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うございます。
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放映されて感銘を受けたので、今日、ネットで全文読みました。
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http://mainichi.jp/enta/art/news/20110611k0000m040017000c.html?toprank=onehour
特に「僕はそのように、同じひとつの物語を皆さんと分かち合えることを
嬉しく思います。夢を見ることは小説家の仕事です。しかし我々にとって
より大事な仕事は、人々とその夢を分かち合うことです。その分かち合い
の感覚なしに、小説家であることはできません」
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にはホッとしたと同時に目頭が熱くなりました。曽野綾子氏のように為政
者然としてペンを武器に良心や知性の欠片もなく私たち庶民に刃を向
けてくる作家がいる中で、限りなく知性を感じる作家が日本にいることに
胸を撫で下ろす思いです。いや村上春樹さんだけではなく、大半の作家が
そうだろうと思いますが・・・・。
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スピーチは「非現実的な夢想家として」と題して、まず東日本大震災に
触れ、自身のその胸の内を吐露します。そして地震の国で生活している
日本人の国民性や世界観について述べた後、本題である福島原発の事
故について話を進めます。広島、長崎の原爆を体験しながら、いつの間
にか「核」に慣らされてきた氏自身の自責をこめて福島原発の事故を省
みます。
「原子力発電を推進する人々の主張した「現実を見なさい」という現実
とは、実は現実でもなんでもなく、ただの表面的な「便宜」に過ぎなか
った。それを彼らは「現実」という言葉に置き換え、論理をすり替えて
いたのです。それは日本が長年にわたって誇ってきた「技術力」神話の
崩壊であると同時に、そのような「すり替え」を許してきた、我々日本
人の倫理と規範の敗北でもありました。」
これは永年、原子力発電政策を推し進めてきた自民党政権や官僚たちの
仕組みで、原発設置を承認した自治体に対する補助金を次第に少なくし
ていき、次の原発を設置して補助金の額を維持せざるをえないがんじが
らめの政策で、「安全だ」「現実を見なさい」と言う言葉を政府をはじ
め原発推進派は使い続けてきた。そうしながら政府は過疎対策を東電に
押し付けたままで、基本的な過疎対策を怠ってきた。政府や官僚に大き
な責任があり問題があるのは明白だ。
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村上氏はさらに「我々日本人は核に対する「ノー」を叫び続けるべきだ
った」これこそが「広島と長崎で亡くなった多くの犠牲者に対する、我々の
集合的責任の取り方となったはずです」
「日本にはそのような骨太の倫理と規範が、そして社会的メッセージが
必要だった。それは我々日本人が世界に真に貢献できる、大きな機会と
なったはずです。しかし急速な経済発展の途上で、「効率」という安易
な基準に流され、その大事な道筋を我々は見失ってしまったのです」
「そのとおりだ!」夫が隣で呟きました。以前にも述べた「戦略なき野放
図な経済活動」が正にそのことで、戦略がないからセーフティネットの
構築も度外視し「効率」のみに頼る結果となってしまった。
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さらに「大がかりな集合作業には、言葉を専門とする我々=職業的作家
たちが進んで関われる部分があるはずです。我々は新しい倫理や規範
と、新しい言葉とを連結させなくてはなりません。そして生き生きとし
た新しい物語を、そこに芽生えさせ、立ち上げてなくてはなりません。
それは我々が共有できる物語であるはずです。それは畑の種蒔き歌のよ
うに、人々を励ます律動を持つ物語であるはずです。我々はかつて、ま
さにそのようにして、戦争によって焦土と化した日本を再建してきまし
た。その原点に、我々は再び立ち戻らなくてはならないでしょう」
このくだりで夫は目を潤ませて並木路子さんが歌った「りんごの唄」を
歌い始めました。「赤いりんごにー♪唇寄せてー♪・・・」夫の頬を涙
が流れます。並木さんの明るい歌声は戦後の焼け跡から復興を目指す
国民を奮い立たせたということです。
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曽野綾子氏をはじめとした言論界の一部が「暴走」する中で、村上春樹
氏をはじめとした「日本の知性と良心」が一段と輝きを増し国民を導い
てくれることを期待したい・・・と言っています。
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