1972年の映画「惑星ソラリス」は、アンドレイ・タルコフスキー監督の代表作にしてSF大作。
この映画は学生時代に観たはずだが、内容をほとんど失念してしまったのは、あまりに静かな物語だったからだろう。この静かさというのは、「2001年宇宙の旅」もおよそそうだったが、無音に近い宇宙空間ならではの演出ではある。
この広い宇宙にはおそらく、人類以外の生命体がいるはず。宇宙SF作品はたいがいそんな前提でつくられている。
彼らと交信するファースト・コンタクトものとして有名なのはかの「未知との遭遇」であり、近作で感動したものといえば、「コンタクト」だった。「2001年宇宙の旅」にせよ、未知の進化形が人類をベースにしているというのが、おもしろい。
そして、本作でも対比されているのは、人間の記憶、すなわち記録できない歴史である。
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謎に包まれた惑星ソラリスの調査は、難航していた。理性を持つプラズマの海に、阻まれて。
ソラリスの観測ステーションに派遣されたクリスが、そこで見たのは異常な静寂と荒廃。三人の学者のうち、ひとりは精神錯乱で自殺、残るふたりはなにかに怯え、自閉症になっていた。
しかし、三人だけしかいないはずのステーションで、クリスはしばしば不審な人影を目撃。やがて、クリスの亡き妻ハリーが現れる…。
亡くした人間と邂逅するというシチュエーションは「コンタクト」にもあるが、こちらはいささか感慨もなにもない。
ハリーが人ではないことを知ったクリスは葬ろうとするが、彼女はなんども再生されてしまう。じつはそれは、ソラリスの海が送り込んできた「お客」で、人間の意識を物質にしたものだという。
ハリーの死に負い目のあるクリスは、彼女を遠ざけようとするが、やがて学者たちの忠告も聞かず、愛しはじめてしまう。
最後は、どう解釈すればよいか悩みどころ。
亡き母やハリーの記憶をふくむクリスの意識をX線放射したため、再生されたのは、海に浮かぶ自分の家。しかし、ステーションでのハリーは置き手紙を残して消えてしまう。
原作はSF小説の金字塔スタニスワフ・レムの『ソラリスの陽のもとに』
72年カンヌ映画祭審査員特別賞受賞、国際エヴァンジェリー映画センター賞受賞作品。
2002年に「ソラリス」として、ティーヴン・ソダーバーグ監督がリメイクしている。
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