは。本のなかに、あるのでしょうか。それとも?
そして――自由。
ああ、自由ってなんでしょう。どこにあるのでしょう、それは。